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1996/04/14 杭州についたのは昼過ぎ。 急いでホテルを捜すも、全く見つからん。きったない所でもかるく200元は越 えるのである。これは外国人料金のせい。むっ! で、どうせなら外人料金なしの杭大(杭州大学)内の宿泊所に行く。300元 の部屋はキレイなバス付きで、コストパフォーマンスとしてはなかなかよいのだが、 我々にはやはり予算オーバーである。一泊だけすることにして、市内へ出かけた。 外国人を泊められる宿は余りなく、やっと見つけた所はバス・トイレ共同で150 元。相棒と、ここ数年の沿岸部の物価上昇はすさまじい、と話し合う。昔 は上海でも20元で朝食付きのドミがあったのになあ。 しかし、杭州寒い。すっごくおいしそうなパン屋があり、豆引 きのコーヒーがあったので、クロワッサンとコーヒーを取ってみた。クロワッサン2.8元、大ヒット。 風呂入って寝た。 1996/04/15 チェックアウト。今晩泊まるなら270元でどうだ?と言われ、真剣にむっとする。国営のころも承包になっても、やりかたが気に触る連中だ。 相棒について杭州見物。大仏のある寺。しかしバスに乗ると雨。降りても雨。 寒いよう。ジャケットを着込んでいるが、ゴアテックスではないのでレインコートにはならない。 なのにどしゃぶり。相棒は完全防水のウィンドブレーカーを着ており、 そりゃアンタはいいだろうけどさあ。 雨が止むかと期待して、精進料理を食べてみる。寒いので麻辛豆腐、 たけのこと湯葉の炒めもの、干し椎茸と菜心、純菜のスープ。形容動詞 「じゅんさいだ」の語源になっ食材を、始めて食べた。ぬるぬるしてすっぱくて、 なかなかあおいしかった。 食べおわったが雨はやまぬ。仕方が無い。大仏を拝んでからバスで岳廟へ。 宋代の英雄岳飛をまつってある廟で、それはべつにいいのだが、共産党 のプロバガンダのにおいがプンプンする。「亡国の危機に立ち上がった愛国精神の英雄は、国家のためには自分の命をも顧みなかった」あたりはいいのだが、「岳飛の愛国精神は共産主義者たちに大きな影響を与えた」に至っては失笑モノ。 岳飛を讒言した宰相およびその妻の石像があり、かつては参拝者が石 でぶんなぐったり、棒でたたおたり、つばをはきかけたりするので有名だった。現在は柵 で囲まれ、禁止されている。 気になったのが宋を圧迫した金王朝に対する評価で、完全に「不当な侵略」扱 い。そりゃ侵略は侵略でしょうけど、 金が悪魔の手先みたいな書き方はどうかと思いますぜ。中華人民共和国においては満族だって「中国人」というのが建前ではなかったのか中国人。 宋朝は五代の混乱を押さえて唐以来の統一を果たした王朝であり、「統一」ってのが現在の中国にとっては大きな政治的課題であることから、「政治的に」こう語っているのかという推測もできるが。清も近代史では悪者だしなあ。しかし、チベット。新彊まで中国の版図に組み入れたのは、清あってなのだがなあ。(つぶやいてもしょうがないっすね。) 相棒の意見では、岳飛が処刑されたのは皇帝が宰相を利用して権力を持ちすぎた家臣を排除したに過ぎない、ということである。重要なのはそこのところなのに、民衆は常に英雄を愛するから、宰相を悪者にして終わっちゃう。皇帝の罪を追求するメンタリティって、中国人にはないのかもしんない。毛沢東が今でも民衆には崇拝されていることを考えると。 白堤を散策する。 全長3キロほど、途中に公園や博物館まであり、なかなか整備の行き届いていた。説明に読み応えあり、陳列品に見ごたえあり、通路は時代別に整理されていて、規模も大きく、お勧めである。閉館時間がせまってきて、太平天国の部分をじっくり見られなかったのが残念。 ボートに乗らんかという客引きが大変多い。かわしつつ、堤を歩く。天気がよくなってきた。 1996/04/16 朝食後、荷物をバスターミナルに預け、杭州市内を最後にぶらつく。本日は晴天なり、くやしい。 全長3キロの蘇堤を歩く。蘇東波が築いた堤である。天気がよく、桃や桜が満開で、 春風駘蕩ってやつである。にもかかわらず、昼食をKFCで取る。外人でスマン。 さて、4時15分のバスで紹興へ。2時間ほどで夕暮れの紹興に到着した。道中の風景は一面の菜の花畑に新築の家がぽつぽつ建ち並ぶといった、新中国の豊かな農村そのものの光景で、こころ和んだ。菜の花ってすごくいい香りなのだ。 とりあえず、安いはずの東湖飯店を目指すが、実見してちょっとひいた。もヒトツ。ツイン27元/一人で、安いことは安いのだが・・・しかしパス。 どの街でもあたりはずれのない華僑飯店に行く。開放が始まった時期に里帰りした華僑用にたてられているため、設備がこましなことが多い。かといってもはやさすがに古いので、経済的な値段設定である。 ツイン70元/部屋。しかしバストイレは共同だ。チェックイン。すると、ベッドはふかふか、窓からの眺めもよく、なかなかいい感じではないの。共同トイレは普通の出来だった。お風呂は一階にあり、なんと湯船が無いこと以外は日本の銭湯そっくり。番台で2元のデポジットと引き換えに小さい南京錠を借りる。銭湯そっくりのロッカーがあり、服を脱いで洗い場へ。中は意外に広く、また人が少なくてよかった、壁に沿って並んでいるシャワーのお湯は、いい加減のやつがじゃんじゃんでてくる。 私は機嫌良く帰ってきたのだが、相棒はこれがダメなようだった。他人の横でハダカになるのがツライらしい。神経質なやつ。まあ、始めてならしょうがないか。 お風呂の回りは石鹸の香りがほのかにただよい、洗い髪の男女が行き交い、いい感じである。1回3.5元で外部の人にも開放しているのだ。にたような風呂屋をまちなかでも見かけたので、紹興の風習なのであろう。相棒は始めてみたと言っていた。 1996/04/17 ![]() さて本日のメインイベント、紹興といえばここははずせない、というよりここしかない魯迅故居へ。隣が記念館になっており、門票はそこで買う。 記念館はよくできていた。魯迅の祖父は清朝のお役人であったそうだが、のちに汚職容疑で罷免され、魯迅家は没落する。父は秀才(科挙予備試験の合格者)だが、病弱で常に床に伏せっていたらしい。母は農村の出身で、姓は魯。魯迅の「魯」はここから来ている。本名は「周樹人」。 南京で学び、清朝から派遣されて日本へ留学。9年間滞在している。記念館には例の藤野先生コーナーもあり、銅像まであった。相棒が「魯迅のおかげで名を残した人やなあ」とスルドイことを言う。 内山完造夫妻と上海四川路の内山書店の写真があり、上海マニアには見逃せないだろう。(私はちがうが。) 魯迅の絶筆も、内山完造あての日文の手紙である。「ぜんそくがひどく、せっかくの約束ですがそちらには参れません・・・」 その夜、逝去したのである。 記念に「吶喊」を買った。 秋謹の年表を、荷物が増えるのを考えて買わなかったのが残念。香港では手に入らなさそう。 さてさて、となりの紹興民俗博物館。なかなかヒット。紹興の習慣を展示したコーナーがあり、展示物自体はたいしたことないのだが、展示されているミニチュアの人形たち、おそらくは紙粘土で制作、着色されていると思うのだが、非常に生き生きしていいて、今にも動き出さんばかりなのである。同じ顔つきのものが一つとしてなく、また極めてリアルなポーズで、名人の作だ。 ![]() 丘の上に越王廟があり、紹興の街を一望できるというので行ってみる。越王殿は立派な建物でいづれはなんらかの由緒があるんだろうが、説明がきがまったくないのでわからない。中に絵が書いてあり、 「臥薪嘗胆」「西施嫁夫差」などわかりやすい絵であった。あまり感心しない。 丘から降りると、日本人パッケージツアーのバスが泊まっていた。パックツアー客が泊まれるホテルなんてこの街にあるんだろうかといらん心配をするが、良く考えたら杭州から日帰りできているのだ。そーに決まってるよな。 1996/04/18 早朝6時半、隣の小学校ですさまじい音のラジオ体操が始まるのである。7時までの30分間、なかなかツライものがある。 本日は天気が良いので洗濯日。シャツ4枚、靴下4足、その他イロイロで9時半となる。 洗濯後、相棒がプンプン怒りながら帰ってきた。郵電局から電話をかけたら、3分で52元も取られて、その上手数料を5元も取られたのだそうだ。怒りながら風呂へ行った。他人の横で体を洗うのがいやで、夕べ風呂に行っとらんのだ。かわいいやつ。 現像した写真を廈門へ送る。3.6元。 ![]() 紹興名物、フェルトの帽子をかぶったおじさんが、これまた名物足漕ぎ船で遊覧客を引いていた。本日も春風駘蕩である。 バスで市内へ帰り、またしても咸享酒店。茶碗酒2杯に兎・雪菜包。パイナップルで32元。 食後、大塔へ。特筆すべきものでもなし。 雨がひどくなったのでタクシーで帰る。一番小さいタクシーだと、初乗り6元なり。しかし運転手、我々が見るからに外地人なのでメーターを倒さない。ここで倒せと命じても、遠回りされれば同じである。我々には様々な役割分担があるが、こういう時の役割分担も決まっている。相棒はここに住んで1年半になる外地人、私は訪れてきたその友人だ。 私 「せっかく来たのに雨で残念やわあ。」 相棒「今度来るときはまた別のとこに案内したるさかい。」 私 「あんたこっちにきてもう2年やっけ?」 相棒「一年半ぐらいや。12月までここにおるからまたおいで。」 私 「このタクシー代、私がもつからね」 相棒「あかんあかん、アンタは客人、オレは住人。」 白々しい会話が功を奏したか、タクシーは最短距離を走り、初乗りでホテルに着いた。行きの半額である。つーことは、ぼられてたんかい、行きは。 雨がひどいので、ホテルで日記を整理する。 |