第 一 話

ミ  サ  キ  様

 

 

−煌本社ビル最上階−
暗く長い廊下を一人の老紳士が歩いている...
その足音は廊下の壁で無気味に響いている。
大きな扉の前で足音が止まった。
扉には会長室と書かれている。
老紳士はその扉をノックし言葉を発する。
「ミサキ様...」

数秒して中から声がする。
「守崎(もりさき)か...入ってくれ...」
その声を聞き守崎と呼ばれた老紳士は扉を開け部屋の中に入っていく。
扉の中には今まで老紳士・守崎が通って来た廊下とは違って
明るく広い空間が広がっていた。
南向きの大きな硝子の窓と、その窓寄りに大きな机、
そして窓の外に向いている椅子が一つといった何処にでもある
会長室という感じの部屋であった...
しかし、ただ一つ違う点があるとすればその広さと内装である。
その広さは20人以上入れるぐらいの会議室ほどあり、
内装は窓よりにある大きな机と椅子が一個だけで、
そのせいか部屋はより一層広く感じられた。

入って来た守崎に対して声がする。
「どうかしたのか...守崎?」
守崎は答える。
「はい、ミサキ様...例の『悪魔召喚の儀』を調査に向かった者の報告ですが...」
それを聞いて今まで外の方を向いていた椅子がこちらを向き
「なにか分かったのかっ?」
なんと椅子に座っていたのは年端もいかぬ幼き少年だった。
守崎がミサキ様と呼んでいたのはこの少年のことであったようだ。
ミサキは歓喜の表情で次の守崎の言葉を待った。
守崎はミサキのその表情を見て慌てて次の言葉を発する。
「はっ、はい。例の宗教団体が行った召喚の儀というものの実態ですが、
潜入した者の報告によりますと、まず始めに何やら魔法陣らしき物を...」
「前置きはいいっ、お前の話はいつも長い。で、悪魔は出たのかっ、出なかったのかっ。」
ミサキは急かすように守崎の話に割り込む。
守崎は申し分けなさそうに話を続ける。
「はい、潜入した者の話では出たそうにございます。
しかしながらこれは...」
その答えを聞きミサキはより一層の喜びを表情に出し、
「そうか...出たか...。ははっ、そうか...」
だがミサキはそう言ったと同時に冷たい表情になり
何やらブツブツと独り言を呟きながら一人で考え込んでいた。
その様子を数分間見ていた守崎がミサキに話しかける。
「ミサキ様?」
ミサキは少し驚いた感じで答える。
「あっ、ああ...御苦労。下がっていいぞ。」
守崎はそれを聞くと扉の方へ向かって行く。
「おい、守崎。」
ミサキは扉に向かって行く守崎を引き止めた。
「何でございましょう、ミサキ様。」
守崎は振り向きミサキの方を見る。
「今の報告をまとめて持って来てくれ。出来るだけ詳しくだぞ。」
「はっ、かしこまりました...しかしながらミサキ様...」
守崎は何か言いたげにミサキを見つめる。
「何だ守崎、報告したいことがまだあるのか?」
ミサキは守崎の顔をみて尋ねる。
「はい、それが...調査に向かった者が半精神崩壊状態にありまして...
詳しい話が聞けるかどうかも分かりませんし...悪魔の実在も本当の所...」
そう守崎が言うと...
「なんだとっ!!」
ミサキは少し考え、
「...そうか...よし、その宗教団体の幹部の何人かを連れて来て話を聞け。
手段はお前に任せる。少々手荒なことをしてもかまわん。」
その言葉を聞き守崎は少し顔を歪めそれを隠すようにうつむいた。
それを見たミサキは
「どうした、守崎?不服なのか?」
「いっ、いえ...ミサキ様の仰せのままに。」
守崎はミサキを恐れるようにそう言った。
「では、行け。」
ミサキがそう言うと守崎は足早に部屋を出ていった。

ミサキは守崎が部屋を出ていったのを確認すると口元に冷たい笑みを浮かべ
また何やらブツブツ独り言を言いながら何かを考えているようだった...


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