第五話:新たなる強敵


                      written by 狂極

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 練田署長:ゴールドは王水に溶ける...同じように銀も溶ける...彼らの武器      や鎧も同じように溶ける。この事に早く気づくべきだった。 愚羅市長:『卿』の2重3重の罠だ!と署長が叫んだのは、そう言う意味だったの      か。何と云う『卿』の陰険な手口だ。 練田署長:でも遂に2人だけに成りましたね。市長、どうします? 私はもう覚悟      は出来ていますがね。 愚羅市長:私も行く。今更引き返せるか。最も『卿』がこのまま逃がしてくれる訳      も無かろう。  2人は中央ドアを開けて、スクロール5とマップを見ながら地下5階を目指して  進んでいった。同じ様な入り組んだ迷路、上り階段と下り階段を繰り返しながら  遂に2人はプラチナのドアが見える。地下5階の入口に辿り着いた。  ドアの横の壁には;          地下5階:    ドラゴン&戦士          プラチナの間:  死神の間 愚羅市長:今度は【プラチナの間】か。しかも死神とは...一体全体『卿』は何      時になったら出て来ることやら...それまでこちらの身が持つかどう      か...ははははあー....  既に息切れ同然の市長であった。 練田署長:ドラゴン&戦士と云うのも気にかかりますねー。とにかく入ってみまし      ょう。  2人はプラチナの鍵を使ってドアを開けて中に入った。中は銀白色に輝く大広間  であった。造りは地下4階と全く同じで広間の中央にはやはりプラチナの豪華な  飾りドアのある、部屋があった。 練田署長:全く同じだ。造りが...とにかく左右の部屋から調べてみましょう。      うん? 市長!愚羅市長! 一体どうしたんですか、体が震えています      よ。 愚羅市長:何でもない! 私は震えて等いない。署長、人聞きの悪いことを云わな      いでくれ。  と云う市長の顔は明らかに青ざめていた。ともあれ、一通り探索を終えた2人は  手にいれたアイテム等を何時ものように確認を始めたのであった。     1.仙人の仮面     2.スクロール6/7     3.どくろの鍵     4.マップ5(プラチナの間)     5.プラチナ.ソード     6.プラチナ.アーマー 7.プラチナ.シールド     8.プラチナ.ヘルム     9.仏教書2(法華経) 練田署長:プラチナの装備は市長に装備して貰いましょう。市長の荷物は私が預か      りましょう。さーて、中央のプラチナのドアを開ける前にマップ5とス      クロールを見てみよう。        スクロール6 : ドラゴン.....プラチナ戦士        スクロール7 : 戦士は...仏**に...よ**... 愚羅市長:署長、このドラゴンは分かるとして...プラチナ戦士と云うのは何だ      ろう。しかも「戦士は...」の所で肝心なところがボケて見えない。 練田署長:とにかく市長、油断は禁物です。やはり、広間の中央の部屋が怪しい。  2人は覚悟を決めて、最後のプラチナのドアを開けた...すると...     「ふっはっはっはっは、遂に此処までやってきたな! 練田署長」  迷宮一杯に響きわたる声と共に、プラチナの武具で覆われた一人の仮面の戦士が  立っていた。戦士の後ろには、今までのどのドラゴンよりも一際大型の『プラチ  ナ.ドラゴン』が、続いていた。 愚羅市長:ひっ、ひぇー、でっ、出たあー、ドラゴンと戦士だ。 練田署長:落ちつきなさい、市長。ところで、その声は...芦腹、芦腹老人だろ      う! 謎の戦士:ふっふっふ...分かったか、タネ...いや、練田署長。此処まで来      たことは誉めてやろう。しかし、この先地下6階の『卿』に会うために      はこの私とドラゴンを倒さなくてはならないぞ。 愚羅市長:命だけは助けてくれ...私は無関係だ...私は...私は...市      長だ、市長だ...  恐怖の為に完全に気が触れた...愚羅市長であった... 芦腹老人:ふん、先ずは邪魔者、愚羅の相手はドラゴンにして貰おう。行け!!       プラチナ.ドラゴン。  すると、今まで芦腹老人の後方に控えていたプラチナ.ドラゴンは、愚羅市長め  がけて襲いかかった。愚羅市長のプラチナの武具も何の役にも立たず、市長はあ  っと云う間に中央のプラチナのドアの奥に引きずり込まれて行った。      「ズリ..バリバリ...ガリッ...ガリガリガリ」  愚羅市長の...鎧ごと食われる音が聞こえる。 芦腹老人:さて練田署長、邪魔者は居なくなった。そろそろ一騎打ちと行こうか。  と云うなり、芦腹老人はプラチナのドアを締めて、練田署長の前に立つとゆっく  りとプラチナ.ソードの剣先を署長の喉元に据えた。 練田署長:芦腹老人!お前も変わり果てた者だ。『卿』の手下に成り下がるとは、      見下げ果てた奴だ。行くぞ!! 芦腹。  とは云うものの、練田署長は芦腹老人の攻撃を避けるだけで精一杯であった。彼  には武器と云えばパイソン357しかなく、芦腹老人のプラチナの防具の前には  そんなものが役立つはずも無かった......  一方、芦腹老人のソードの腕は過たず、着実に練田署長の動きを封じて行くのだ  った。プラチナ.ソードの切っ先は、練田の腕、眉間、胸、足と着実にヒットし  ていた。練田署長の体は致命傷には至らなかったが既に満身創痍であった。 芦腹老人:ふあっはっはっは、どうした、どうした、練田。これじゃちっとも面白      くないぞ。どうだ、少しは反撃出来ないのか!? 情けない奴め、アイ      テムはどうした? 重くて捨ててきたか!? 練田署長:うーん、駄目だ、このままでは時間の問題だ。何とか奴に一矢でも報い      る事は出来ないのか...何? アイテムがどうしただと? アイテム      か...アイテム!? 「戦士は...仏...」 そうか! 宗教書かもしれない。奴も『卿』も云ってみればもはや人間      ではないのだ。下手な武器よりも...効くかも知れない...  やはり、過去幾多の戦いを経験してきた練田署長は、そこまで考えると今まで手  にいれた宗教書を片っ端から芦腹老人めがけて投げつけた:       旧約聖書は芦腹老人の素早さを封じた。       新訳聖書は芦腹老人の攻撃力を封じた。       コーランは練田の攻撃力を増した。       般若経は芦腹老人の悪心を抑制した。  そして、最後に投げつけた「法華経」は、芦腹老人の仮面を吹き飛ばして顔の眉  間にまともに打ち当たった.....  ぐえぇー、ぎゃぁーーー、おっ、己れ...練田...見事だ...  もはやこれまでと判断した芦腹老人は、己のソードの切っ先を自分の腹めがけて  ズブリッ...と突き刺した。 練田署長:まっ、待てー、芦腹老人、早まるな.....  と練田が気づいた時には既に、ソードは芦腹老人の腹を深々と貫いていた。  2人の戦いは終わった。練田署長は息も絶え絶えの芦腹老人の前に近づいた。  そしてしっかりと自分の膝に彼の頭を持ち据えた。 芦腹老人:見事だな、タネさん。まあ、最も俺は始めから貴様と...げほっ、戦      う気など毛頭...うっ、うっ...無かったが... 練田署長:何も云うな、芦腹さん。全ては『卿』の差し金なんだ。 芦腹老人:俺もうかつだった。まさかこれ程強力な感染力を持つ物だったとは。感      染されたと知ったときには遅かった。自分で自分がどうにもならなかっ      た。あとは『卿』の命令で動くロボットと同じだった。 練田署長:お前ほどの男でもどうにもならなかったとは...恐ろしい。うん!?      しっかりしろ! 芦腹さん、死ぬな。2人でまた、パリのインターポー      ルで暴れようじゃないか。しっかりしろ! 芦腹老人:ふっ、俺は...もう...死ぬ。いや、取り込まれる。タネさん、死      ぬ前に良いことを教えてやる。『卿』に関する事だ。もう...声が出      せない...耳を...耳を貸せ...いいか...『卿』は...人      の...を...取り込んで...全員...まだ...い..て..      .るかも...アイテムを....にするな....最後の最後まで.      ...ううっ、げほげほ........ガクッ.......... 練田署長:分かった芦腹さん...お前の犠牲は無駄にはしない。『卿』はおれが      必ず倒してみせる...芦腹さん、芦腹さん、...芦腹ぁぁぁ...  もはやピクリとも動かない親友芦腹老人の変わり果てた体を抱きながら練田署長  は、何時までも何時までも男泣きに泣き狂っていた。滂沱と流れ落ちる涙の奥に  は、『卿』への呪うがごとき執念の怒りがあった....... −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−          卿の逆襲 第五話:新たなる強敵        − 完 −

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