第六話(最終章) 激突! 卿vs練田署長


                      written by 狂極

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  遺言通り芦腹老人の亡骸を例のプラチナのドアの奥に横たえた後、練田署長は、  ゆっくりと立ち上がると芦腹老人に教えられた通りの道を進み、遂に『卿』の潜  む地下6階のドアの前にたどり着いたのであった。  どくろのマークがある鍵穴の横には;      DDDの間 : Three Death(死ね、死ね、死ね)  との言葉が刻まれていた。練田署長はゆっくりとどくろの鍵を差し込んだ。ドア  はギギィーと穏やかに開き始めた。  中は...真っ白なコンクリート張りの大広間であった。大広間の中央に黄金の  きらびやかなイスがあり、一人の初老の老人が座っていた。その後ろには...  この世の物とは思えない身長20m程の巨大なエイリアンが立っていた。 椅子の老人:ようこそ、練田署長。今か今かと気を長くして待っておったぞ。貴殿       にしては些か到着が遅かった様じゃのう...ふぉっふぉっふぉ。 練田署長: ................. 椅子の老人:おや?練田署長、如何したかな? まさか君ともあろう人が恐ろしく       て口も聞けないと云うわけでも有るまい? 一体、何時まで唖黙って       おる積もりかな!? 練田署長: .................  練田署長はやはりじっと黙ったまま、老人と後ろのエイリアンを見つめたまま何  を思ったか、静かに背の荷物を降ろすと中からお面の様な物を取り出した。 椅子の老人:むむ!そっ、それは私の愛用の『仙人の仮面』ではないか!? 何故       、その仮面をお主が...やはり芦腹が持ち出して...まあ、よい       は...ふっふっふっふ.....  練田署長は、『仙人の仮面』を通して老人とエイリアンを眺めた。すると本来別  々に見えた老人とエイリアンは一つに重なり...おぞましき..光景が...  見えたのであった... 練田署長:『卿』...やはりお前は既に...常人の姿を逸していたのか!?      うぬぬ...芦腹老人の言葉を疑う訳ではなかったが...此処まで.      ..人間を愚弄するとは..... 卿老人: ふあっはっはっはっは、練田署長よ!君にも見えるかね、この私の真の      姿が...うわっはっはっはっはっは....  『仙人の仮面』を通して見た『卿』の姿とは..当に地獄絵図そのものだった:   20mを越えるモンスター、卿老人の体は全て様々な人間の体で構成されていた  しかも取り付けられた人間の一人一人はまだ死ぬことも出来ず、苦しさの為かま  だ蠢(うごめ)いていた。 練田署長:卿よ、それがお前のWH−ビールスの自己増殖による成れの果てか!お      ぞましい限りだな!?しかも全て我々の仲間だけを...何という奴だ      。お前には人間の心と云うものが無いのか!? 卿老人: ふぉっふぉっふぉっふぉ、何を云うのかね!? 練田君。私は既に人間      ではない。いや、人間以上の存在なのだよ。こうして私に手向かう人間      を一人一人私の体に取り込んで一つの部品として、これからも私の為に      役だって貰うのだ。寧ろ、感謝して貰いたいものだ。それでは一通り各      部品を紹介させて戴こうかね。君にとっても懐かしい人もいるだろうか      らね。いーっひっひっひっひっひっひ....  こうして卿老人は自分の体に取り込んだ各人を見せつけた:  卿老人の右腕/手: 愚羅市長の私設秘書、ポンタ女史の等身大 卿老人の左腕/手: 同じく練田署長の私設秘書、ケイ女史の等身大   この2人は市長一行がアメリカに向かってまもなく卿老人の迷宮に連れてこら   れて、部品にされてしまったのであった。  卿老人の左足:  良吉博士  卿老人の右足:  木戸判事  卿老人の腹:   愚羅市長  卿老人の背中:  井戸検事  卿老人の尻:   山亀警部  卿老人の頭:   芦腹老人(既に遺体)  卿老人の左足の裏:ヒマジン(コーマンジ時代の署長の下っ端)  卿老人の右足の裏:コーマ (同じくコーマンジ時代の木っ端役人) 卿老人: どうだ!練田署長、懐かしいだろう。君を一体、どこに取り込んだらい      いか、今から迷っているよ。ふあっはっはっはっはっは。さーて、無駄      話はこれくらいにしてそろそろお前の体を取り込もうかい!? ふぉっ      ふぉっふぉっふぉ。 練田署長:能書はそれくらいにしろ、卿老人よ、お前にはこれが見えないのか?  と云うなり練田署長は今までに手にいれた【ゲーム書】と【宗教書】を高高と掲  げたのであった。それを見た卿老人の目に一瞬、動揺が走ったのを練田は見逃さ  なかった。 練田署長:いいか!卿よ、よーく聞くんだ!全ては私の親友、芦腹老人の身を挺し      ての策略だったのだ。彼はお前の弱点を全てお見通しで、地下1階から      順番にこれらのアイテムを我々に授けてくれたのだ。確かにその間の犠      牲は目に余るものだった...しかし、私は既にこれらのアイテムの効      用を全て死に際の芦腹老人から聞き出しているんだ!  と云いつつ、練田署長は先ず第1に【旧約聖書】を卿老人に投げつけた。すると  ...ぐぎゃあぁぁーーと言う卿老人の叫びと共に彼の両手からポンタ/ケイ秘  書の体が剥がれ落ちたのであった。  続いて練田署長は【新訳聖書】を卿老人に投げつけた。すると...ぐえぇぇぇ  ぇ....との悲鳴と共に彼の両足から良吉と木戸の体が剥がれ落ちた。  そして練田署長は息継ぐ暇も見せずに、次から次にと【コーラン】、【般若経】  、【法華経】を投げつけた。同じ様に卿老人の悲鳴と共に彼の体から愚羅市長/  山亀警部/芦腹老人/井戸検事/ヒマジン/コーマ全員の体が剥がれ落ち、全て  の分身が剥がれた後に残ったのは、当に【仙人の衣】と【仙人の杖】だけを装備  した高々162cm程のやせ衰えた老人、卿の姿がそこにあった。 練田署長は更に容赦なく、次の【ゲーム書】のアイテムを投げつけた:  先ず第1に【RPGの書】を投げつけた:  署長の攻撃力が増加した  次に【アクションゲームの書】を投げつけた:卿の素早さが50%低下した  次に【ADVゲームの書】を投げつけた:  卿の賢さが50%低下した  最後には【SLGの書】を投げつけた:   署長の防御力が50%増加した                       卿の攻撃力が50%低下した                       卿の防御力が50%低下した 卿老人: ふーむ、練田よ、お前は本当に煮ても焼いても食えない奴だな。お前を      取り込もうとした私が間違いだった様だ。望み通り地獄に送ってやろう      。来い! 練田署長! 練田署長:おう! 卿老人よ! 望むところだ!!  と云うなり2人は真正面から激突した。     グアッシィィィーン、バキッ、ガキンーンンン、グアッシャーンン  すさまじいばかりの激突音のせいか、地下6階の迷宮も震え壁や地面にひびが入  ったかと思うと、天井が崩れ始めたのであった。  尚も卿老人と練田の戦いは続く。2人の体は相次ぐ激突とすれ違いざまの摩擦で  傷だらけであった: 卿老人: ふふふ、練田署長、やるな! 練田署長:ふふふ、卿老人、お前も年の割には頑張るじゃないか! 卿老人: ええい、このままでは長引く、一気に片を付けようぞ!!       来るか! 練田よ! わしの異次元世界へ!! 練田署長:ふふふ、望む所だい!  その後、何度目かの激突の末、竜巻に飲み込まれるかのように2人の姿は消え去  った。そして、同時に卿老人の迷宮も完全に崩れさって行ったのである。  ゴオオオォォォォーーー、ドッシーーーーン、グガガガガァァァァーーン ..................................   ..................................   ..................................   ..................................  最初に目を覚ましたのは、愚羅市長であった。周りを見ると、既に最初に入った  卿老人の迷宮への地下通路は完全に埋もれていた。愚羅市長は急いで廃虚の周り  を捜し出した。すると、元の地下通路があった所を中心にして、何人かのまだ気  絶したままの人間の姿があった。ともあれ最初に気づいた愚羅市長が倒れている  全員を起こして回った。 愚羅市長:大変な戦いだった。生きているのが不思議なくらいだ。芦腹老人はダメ      だったのか... ポンタ :ああ、私達も一時は一体どうなるかと..... ケイ  :練田署長も卿老人サマも既に...この世から... 山亀警部:署長...立派なお方だった...ちょっとロリコンではあるが...      しかし、卿の野郎め、くっさーい屁をこきやがって.... 井戸検事:2人は永遠の戦いに入って行った...異次元空間で今でも... 木戸判事:そう、今でも戦っているのだ...2人は... 良吉博士:(生きててえがった...帰りに西海岸で金髪の...ビキニ...) コーマ: 俺は一体何だったんだ。ちょっと出来心で警察の金庫をゴソゴソやって      いたら、変な老人に捕まってしまって、気がついたら足の裏にされてい      た。恐ろしい...何と、恐ろしい... ヒマジン:...ああ、やだやだ、卿の野郎、くそを踏みつけやがって俺の身にも      成って見ろってんだ...畜生。 愚羅市長:とにかくみんな無事で良かった。日本に帰ろう。帰って市の再建にまた      一からみんなでやり直そう。 全員:  おお! そうだ! そうだ!  そして芦腹老人の遺体を手厚く葬った後、愚羅市長の一行9人は日本に向かったの  であった。日本に帰った後、愚羅市長を中心に市の再建に励んだ事は云うまでもな  い事である....だが.....  此処で忘れては成らないことが一つだけあったのである。魔のWH−ビールスは、  あくまでも人間の邪悪な怨念や欲望の中に巣くう。一見忘れてしまったかの様な人  間の欲望の奥底に巣くう魔性と一体になった時WH−ビールスは再び【サイレント  ビールス】として蘇るのである。  この時、只一人『愚羅市長』のみが、卿老人のWH−ビールスに感染していた事を  誰も知らなかった。そして、市長の心の奥底には、卿老人の保有していたロナルド  財団の資産と利権に限りない執着があった事を......... −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− RPGシナリオ 卿の逆襲(KYO STRIKES BACK)   −  完  −

Copyright (C) 1997 by 狂極BRJ36801@pcvan.or.jp


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