(5)棒の横振動 −振動モードと固有振動数の測定−
実験目的
弾性体である「棒」の振動には、縦振動、横振動そしてねじれ振動がある。この実験は、周期的な力(電磁石)で試料板に横振動を与え、「光のてこ」の方法を応用して振動板各点の振動変位を測定する。この結果と弾性体の振動理論から得られる結果を比較し、弾性体の固有振動と振動モードについて実験的に検証することを目的とする。
実験方法
(1)発振器A(FUNCTION SYNTHESIZER),電力増幅器(BIPOLA POWER AMPLIFIRER),加振器
C(COIL)の結線に間違いがないか、確かめる。
(2)レーザーのスイッチを入れて、レーザー光線を試料板に当てる。試料板には等間隔
に10本の目盛り線がかかれているから、レーザー光線をその一番下の目盛り線1
に照射する。
(3)発振器、電力増幅器の電源を入れる。この時電力増幅器の「OVERLOADランプ」Dが
点灯しているときは、ランプが暗くなるまで「AMPLITUDEつまみ」Eを逆時計回り
の方向に回転させる。
(4)発振器の「DISITボタン」のどちらかを押して表示周波数の「小数点」が移動する
ことを確かめる。この操作によって、小数点を「0.01Hz」の位置にする。
(5)発振器の「FREQUENCY SETダイヤル」をゆっくり回すと、周波数が表示される。周
波数を2.5Hz前後で試料板が振動する。(モード1)振動板が振動しないとき
は、次の点を確かめる。
@電力増幅器の「OVERLOADランプ」がうすく点灯しているか。
A加振器コイルが、試料板から0.5mm以上離れていないか。
(6)「FREQUENCY SETダイヤル」で周波数を静かに変えていき、試料板が最も大きく振
動する周波数にセットし、その する。
振動が大きくて、振動板がぶつかる時は、電力増幅器「AMPLITUDEつまみ」で電流
を下げるか、あるいは加振コイルを試料板から少し離す。
(7)「FREQUENCY SETダイヤル」を微妙に調節して、最大振幅を保ちながらスクリーン
に反射したレーザー光線の長さを測る。(D1)
(8)レーザー台を上げて、一つ上の目盛り線を照射し、スクリーン上の反射光の長さを
測る。(D2)
測定中に周波数が変化して、振幅が小さくなったら周波数を微調整して最大振幅で
測定する。
(9)このようにして、試料板にかかれている10本の目盛り線からの反射光について、
スクリーン上の光の長さを測る。(D10)
(10)試料板からスクリーンまでの距離を巻き尺で測定する。(s)
(11)周波数を16Hz前後にすると、モード2の共振振動が現れる。この場合も、周
波数を微調整して最大振幅で振動させて、その周波数f2を記録し、モード1と同
様に10カ所の振動を測定する。
測定中に周波数が変化して、振幅が小さくなったら周波数を微調整して最大振幅で
測定する。
測定装置概図
実験結果とまとめ
・モード1
周波数f1‥‥2.45 Hz
反射光測定長
D1 |
D2 |
D3 |
D4 |
D5 |
D6 |
D7 |
D8 |
D9 |
D10 |
|
1回目 [mm] |
112 |
110 |
105 |
103 |
97 |
90 |
80 |
69 |
46 |
21 |
2回目 [mm] |
115 |
110 |
106 |
106 |
100 |
94 |
80 |
70 |
45 |
21 |
平均値 [mm] |
113.5 |
110.0 |
105.5 |
104.5 |
98.5 |
92.0 |
80.0 |
69.5 |
45.5 |
21.0 |
・モード2
周波数f2‥‥15.56 [Hz]
反射光測定長
D1 |
D2 |
D3 |
D4 |
D5 |
D6 |
D7 |
D8 |
D9 |
D10 |
|
1回目 [mm] |
25 |
25 |
18 |
15 |
13 |
10 |
9 |
18 |
16 |
13 |
2回目 [mm] |
27 |
23 |
20 |
17 |
15 |
13 |
10 |
18 |
20 |
13 |
平均値 [mm] |
26.0 |
24.0 |
19.0 |
16.0 |
14.0 |
11.5 |
9.5 |
18.0 |
18.0 |
13.0 |
・スクリーンと板の距離:s
1回目 |
2回目 |
平均値 |
|
s [mm] |
2084 |
2080 |
2082 |
・各点の振幅
[mm]振幅を計算するに当たって式を記す。
・目盛り線10の位置の振幅
,sはスクリーンと板の距離
D10‥‥目盛り線10で測定した反射光の長さ
・目盛り線9の位置の振幅
同様に目盛り線8以下を計算する。(dに関しては上記の値を用いる)
モード2の測定値から振幅を計算する際は、最小の測定値の次からはマイナスの符号を付けて、上記と同じ方法で計算をする。
計算結果の表
Y10 |
Y9 |
Y8 |
Y7 |
Y6 |
Y5 |
Y4 |
Y3 |
Y2 |
Y1 |
|
モード1 |
0.15 |
0.59 |
1.26 |
2.03 |
2.91 |
3.86 |
4.86 |
5.87 |
6.93 |
8.02 |
モード2 |
0.094 |
0.267 |
0.440 |
0.531 |
0.421 |
0.287 |
0.133 |
-0.050 |
-0.281 |
-0.531 |
・棒の横振動の振動モードの図
・棒の横振動方程式を導く
時刻、棒の位置
の微小部分
に働く力は、「曲げ」変形によって微小部分の両断面に生じる「せんだん応力」(ずれ応力)
と
による力である。
従って、棒の微小部分がだけ変位しているとき、運動方程式は
は微少部分の断面積、
は棒の密度、
は棒の変位である。
また、曲げモーメントと力
のモーメントのつりあいより
ヤング率と断面2次モーメント
、曲げの曲率半径
によって曲げモーメント
は
以上から、横振動している微小部分の運動方程式は次のようになる。
これを棒の横振動方程式という。
・上端固定、下端自由の境界条件を用いた解を導く
先ほど求めた棒の横振動方程式は
とおくことによって
となるが、これはについての4階常微分方程式で、その一般解は
4つの定数は次の境界条件によって決まる。
実験の振動は上端固定、下端自由であるから、
つまり、
(上端)で
これに一般解を代入すると、
(下端)で
これに一般解を代入すると
この結果から
この式を満足するは無数にあるが、最も小さい値は
上の値を用いてを
で表せば、一般解は
先ほど求めた振動方程式の解より求められた計算結果をもとに実験結果と比較する。
※ただし、計算するに当たって、下記の値をもとに計算する。
,
,
C
1(任意定数),
計算結果
x |
Y1(A=1.875) |
Y2(A=4.694) |
Y3(A=7.885) |
0 |
0.000 |
0.000 |
0.000 |
40 |
0.046 |
0.182 |
0.457 |
80 |
0.174 |
0.591 |
1.210 |
120 |
0.372 |
1.033 |
1.514 |
160 |
0.626 |
1.342 |
1.053 |
200 |
0.925 |
1.401 |
0.039 |
240 |
1.256 |
1.158 |
-0.948 |
280 |
1.610 |
0.623 |
-1.316 |
320 |
1.977 |
-0.138 |
-0.790 |
360 |
2.350 |
-1.029 |
0.458 |
400 |
2.723 |
-1.964 |
2.002 |
・固有振動数(理論)と実験で得られた共振周波数(f
1,f2)との比較上記の結果より、理論値と実験値を比較すると約2倍の差になっている。
このような結果が出た原因として、この実験では上端を固定し、下端を自由振動する棒での振動は開口端補正の性質を持っている。そのために、半周期分しか実験値には現れないと考えれば、理論値と実験値は約2倍の差があるのは当然であると考える。
感想
今回の実験レポートを書いたのが実験をした時からかなり経過してしまって、なにをした実験であるかを忘れてしまった。それを冬休みの生活のなかで思い出すにはとても大変なことだった。それでも、何とか思い出し感想までくると、ちょっとほっとしている。
いま思い出すと、実験のとき振動板とコイルの距離や、レーザー光線の振動幅などを実験途中で変えてしまって、進行が遅れたような気がする。
今年は、そのようなことをできるだけ減らし、まじめな態度で実験に望もうと思う。