(6)金属の電気抵抗 −温度変化の測定と最小自乗法−

 

 実験目的

大きな電気抵抗を精密に測る方法の一つに「ブリッジ回路」を利用する方法がある。このうち、交流ブリッジは非常に大きな抵抗を測るのに適しているが、今回用いるホイートストンブリッジと呼ばれている直流ブリッジは1〜数100Ωの測定に適している。

この実験では、抵抗測定に用いられる「ブリッジ回路」の理解を深めるとともにニクロム線の電気抵抗が室温〜500℃の度範囲でどのように変化するかを調べる。

 

 

 実験方法

  1. ホイートストンブリッジに試料を接続する。
  2. 電気炉の温度を測定する熱電対をmV電圧計に+,−を確かめて接続し、熱電対の測定端が試料のそばにあるかを確かめる。また、熱電対の他端をジャー(魔法瓶)に浸して零点補償とする。そのため、ジャーに水と氷を入れておかなければならない。
  3. 電気炉に流す電流を調節するために、スライダック(可変トランス)を接続する。この時スライダックのダイヤルが0に戻っていることを確かめる。(左一杯に回しておく。)また、INPUTとOUTPUTを間違わないように注意する。
  4. 試料からの接続線をX、Xに接続し、二つのスイッチ(MV,R)(INT.BA,EXT.BA)がR側、INT.BA側であることを確かめる。
  5. MULTIPLYダイヤルを0.1、抵抗ダイヤルの×1000を1、その他を0に合わせる。押しボタンBAを押しながら、GAを押して、検流計の指針がどちらに振れるかを見る。
  6. 指針のふれが+の時は、抵抗ダイヤルの値を増やし、−の時はダイヤルの値を減らす。4つの抵抗ダイヤルを調整して、検流計の指針が0になるようにする。
  7. 指針が0の時、試料の電気抵抗はX=(抵抗ダイヤル値の和)×(MULTIPLY値)[Ω]で与えられる。
  8. 熱電対の起電力をミリボルトメーターで読む。(この電圧から炉の中の温度を知ることができる。)
  9. スライダックを30-50(V)に上げて、電気炉を熱する。熱電対ミリボルトメーターの電圧が1mV上昇するごとに抵抗ダイヤルを調整して、正確な抵抗値と電圧値を記録する。
  10. 熱電対ミリボルトメーターの電圧が15mVになったら実験を終了する。

 

 

〔注意〕

・炉の温度を早く上げようとして、不用意に電圧を急激に上げると、温度の変化が早すぎて抵抗のバランスが追いつかなくなり、実験は失敗する。

・抵抗を探すのに時間がかかるから、測定温度に達する前からブリッジの平衡(検流計が零)をとって、そのときの熱電対電圧を読む(必ずしも正確に1mVづつでなくても良い)。

 

 

 実験結果・課題

 

(1)「ブリッジ回路」で抵抗を測る原理

4つの抵抗P,Q,R,Sを右図のように連結し、連結点のA,B間に電池、C,D間に検流計を連結する。検流計Gを流れる電流が0になったとき、すなわちC,Dの電位が等しくなった場合に次の関係が成り立つ。

 故に、

これより2つの抵抗の比P/Q、及びSがわかれば、未知抵抗Rを測定することができる。

Rの測定精度は、P,Q,Sの精度と検流計の感度に支配される。

 

  1. 温度の決定(別紙[8]銅−コンスタンタンの熱起電力の表を参照)

 

熱起電力

[mV]

電気抵抗

[Ω]

温 度

[℃]

熱起電力

[mV]

電気抵抗

[Ω]

温 度

[℃]

0

106.6

 

8

108.3

175.4

1

106.8

25.2

9

108.4

194.5

2

105.4

49.2

10

108.6

213.3

3

107.2

72.1

11

108.9

231.7

4

107.4

94.0

12

109.1

249.9

5

107.6

115.3

13

109.4

267.8

6

107.7

135.8

14

109.6

285.6

7

107.9

155.9

15

109.9

303.2

 

 

(3)温度と抵抗の関係を最小自乗法を用いた曲線のグラフ

最小自乗法による導出:1次係数

15組の(熱電対の抵抗),(温度)の測定値から、の関係がと表せるものと考え、の最確値を最小自乗法により求める。

最小自乗法の間接測定において、最確値(真の値に最も近い値)を求める一つの方法として、残差(測定値−最確値)の平方和が最小となる値が最確値となることを利用できる。

 ここで、線形化された測定方程式を

とし、の最確値を、残差をとすると、残差方程式は

となる。

残差の平方和をとすると、

を最小にする条件が

であることから、

∴ ‥‥‥@

∴ ‥‥‥A

@,Aを正規方程式といい、これを連立させて解くと、最確値が求められる。

 

 

 

 

ここで、

であるので、この値を正規方程式に代入してこれを解くと、

     

     

となる。

 

最小自乗法による導出:2次係数(コンピュータソフトを用いて)

a=117457,b=-2246.5,c=10.743

(4)最小自乗法について

 誤差法則を用いると、多くの測定値をもとにして、最も真の値に近いと考えられる最確値を求めることができる。それが、最小自乗法である。

例えば温度における抵抗をとすれば、あまり広くない範囲で、の1次式で、

(ただし)と表される。

 従ってを1,2,…,とした個の異なる温度で抵抗を測り、それらの測定値(,)を方眼紙の上にかいたとして、それらの測定点は一直線上に並ぶということを上式は表している。しかし、測定値は常に誤差を伴うために、実験的には完全な一直線上には並んでいない。そこでどのようにして最も合理的な位置に直線を引くかの問題を起こる。

 そこで、容易に思いつく方法はどの測定点についてもできるだけその近くを通るように直線を引くことである。そのような考えで引いた直線の方程式をとしたとき、この式のをいれて計算したの値をと、実測のの値との差をとすると、は次式のようになる。

 このがすべてのについてなるべく小さくなるように,を決める方法について考える。その方法の1つに残差の2乗の和を最小にするようにを決める方法を最小自乗法という。

 

 

 感想

今回の実験は、結果をまとめるのにかなり手こずった。まず、温度の決定の際にうまく決定ができなかったが、計算を何度もやり直してそれらしい値となった。

熱電対は、工学実験で最初にやったので「あ、そんな温度の計り方があったな。」などと思ったりもした。今回の実験で使った、ホイートストンブリッジの操作方法が簡単だったので良かった。

最小自乗法は、今までに計測の授業でやったことがあるが、今回のように文にまとめて説明することなどなかったし、実際の数値を当てはめて計算するとかなり大変だった。