(2)剛体振子 −重力加速度の測定−
実験目的
ケーターの振り子は3ヶの“おもり”が移動できるように作られていて、『回転半径』を変えることができる。振り子を逆さにつるしたときも、周期が変化しないとき、その周期と支店間の距離から重力加速度を求めることを目的とする。
実験方法
(1)mが可動範囲のほぼ中央にあることを確かめて、Mを下側(正方向)にしてつるす。この時、ナイフエッジを破損しないように注意して取り扱う。
また、振り子を取り外したときは、必ず「縦方向」にしながら持ち運ぶ。
(2)mを目盛り
90pの位置に固定し、100回周期を1/10秒以上の精度で測定する。(3)mを
10p下げて、(2)と同様に測定する。以下、順次
10pづつ、下まで測定をする。(4)次に、振り子を注意しながら取り外し、Mが上(逆方向)になるようにつるし、
(1)(2)(3)の要領で測定する。(5)
(2)〜(4)の結果をもとにグラフを描く。正方向と逆方向の曲線の交点をグラフからもとめ、この位置にmを固定する。(6)mを固定したならば、mの微動ねじを使って、
5oごとに100回周期を測定し、(5)の要領で正方向・逆方向の一致する周期を求める。(7)
(6)のグラフから、正逆周期が一致する位置に固定し、10往復毎の時間を210回まで連続して測定する。(この間、ストップウオッチを止めない。)計時は1/10秒以上の精度で測定する。
実験結果と課題
(a)測定結果
正方向 |
逆方向 |
||
mの位置[ cm] |
100 回周期の時間 |
mの位置[ cm] |
100 回周期の時間 |
10 |
3 分20秒67 |
90 |
3 分20秒05 |
20 |
3 分22秒03 |
80 |
3 分19秒84 |
30 |
3 分19秒66 |
70 |
3 分19秒89 |
40 |
3 分19秒30 |
60 |
3 分19秒26 |
50 |
3 分19秒37 |
50 |
3 分18秒87 |
60 |
未測定 |
40 |
3 分19秒00 |
70 |
3 分19秒97 |
30 |
3 分19秒47 |
80 |
3 分22秒42 |
20 |
3 分20秒23 |
90 |
未測定 |
10 |
3 分21秒47 |
・測定結果をもとに、横軸にmの位置,縦軸に時間をとった場合の関係のグラフを
描く。(別紙参照)
・グラフより、交点を読みとると正方向・逆方向ともに、
m=
22cmというmの距離が求められる。
この距離は正方向・逆方向ともに、同じ時間であるはずである。
・ここで、m=
22cmの値を用いて正方向・逆方向の時間を測定して確かめをする。正方向‥‥
3分19秒92逆方向‥‥
3分20秒13差は
100分の18秒であり、ほぼ一致していることが確かめられる。
課題(1)
図2のような剛体振子の周期は
sinθ≒θと近似して、を回転軸として、
を回転軸として、
となることを運動方程式から導く。
また、のとき、
を導く。
図2のように、質量Mの剛体を重心Gからはずれた鉛直線Oで支え、自由振り子として振動させる。とすると、
の鉛直線に対する変位角がθのとき、重心Gにかかる重力は軸Oのまわりに
のモーメントを作り、θを減らすように働く。
この回転の運動方程式はすべての摩擦抵抗が無視できるほどに小さいとすれば、以下のように表すことができる。
ここで、とする。
‥‥
とすると、
(1)式は角振動数と、同じ形をした式であることから、その周期Tは、
となる。
また、Iは平行軸の定理により重心Gを通って、O軸に平行な線に関する慣性モーメントI
Gと以下のように関係づけする事ができる。従って周期は、
と表される。
またを回転軸として、
が
と対応するので、
ここで、とするとき、
‥‥
一方、重心を通り、ナイフエッジに平行な回転軸についての慣性モーメントをI
Gとすると、従って、
‥‥
(2),(3)式より、
が得られる。
これらの式から、
を導くことができる。
(b)
正逆方向の周期と課題(1)で導かれた・時間が正逆方向ともに同じ場合の
200回の10回毎の時間
往復回数 |
時間@ |
往復回数 |
時間A |
A−@ (100回周期) |
10 |
1 分19秒05 |
110 |
3 分40秒12 |
201.07 秒 |
20 |
1 分39秒19 |
120 |
4 分00秒25 |
201.06 秒 |
30 |
1 分59秒35 |
130 |
4 分20秒44 |
201.09 秒 |
40 |
1 分19秒41 |
140 |
4 分40秒50 |
201.09 秒 |
50 |
1 分39秒54 |
150 |
5 分00秒69 |
201.15 秒 |
60 |
1 分59秒60 |
160 |
5 分20秒79 |
201.19 秒 |
70 |
2 分19秒69 |
170 |
5 分40秒88 |
201.19 秒 |
80 |
2 分39秒88 |
180 |
6 分00秒91 |
201.03 秒 |
90 |
3 分00秒00 |
190 |
6 分21秒03 |
201.03 秒 |
100 |
3 分20秒08 |
200 |
6 分41秒12 |
201.04 秒 |
110 |
3 分40秒12 |
210 |
未測定 |
|
100 回周期平均 |
201.094 秒 |
|||
Tの平均 |
2.01094 |
のときの周期の式は課題
今回の実験で正逆方向の周期が一致した長さ‥‥m=
22cm100回周期平均時間‥‥
3分21秒094100回周期の平均‥‥
2.01094上記の値を、周期の式に代入して計算する。
文献値 旭川市春光台
海抜150m‥‥g=9.8055[m/s2]文献値と実験値との比較を誤差率を用いて考察すると、
となる。
参考として、各地の重力加速度をあげると、
地 名 |
緯度 |
経度 |
高さ [m] |
重力加速度 [m/s2] |
札 幌 |
43o 4.3 ´ |
141o20.7 ´ |
15 |
9.8047757 |
青 森 |
40o39.2 ´ |
140o46.3 ´ |
3.45 |
9.8031106 |
東 京 |
35o38.6 ´ |
139o41.3 ´ |
28 |
9.7976319 |
パ リ |
48o49.8 ´ |
2o13.2 ´ |
65.9 |
9.8092597 |
ローマ |
41o54.2 ´ |
12o30.8 ´ |
45.0 |
9.8034923 |
ワシントン |
38o53.6 ´ |
77o 2.0 ´ |
0.2 |
9.8010429 |
昭和基地(南極) |
69o 0.3 ´ |
39o35.4 ´ |
14 |
9.825256 |
考察
・ケーター振り子で重力加速度を測定すると、なぜより正確な値を得ることができるか。
ケーター振り子は、安定した振り子運動ができるし、原理的に慣性モーメントIを
知ることなしに重力加速度gを得ることができるためだと考える。
・周期の測定誤差の影響を検討する。
周期の真値をT,周期の測定誤差をΔT,とすると、
重力加速度は、
と、表すことができ、上式を展開すると、
となり、は微小であるため
として、
‥‥@
また、理論式より、
‥‥A
@,A式を比較すると、
比較された式によると、ΔTの誤差が生じた場合に重力加速度を計算すると、真の周期の値に比べ、約8倍ぐらいの誤差が生じることがわかる。
感想
今回、始めての実験ということもあって不慣れな点が多く、実験時間が非常にかかってしまった。次回からはもっとてきぱきと実験をしようと思う。
今回の実験で、各地の重力加速度を調べてみて、同じgでも微妙に差があることがわかった。もし、チョモランマとかの高山で重力加速度を測定するとどのような結果が得られるのだろうか。