・基礎電子工学実験T

 

1.実験目的

(1)電気回路の基本的用語,法則等を学ぶ。

(2)各種電子部品の構造および特性を習得する。

(3)直流回路の設計とその各種電気量(抵抗,電圧,電流等)の計測手法を習得する。

 

 

2.実験装置

ブレッドボード,ジャンパー線,ワニ口クリップ,テスタ(アナログ&デジタル),直流電源(単2電池×2個),抵抗(金属被膜抵抗)

 

 

3.実験

(1)抵抗の直並列回路

 電気回路には単一または複数の抵抗が含まれている。大別すると、基本的に抵抗の接続方法には、

(a)直列接続

(b)並列接続   の2種類に分けることが出来る。

 そこで、2種類を組み合わせた抵抗の直並列回路を実際に作り、各箇所における各種電気量を計測し、理論値と比較検討をする。

 

(@)例題

 図1に示すような抵抗の直並列回路の合成抵抗、指定箇所の電流(,I,I,I)および電圧

ab,Vcd,Vef,Vfd)の理論値を求める。また、実際に回路を組み、各種電気量の計測を行う。なお、電源電圧abの理論値は、用いる電源を測定したものを用いる。

=220Ω,R=220Ω,R=330Ω,R=100Ω

図1 抵抗の直並列回路

 

 以下に、理論値と測定値を記す。

表1 抵抗の直並列回路データ

 

[Ω]

[Ω]

[Ω]

[Ω]

ab[V]

理論値

220

220

330

100

3.2

計測値

220.4

222.1

331.7

100.5

3.2

 

 

[Ω]

[mA]

[mA]

[mA]

[mA]

cd[V]

ef[V]

fd[V]

理論値

112.92

14.54

8.28

5.52

13.79

3.20

1.82

1.38

計測値

113.4

13

7.6

5.3

12.5

2.954

1.681

1.272

 この理論値を求める際には、下記の法則を用いた。

 

・考察

 この実験結果は、多少の誤差はあるもののほぼ一致しているといえる。

 抵抗の理論値と計測値の違いは、テスタの測定誤差や見間違いによる誤差,抵抗の材料の違いや温度による誤差によると考察する。

 各種電気量の理論値と計測値の違いは、テスタの測定誤差や見間違いによる誤差,ジャンパー線における抵抗,ブレッドボードにおける抵抗の影響によると考察する。

 

(A)課題

 図2に示すような抵抗の直並列回路の合成抵抗、各箇所の電流(,I,I,I,I)および電圧(V,V,V)の理論値を求める。また、実際に回路を組み、各種電気量の計測を行う。なお、電源電圧の理論値は、用いる電源を測定したものを用いる。

=250Ω,R=100Ω,R=50Ω,R=150Ω,R=150Ω

図2 抵抗の直並列回路

 

 

 以下に、理論値と測定値を記す。

表2 抵抗の直並列回路データ

 

[Ω]

[mA]

[mA]

[mA]

[mA]

[mA]

理論値

332.5

9.01

1.4

2.68

4.93

4.08

計測値

333.9

9.0

1.2

2.1

4.6

3.7

 

 

V[V]

[V]

[V]

理論値

2.996

0.74

0.61

計測値

2.996

1.29

1.15

 この理論値を求めるために、前述の法則を用いる。

 

・考察

 この実験結果は、多少の誤差はあるもののほぼ一致しているといえる。しかし、,Vの値が理論値と計測値とが一致していない。これは、理論値が正しいとするなら、測定時のテスタのレンジの読み間違いや見間違いが考えられる。理論値においては、計算途中での四捨五入による数値の誤差が考えられる。

 抵抗の理論値と計測値は、ほぼ一致しているといえる。

 各種電気量の理論値と計測値の違いは、テスタの測定誤差や見間違いによる誤差,ジャンパー線における抵抗,ブレッドボードにおける抵抗に影響によると考察する。

 

(2)電池(電源など)の内部抵抗

電池等の電源には起電力と直列に内部抵抗が存在する。しかし、その値は使用する不可抵抗に対して比較的小さいので使用上さし支えない場合が多い。この実験では、その内部抵抗を定電圧電源に近いと考えられる電池の内部抵抗を計測する実験から求める。図3の回路において、負荷抵抗の値を変えながら電流および電圧を同時に計測する。表3に計測結果を示す。

図3 電池の内部抵抗測定回路

 

表3 電池の内部抵抗測定値

 

10

10

20

30

50

70

90

100

120

140

160

155

162

80

50

35

27.5

35

27

20

17

2.6

2.6

2.85

2.9

2.95

2.95

2.95

2.95

2.95

2.95

 

・別紙『内部抵抗測定用 電圧と電流の関係』に、縦軸=電圧(V),横軸=電流(A)として実験データをプロットして近似曲線を描く。

 

・最小自乗法により近似直線式を求めると、下記のとおりである。

●近似直線式:

 実験結果による近似直線式:

 

・近似直線式から電池1個あたりの内部抵抗を求める。

 図3より、

内部抵抗を[Ω],電流をI[A],電源の端子電圧V[V],起電力を[V]とすると

        (1)

        (2)

 (2)式をについて解くと、

        (3)

 (3)式を(1)式に代入すると、

        (4)

 近似直線式の傾きは、電源の内部抵抗[Ω]となり、切片は、電源の起電力[V]となる。

 

 電池1個あたりの内部抵抗は、

  ∴

 

・考察

 計測の結果、今回の実験で用いた電池の内部抵抗は約1.3Ωであることがわかった。これは、実験で用いた負荷抵抗に比べて、かなり小さい値となっているために無視できる。

 別紙グラフから、電流の値が増加するに従って、電圧の値が減少していることがわかる。これは、近似直線式からも明らかであるが、電源の内部抵抗の影響であると考える。もし、負荷抵抗を大きな値とすると、電源の端子電圧と起電力が一致することになってしまう。

 

 

4.感想

 今回の実験では、オームの法則の計算を久しぶりにおこなった気がする。電気電子の時間に、中野先生が話していたことを思い出したりもした。

 実際に理論値を計算して、回路素子を測定してみると値が違うことに実験中不安になってしまった。そして、回路の計測の時には、手早く確実にしなければならないことがわかった。アナログ式のテスタより、値がはっきりするデジタル式のテスタを用いるのも正確な実験をする方法であると思った。