・基礎電子工学実験V(交流回路)

 

1.実験目的

(1)交流回路の基本的用語,法則等を学ぶ。

(2)交流回路の設計とその各種電気量(電圧,電流,インピーダンス,位相など)の算出と計測手法を習得する。

 

 

2.実験装置

ブレッドボード,ジャンパー線,ワニ口クリップ,テスタ(アナログ&デジタル),交流電源,2現象オシロスコープ,抵抗(金属被膜抵抗),コンデンサ

 

 

3.実験

・コンデンサ

 導体板を2枚ある間隔をおいて平行に並べておくと、それらの導体板には電気(電荷)が蓄えられる。このような素子をコンデンサ(蓄電器,キャパシタ(capacitor))という。そして、この素子が電荷を蓄える能力の大きさを静電容量(electric capacity)といい、量記号,単位[F]で表す。

 電荷Q[C],電圧V[V],静電容量C[F]の間には次の関係式が成り立っている。

          (1)

 コンデンサに直流電源(直流電圧)を加えると、回路内には瞬間的に電流が流れるが、その後電流は流れなくなってしまう。このときのコンデンサの両端電圧は、加えた直流電圧と等しい電圧を示す。電源をはずすと、コンデンサに蓄えられた電荷が流れ、放電される。

 コンデンサに交流電源(交流電圧)を加えると、電流が流れる。しかしこの電流はコンデンサによって制限を受けている、すなわちコンデンサは交流電流を妨げる性質を持っている。この抵抗に似た性質をコンデンサの容量リアクタンスといい、量記号,単位[Ω]で表す。

 容量リアクタンス[Ω],静電容量C[F],交流電圧の周波数f[Hz]の間には次の関係式が成り立つ。

          (2)

 また、容量リアクタンスは、電圧V[V],電流I[A](実効値)との間にオームの法則が成り立つことから次の関係式が成り立つ。

          (3)

 コンデンサの回路に交流電圧を加えると電流の位相は電圧の位相より[rad]だけ進む性質を持っている。

 

 

・コンデンサのみの交流回路実験

 以下の手順でコンデンサのみの交流回路実験を行う。

  1. 図1に示す回路を組む。なお、C=0.033, 0.015, 0.0068[μF], R=150[Ω]とする。
  2. 理論値を求め、表1を完成させる。

図1 実験回路

 

表2 理論値および測定値

実験条件

理論値

実験値

C[μF]

f[kHz]

[V]

[V]

[mA]

[kΩ]

[V]

[mA]

[kΩ]

0.033

0.8

0.13

0.83

6.03

0.13

0.87

5.74

0.033

1.6

0.25

1.66

3.01

0.27

1.77

2.82

0.033

2.4

0.37

2.48

2.01

0.39

2.60

1.92

0.033

3.2

0.50

3.31

1.51

0.52

3.47

1.44

0.033

3.2

0.30

1.99

1.51

0.32

2.13

1.41

0.033

3.2

0.10

0.66

1.51

0.11

0.73

1.37

0.015

3.2

0.23

1.51

3.32

0.21

1.40

3.57

0.0068

3.2

0.10

0.68

7.31

0.10

0.67

7.46

 

  1. ファンクションジェネレータを所定の周波数fに設定し、コンデンサの電圧Vが所定の電圧になるように調整する。このとき、測定誤差を小さくするため、電圧の測定器の内部抵抗が容量リアクタンスXよりも十分大きくする必要がある。したがって、測定レンジは大きくする。
  2. 抵抗Rの両端電圧Vを測定する。
  3. 電圧Vと抵抗Rより電流I(=I=Iを算出する。
  4. オームの法則より容量リアクタンスXを算出する。
  5. (3)〜(6)を繰り返し、表1を完成させる。
  6. 以下に示す関係の理論値および測定値のグラフを描く。(別紙参照)

    (@)C=0.033[μF]におけるX(縦軸)とf(横軸)の関係

    (A)f=3.2[kHz]におけるX(縦軸)とC(横軸)の関係

(9)実験の考察

 (@)において、Xとfの関係は、周波数の増加するにともない、容量リアクタンスXは減少することがグラフより読み取ることができる。そして、理論値の関係は(2)式からも、このことがいえるように、反比例関係であるといえる。

 また、グラフより実験値と理論値の累乗の誤差の傾きがほぼ同じように見ることが出来る。これは、実験結果として良い結果であると考える。そして、誤差が生じた原因として、測定値の読み違いや、回路素子や抵抗などの実際の値が規格の値との微妙な誤差によるものと考える。

 (A)において、XとCの関係についても上記と同じことがいえると考えられる。

 

・RC直列回路

 RC直列回路(図2)では、Cでの電圧Vと電流Iには位相差があるため、抵抗のみで構成された直列回路のような演算をすることができない。

 したがって、ベクトルを用いた式や図を用いて次のように解析する。

図2 RC直列回路

(a)理論解析

 図2に示すRC直列回路において、交流電流I=I∠0[A]が流れているとき抵抗R(AB間)の電圧は次式で表される.

          (4)

 電圧[V]は電流Iと同位相であるからベクトル式で表すと

          (5)

 コンデンサC(BD間)の電圧[V]は次式で表される。

          (6)

 電圧Vは電流Iより位相がπ/2[rad]だけ遅れることから、ベクトルの式は次式で表される。

          (7)

 したがって、回路(AD間)の電圧Vは以下のベクトルの式で求められる。

          (8)

 (8)式より電圧V[V]の大きさは次式で表される。

          (9)

 ここで、Z[Ω]はRC直列回路におけるインピーダンスといい次式で表される。

          (10)

 つまり、 インピーダンスは直流回路における抵抗と考えられ、交流電源の周波数により変化する。

 位相角φは次式となる。

          (11)

 

(b)RC直列回路実験

 RC直列回路におけるインピーダンスZ[Ω],位相角φ[rad]等の理論値を求め、実験により検証するために以下の手順で実験を行う。

図3 RC直列回路

  1. 図3に示すRC直列回路を組む。ここで、C=0.033, 0.1[μF], R=1[kΩ]とする。
  2. 理論値を求め表2に記入する。
  3. ファンクションジェネレータの周波数を設定値に合わせる。
  4. 抵抗Rの両端に生じる電圧Vを設定値に合わせるため,ファンクションジェネレータの出力を調整する。
  5. コンデンサの端子間電圧Vを測定する。
  6. 回路全体(AE間)の電圧Vを測定する。
  7. 回路を流れる電流Iを算出する。
  8. 容量リアクタンスXを算出する。
  9. インピーダンスZを算出する。
  10. 位相角φ([rad]値&[deg]値)を求める。
  11. 全ての設定に対し(4)〜(10)を行い表2を完成させる。
  12. RC直列回路における波形の観察を行い、理論値および測定値の検証を行う。
  13. 実験の考察

 RC直列回路の波形観察の結果、電流がコンデンサを通過すると、電流と電圧に位相差が生じることが確認できた。そして、その位相差は、理論値の計算結果をもとに考えると、No.1の実験では約π/4[rad]であると思われ、実際に波形観察や実測値による計算をしてみると、ほぼ確かであることが確認できた。

 また、理論値と測定値を比較してみると、ほぼ一致しているといえる。これも、誤差が生じた原因として、測定値の読み違いや、回路素子や抵抗などの実際の値が規格の値との微妙な誤差によるものと考える。

 

表2 RC直列回路の理論値および測定値

 

電気量

No.1

No.2

No.3

No.4

設定値

R[kΩ]

C[μF]

0.033

0.033

0.033

0.10

f[kHz]

4.82

2.41

2.78

3.84

[V]

1.5

1.5

1.5

1.5

理論値

I[mA]

1.5

1.5

1.5

1.5

[V]

1.5

3.0

2.6

0.6

V[V]

2.1

3.4

3.0

1.6

[kΩ]

1.0

2.0

1.7

0.4

Z[kΩ]

1.4

2.2

2.0

1.1

φ[rad]

[deg]

0.79

45.0

1.11

63.4

1.05

60.0

0.38

21.8

実験値

I[mA]

1.5

1.5

1.5

1.5

[V]

1.5

3.0

2.6

0.66

V[V]

2.4

3.4

3.0

1.6

[kΩ]

1.0

2.0

1.7

0.4

Z[kΩ]

1.4

2.2

2.0

1.1

φ[rad]

[deg]

0.79

45.0

1.11

63.4

1.05

60.0

0.41

23.7

 

・課題(実験書 P15,(1)(2)&偶数問題)

[V]の電圧をR=5[kΩ]の抵抗に加えた。回路に流れる瞬時値の式を求める。また、実効値および最大値についてオームの式を求める。

正弦波交流電圧e[V]で与えられる。

上式と、抵抗に加える電圧eと比較してみると、E=1[V]である。

オームの法則より,電流 i[A]は、[A]となる。

これを正弦波交流の電流の定義式に代入すると、

[A]

したがって、瞬時値の式は次のようになる。

[V]

[A]

 

電流,電圧の最大値は、それぞれ次式で表される。

[A]

[V]

これをオームの法則に代入すると、

[V] よって,オームの法則が求められる。

  1. 2つの抵抗=4[Ω]=6[Ω]を直列に接続した回路に、交流電圧V=10[V]を加えたとき電流I[A]を求め、電流と電圧のベクトル図を描く。

ベクトル図は、図4のようになる。

4 ベクトル図

 

  1. 静電容量C=20[μF]のコンデンサは、周波数f=30[Hz]の交流に対していくらの容量リアクタンスXがあるか。

[Ω]

 

  1. 0.1[μF]の静電容量を持つコンデンサに、周波数f=1「kHz」,電圧V=10[V]の交流を加えたとき、流れる電流iを瞬時値の式で求める。ただし、位相は電圧vを基準とする。

[Ω]

[mA]

rad/s

 

  1. 抵抗R=6[Ω],容量リアクタンス=8[Ω]の直列回路に2[A]の電流が流れているとき、ベクトル図を描き、電圧の大きさVおよび位相φを求める。

    別紙参照

 

  1. 抵抗R=3[kΩ],静電容量C=0.01[μF]の直列回路に、電流
[A]が流れているとき、回路に生じる電圧vを求める。

         rad/s

         [A]

         [V]

         

  1. 抵抗R=2[kΩ],静電容量C=0.01[μF]の直列回路に、電圧
[V]を加え、周波数をf=0.5, 1.0, 2.0, 5.0, 20.0[kHz]にしたときのV,Vを求める。また、これらのベクトル図を求める。

 

・f=0.5[kHz]

     

     

     より、

     

 

       

       

 

 以下も同様に計算を行う。

・f=1.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

・f=2.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

 

 

・f=5.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

・f=20.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

 

4.感想

 今回の実験を終えて、始めてしっかりと理解できたように思った。電気電子(略して電々)の時間で、何となくわかっていたものが、やっと見えたような気がする。

 今回の実験の、実験値と理論値がほぼ等しくなっている。これは、今までの僕(僕たち)の実験の中でも珍しいのではないだろうか。

 

 

[V]の電圧をR=5[kΩ]の抵抗に加えた。回路に流れる瞬時値の式を求める。また、実効値および最大値についてオームの式を求める。

正弦波交流電圧e[V]で与えられる。

上式と、抵抗に加える電圧eと比較してみると、E=1[V]である。

オームの法則より,電流 i[A]は、[A]となる。

これを正弦波交流の電流の定義式に代入すると、

[A]

したがって、瞬時値の式は次のようになる。

[V]

[A]

 

電流,電圧の最大値は、それぞれ次式で表される。

[A]     (a)

[V]     (b)

 

 交流回路には、抵抗R[Ω]に交流電圧e[V]を加えると電流i[A]が流れるとき、直流回路と同様にオームの法則が成り立つ。

          [V]   (1)

  ここで、正弦波交流電圧e(E=実効値)を、

        (2)

  とすると、電流iも正弦波となり次式で表される。(I=実効値)

        (3)

 抵抗に正弦波交流電圧を加えたとき流れる電流は、同じ正弦波交流であり、その位相も同じであることから、(1)式に(2),(3)式に代入すると、

             (4)

となり、オームの法則と一致する。

 

これに、(a)(b)式を代入すると、

[V] よって,最大値に関するオームの法則が求められる。

 

  1. 抵抗R=6[Ω],容量リアクタンス=8[Ω]の直列回路に2[A]の電流が流れているとき、ベクトル図を描き、電圧の大きさVおよび位相φを求める。

    別紙参照

  1. 抵抗R=3[kΩ],静電容量C=0.01[μF]の直列回路に、電流
[A]が流れているとき、回路に生じる電圧vを求める。

         rad/s

         [A]

         [Ω]

         [Ω]

         [V]

 

  1. 抵抗R=2[kΩ],静電容量C=0.01[μF]の直列回路に、電圧
[V]を加え、周波数をf=0.5, 1.0, 2.0, 5.0, 20.0[kHz]にしたときのV,Vを求める。また、これらのベクトル図を求める。

 

・f=0.5[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

 

 以下も同様に計算を行う。

・f=1.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

・f=2.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

・f=5.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

・f=20.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

  1. 抵抗R=3[kΩ],静電容量C=0.01[μF]の直列回路に、電流
[A]が流れているとき、回路に生じる電圧vを求める。

         rad/s

         [A]

         [Ω]

         [Ω]

         

         [V]

 

  1. 抵抗R=2[kΩ],静電容量C=0.01[μF]の直列回路に、電圧
[V]を加え、周波数をf=0.5, 1.0, 2.0, 5.0, 20.0[kHz]にしたときのV,Vを求める。また、これらのベクトル図を求める。

 

・f=0.5[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

 以下も同様に計算を行う。

・f=1.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

・f=2.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

・f=5.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]

 

・f=20.0[kHz]

     

     

     より、

     

 

       [V]

       [V]