ストレイン(ひずみ)ゲージによる力の測定
1.実験目的
ストレインゲージを用いた力の測定器を試作し、工業計測における変換器として使用頻度の高いストレインゲージの使用法を習得する。
2.測定原理
図
1に示すように、長さL[m],断面積A[u](直径d[m])の導線の電気抵抗R[Ω]は次式で表される。 (1)
ここで、ρは抵抗率と呼ばれ、単位は[Ωm]である。
導線の中心軸方向に外力を加えると図
1のように変形する。このときの長さ,断面積,直径および抵抗率の変化量をそれぞれ (2)
したがって、電気抵抗とその変化量の比は次式で表される。
(3)
導線の断面積
(4)
また、一般に抵抗率の変化は極めて小さいことから≒
≒
(5)
ここで、Kは感度係数(
gage factor)と呼ばれ、導体の材質によって決まる定数である。以上のことから、抵抗の変化率はひずみに比例することがわかる。この性質を応用すれば、構造物のひずみ測定あるいはひずみを生じさせる力,圧力,トルク等を導体の抵抗変化に変換して測定することができる。したがって、ストレインゲージは様々な分野で広く使用されている。
3.実験
(
1)実験装置ストレインゲージ,テスタ,ブレッドボード,ジャンパー線,X−Yプロッター,はんだごて,はんだ,こて台,電流および抵抗調整器,固定抵抗,スケール,ノギス,瞬間接着剤,
カッター,紙ヤスリ,
(2)力の測定器の組立(片持ちはりの荷重計)
(a)ストレインゲージの仕様
・メーカー:
KYOWA・ゲージ長さ(
gage length):(規格値) 10[mm] (測定値) 10.2[mm]・感度係数(
gage factor): 2.12±2[Ω]・抵抗値 :(規格値)
120.2±2[Ω] (測定値) 120.7[Ω](b)力測定器の製作
力測定器の形状寸法を測定する。
ストレインゲージの取り付けは以下の手順で行う。
@)ゲージを取り付ける位置を確認した後、古いゲージをカッターで取り除く。
A)ゲージを取り付ける位置を紙ヤスリで磨いた後、4塩化炭素で拭き取る。
(換気に注意する)
B)ゲージをセロテープに張り付け、ゲージ取り付け位置に置く。このときゲージ
の向きは中心軸と一致させる。
C)ゲージの端子側とは逆の方からゲージを壊さないようにセロテープを浮かす。
D)瞬間接着剤を塗り、気泡が残らないようにゲージを取り付ける。
E)”ドライヤーで暖め
&ゲージ押さえ”をゲージが完全に張り付くまで繰り返す。(7〜
10分程度)(3)ブリッジ回路の組立
ストレインゲージの抵抗の変化はホイーストンブリッジ回路により電圧の変化として検出する。
図
2は、本実験で用いるブリッジ回路の回路図である。本実験では以下の手順でブリッジ回路を組む。
@)R1にゲージを接続するとし、
e-f間の電圧が0となるよう抵抗R2,R3,R4を決定する。R2
:150[Ω],R3:38[Ω],R4:53[Ω],R´3:66[Ω]A)(2)で作成した力測定器を
R1に接続する。(注:ゲージの線を切らないように注意する)B)可変抵抗
Rx3(50[Ω])により、ブリッジ回路に流す電流は50[mA]程度以下とする。C)電圧
E0およびブリッジ回路のa-c間電圧Evをテスタで測定する。E0=6.02[V]
,Ev=4.16[V]D)
e-f間電圧が0[V]になるように、可変抵抗Rx1(微調整用,max=5[Ω]),Rx2(粗調整用,max=50[Ω])を用いて調整する。なお、Rx1(max=10回転),Rx2(max=1回転)は、始めは中間にセットし、電圧の測定はテスタを用いる。E)
X-Yプロッターに接続し、力測定器に荷重が加わったときの指針のふれる方向を(プロッターの中央部で)確認する。このとき、プロッターの出力が最適になるようにレンジを調整する。:10[mV]F)指針の位置を右または左に移動する。
G)再度
e-f間の電圧が0[V]になっていることを確認する。(4)測定器の特性測定
製作した力測定器にかかる荷重と出力電圧の関係を得るため以下の手順で特性を求める。
@)力測定器を万力に固定する。
A)荷重を加えるアームに補助棒&荷重乗せ台を取り付ける。
B)荷重乗せ台の固定端からの位置を測定する。:
C)荷重を加え、その時の出力電圧を記録する。
D)荷重を減らし、その時の出力電圧を記録する。
E)荷重と記録紙から読み取った出力電圧を表
1に整理する。 F)出力電圧と加えた荷重がゲージ部に生じさせたモーメント力
表
1 荷重と出力電圧の関係
おもり |
棒&台 |
No.1 |
No.2 |
No.3 |
No.4 |
No.5 |
No.6 |
No.7 |
No.8 |
荷重 [kgf] |
0.685 |
2.21 |
2.02 |
2.02 |
2.02 |
2.21 |
2.5 |
1.84 |
1.775 |
積算荷重 [kgf] |
0.685 |
2.895 |
4.915 |
6.935 |
8.955 |
11.165 |
13.665 |
15.505 |
17.28 |
出力電圧 (up)[mv] |
0.1 |
0.42 |
0.72 |
1.04 |
1.32 |
1.64 |
2.02 |
2.28 |
2.56 |
出力電圧 (down)[mv] |
0.04 |
0.46 |
0.76 |
1.08 |
1.36 |
1.70 |
2.06 |
2.32 |
2.56 |
(5)未知力の測定
未知力の測定として、各自の握力測定を行う。
力測定器を万力からはずし、接続している線を切断させないように計測を行う。片持ち梁を握り、その時の電圧の変化を
X-Yプロッターに記録し、(4)で得られた特性曲線より握力[kgf]を算出する。なお、握力は片持ち梁の自由端点のみで作用するものとする。 として、計算する。
(6)未知力の理論解析
未知力の理論解析は梁の曲げ理論より求める。
図3に示すように、長さ
L2[m]の片持ち梁先端B点に集中荷重W2[N]が作用すると、先端からx[m]の位置C点の表面に生じる曲げ応力σc[Pa]は次式で表される。 (6)
ここで、
McはC点に生じているモーメント[Nm],Zは断面係数である。図3より
C点に生じているモーメントは次式で表される。 (7)
また、梁は直径
d[m]の円柱とすると、断面係数は次式となる。 (8)よって、
よって、(7)
,(8)式を(6)式に代入すると次式が得られる。 (9)
ゲージ(中心)が固定端から
L1[m]の位置にあるとき、ゲージに生じるσgは (
したがって、フックの法則よりゲージ部のひずみε
gは次式となる。 (
一方、図
2に示すブリッジ回路において、回路にかかる電圧Ev[V]とするとe-f間の電圧の変化量 (
ここで、である。さらに、
(
となることから、(
11),(12)および(13)式を用いて整理すると、未知力W2が算出することができる。
4.結果と考察
(1).(
11),(12),(13)式よりW2の式を求める。
(2).未知力の理論値と実測値との考察。
未知力の実測値は、ほぼ正確な握力であると考えられる。実際に自分の握力がどれぐらいであるかとわかっていないのだが‥‥
理論値は『負』の値となっている。これは、電圧の測定時のテスターの向きによってこの様な結果になっているのではないだろうか。
(3).試作した測定器の評価。
今回の実験で求められた特性曲線は、ほぼ同じ曲線のようにみえる。そして、特性曲線から求められる近似直線も、切片こそ違うが傾きもほぼ等しいとみることができるのではないだろうか。以上のことから、今回の測定器は良い性能を持っていると考えられる。
(4).ストレインゲージの種類および使用例(測定方法,測定器)について。
大別 |
種類 |
用途・その他 |
箔ゲージ |
エポキシゲーシ |
万能,一般用 |
ポリイミドゲージ |
耐熱,耐久性良 |
|
線ゲージ |
ペーパーゲージ |
石膏材による模型実験など剛性の影響を小さくしたい場合 |
ポリエステルゲージ |
現場用 |
|
大ひずみゲージ |
断線寸前まで直進性あり |
|
高温ゲージ |
ベースにはアスベスト,グラスウールを使用 |
|
溶接用ゲージ |
高温における応力測定 |
|
抗磁性極低温用ゲージ |
磁界中,極低温における応力測定 |
|
埋込み型ゲージ |
モルタル,コンクリートの内部に埋込んで測定する |
|
半導体 |
一般用 |
|
ゲージ |
温度補償ゲージ |
温度変化のある場合 |
高出力ゲージ |
高出力変換器, B管オシロに直接接続できる。 |
|
超直線型ゲージ |
高精度の変換器,測定 |
応用例
○ストレインゲージ式はかり
・電気抵抗線式ひずみゲージを利用した荷重変換器。
ex.台ばかり,トラック,車両,ホッパ,クレーン,コンベヤ,タンクなどのあらゆる分野での質量測定
5.感想
今回の実験で授業では習ったことがあったひずみゲージを実際に実験した。でも、以前に先生が話した巨大な物のひずみ測定ではなく、単純な片持ち梁のひずみ測定であった。
でも、単純な梁なのだから、計算は簡単にいくだろうという考えは甘かった。この実験レポートをまとめるのに計算のやり直しをするの数知れず。
W2の理論値を求めるのに特に計算時間を費やした。何とか計算結果がでたので少し安心をしている。
6.参考文献
書 名 |
編著者名 |
発行社名 |
計量器概論 計測機器のえらび方使い方 |
通商産業省機械情報局計量課監修 自動校正システム研究委員会編 |
社団法人 計量管理協会 (発売元 コロナ社) |
実用計測技術入門 |
飯島 一昭,石野 欣一,長谷川 集三 |
日刊工業新聞社 |