顕微鏡による組織観察

 

 実 験 目 的

(1)金属顕微鏡の構造と性能を理解し、取扱い方ならびに組織の検鏡を習得する。

(2)正しい顕微鏡資料の作り方を習得する。

(3)金属顕微鏡組織を観察することにより、鋳造,鍛造,圧延および熱処理の過程と機械的性質

   との関連を理解し、材質と欠陥の良否を判断して、品質管理並び改善、研究などの技術を習

   得する。

 

 

 実 験 手 順

・顕微鏡試料の作り方

 金属組織は、鋳造,鍛造,圧延,表面処理などによって変化の大きいところと、小さいところがあるので、それぞれの部分より検鏡目的を考えて採取する。試料の大きさは20mm丸角くらいが作業しやすいので、その大きさに切断する。

 

・試料の研磨

 試料面は全くの傷がなく、くもりのない鏡面化された表面でなければならない。油などは検鏡のため腐食をするとき腐食を妨げてムラができるから、十分に注意して拭き取らなくてはならない。平滑な厚ガラスまたは定盤上で研磨布,研磨紙の粗いものから細かいものに順に追って磨いていく。主として酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素SiCの微粉末を糊付したもので、粒度により分類されている。今回実験に使用した研磨紙をJIS粒度番号で表すと、240,280,320,400,500,600である。上記のとおり研磨布,研磨紙を用意すれば粗研磨は十分にできる。研磨の方法は、試料の検鏡面を下にして研磨布、研磨紙のうえを一直線に往復して、時々180゜回転して前のスジ傷がとれるまで磨き、その研磨布,研磨紙によるもののみとなれば90゜回転してさらに粒度の細かいものにと移る。中間の研磨布,研磨紙をはぶくと、かえって長時間を要する。粒度が変わるたびに試料面に付着する研磨剤の粉末は布でよく拭い、水洗いをして研磨する。これを行わないと粗い研磨剤の粉末で思わぬスジ傷を作り、失敗することがある。

 

・試料のバフ研磨

 もっとも細かい研磨紙で磨かれた後は、手によるかまたは回転式研磨機で必要な倍率に拡大して検鏡する場合に、少しのスジ傷も認めないくらいの試料面にしなければならない。バフは厚手の良質のラシャ,フェルト,絹などがある。このバフを張りつけた回転盤に研磨剤の微粉末を水でまぜて、その液を滴下しながら研磨する。使用する研磨剤はである。この際に誤って試料を飛ばして、けがや紛失などないように心掛ける必要がある。

 

・試料の腐食

 金属顕微鏡によって金属の組織が識別出来る理由は、上方よりくる光線を正反射する面は白色に、傾斜して反射すればその角度に応じて灰色より、黒色にと検鏡出来るからである。

 腐食液により各固相の腐食液は異なり、結晶粒界は容易に腐食されるので、これらの結晶を明暗の差により識別でき、これを粒界腐食という。次に過度な腐食を行うと18-18ステンレス鋼,炭素鋼のように白色の多い金属でありながら灰色となり、薄汚いものとなり結晶内に劈開面が見えてくる場合がある。これを粒内腐食という。

 

・試料の乾燥

 腐食の完了した試料は完全に水洗いして乾燥する。そうしないと試料面に錆の発生または汚染が出来て薄汚いものとなる。

 

 結 果

顕微鏡組織のスケッチ

 今回の実験では、FRP(繊維強化プラスチック)を観察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感 想・考 察

 今回の実験で、始めて自分の目で金属の表面を観察した。虫の羽や、メダカの尾とか花粉などを見たことはあったが、金属の表面を見て、色々な方向にのびる結晶がきれいに見えた。

 今回はFRPを観察したが、ボツボツの円や、だ円、長丸などばかり見えた。これは、ガラス繊維の断面が見えた物だった。ガラス繊維とガラス繊維の間はプラスチックだと思うが、はっきりした結晶などが見られなかった。プラスチックも金属のように、結晶がはっきりと見えないということは分子の結合なのだなと思った。

 

 

 

熱分析による変態点の測定

 

 実 験 目 的

(1)Al-Si合金の冷却曲線を求め、変態点を測定する。状態図と変態点からSi濃度を求める。

   凝固組織(デンライトを含む)と冷却曲線の関係を考える。

 

 

 概 要

(1)変態点の測定方法

 気体から液体、液体から個体という様に状態が変わることを変態といい、状態の起こる温度を変態点という。変態には、個体のまま、ある温度で原子配列が変わり、性質が変化する同素変態と、原子配列の変化なしに磁性その他の性質が変わる磁気変態などがある。変態点の測定には、一般的に加熱曲線よりも自然放冷された冷却曲線が用いられ、そのような冷却曲線を求めること及びその検討、解析を熱分析という。

 熱分析において高温度における温度測定には、ふつう熱電対が用いられる。熱電対による測定は図1のようになっており、使用する温度によってさまざまな熱電対がある。表1・1参照。これに対して、固体における変態のようにのように熱変化の小さい変態の測定には、図2のような示差熱分析法あるいは、図3のような熱膨張を利用した測定方法が用いられる。

 

(2)熱分析(冷却曲線)と状態図

 冷却曲線と状態図の関係を図4,図5に示す。図4は全率固溶体の場合、図5は2つの固溶体からなる共晶を作る場合である。

 

(3)冷却曲線の種類

 一般的に言って冷却曲線には図6のような種類がある。(a)は冷却速度が速いと変態点に達していても凝固の起こらない過冷の場合である。(b)は過冷の無い純金属の場合、(d)は固体になっても結晶構造にならない非晶質の固体の場合である。

 

 実 験 方 法

 あらかじめ一定濃度に配合されたAl-Si合金を炉の中で溶解する。実験装置は図8に示す。溶融状態のある一定温度から炉の電源を止めて自然放冷を行う。5秒毎に温度を測定する。温度と時間の関係をグラフに書き、変態点を求める。(冷却曲線と凝固組織の関係を他の実験データをもとに説明する。)下記の状態図をもとにして求めた変態点より、Si濃度を求める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実 験 の 要 点

 単に変態点を求めるだけでなく、実験をとおして、冷却曲線を凝固組織の関係(デンドライトを含む)Si濃度と凝固組織の関係をよく理解する。

 

 

 実 験 結 果

(a)Al-Si合金のSi含有量の推定

液相線温度と固相線温度を求め、状態図より求める。

 グラフより、Al:97.9%,si:2.1%と思われる。(584.9℃)

 もうひとつの液相線と固相線より、Al:89.1%,si:10.9%とも考えることが出来る。(653.5℃)

 

(b)Woods metal,Lipowitz's alloyの方向性凝固について

  (1).凝固点を求める。(冷却方法、合金による)

温 度

合金の種類

冷却方法

冷却装置の大きさ

@68.3℃

Lipowitz's alloy

ダンボール

 

A64.4℃

Woods metal

ステンレスブロック

64×64×99(mm)

B45.2℃

Lipowitz's alloy

アルミブロック

100×100×2(mm)×10(枚)

 

  (2).過冷量を求める。

     

 

  (3).冷却方法による奪熱速度の比を求める。

 

  (4).凝固潜熱L[cal/g]を求める。

   より、と変形することが出来る。

 

 

 

 

  (5).合金の比熱Cp(cal/gk)を求める。

 

Lipowitz's alloy

Pb%

Sn%

Bi%

Cd%

In%

68℃

27

13

50

10

 

47℃

22

11

41

8

18

Woods metal,

         

65℃

25

12.5

50

12.5

 

 

 

 

 

 

(c)演習

 (a)50℃の水120gと80℃の水180gを混ぜると何度になるか。

 

 (b)比熱2.0の物質で60℃の物180gと80℃の物220g混ぜると何度になるか。

 

 (c)0℃の氷100gと90℃の水100gを混ぜると何℃になるか。

   ただし、氷の融解潜熱は80cal/gとする。

 

 

 感 想・考 察

 今回は実験を2ついっぺんに行い、実験が終わってから大変だなーと思った。

 熱分析の実験は、温度の記録を待っているだけなので、便利な機械にまかせて実験は楽であった。でも実験結果の算出が非常に大変で困ってしまった。そのために、班の人たちと一緒に計算をした。

 それでも、何とか計算をした。提出期限を少し延長してもらえたおかげで何とか終わることが出来た。今回の実験では、材料学や熱力学などのいろいろな勉強したことを生かす実験の様に思った。

 2つの実験を、1つの実験レポートにまとめようとしてみたが、まとめきれないので別々にまとめることにした。