1月14日(水) 「会計基準の優劣は株式市場の盛衰を決める?」
3日前(11日)の日経ネットニュースによれば、ニューヨーク証券取引所で外国企業の上場ブームが続いていおり、昨年は過去最高の61社が新規上場し、年末現在では345社と、5年前に比べ約3倍に急増したそうだ。米市場の活況に加えて、外国企業が株主重視の姿勢など「米国型経営」志向を強めていることも上場ブームにつながった、としている。昨年のニューヨーク証券取引所への新規上場は合計145銘柄。このうち外国企業は42%を占め、上場企業全体でも9社に1社が外国銘柄という計算になるとのこと。
東京株式市場の最近の状況はよく知らないが、2〜3年前には外国企業の上場廃止が後を絶たないとのことだったように記憶している。米国経済の活況と日本経済の低迷というマクロ経済要因をも反映しているだろうが、前述の1月11日(日)の雑感と併せて考えると、シグナリング理論(Signaling Theory)も結構納得的な説明となるように思う。
非常におおざっぱに言えば、シグナリング理論は各企業は希少な資本を求めて競争していおり、少しでも競争力ある条件(低資本コスト=低リスクプレミアム)で資本を調達しようとする、と見る。それ故に企業には(投資家が認識する)リスクプレミアムを少しでも小さくする為に、自主的に情報開示しようとするインセンティブが働く。だから情報開示要求のレベルが高い米国会計基準も進んで受け入れる。換言すれば、米国会計基準に則りNY株式市場に上場することは投資家の信任を得ることであり、低コストの資本調達を可能にするわけだ。一方、東京株式市場に上場しても、(前述の原価法への改悪の例のように)適用が恣意的に変更されるような日本の会計基準に則った情報開示ではクオリティの劣る会計情報しか生み出せないので全く信頼性に欠けることになり、投資家はリスクプレミアムの上乗せを要求するはずだ。従って、有利な条件での希少資本の獲得を目指す企業にしてみれば、東京市場に上場しても投資家の信任を得られないのだから上場のメリットは限られることになる。