1 秒 = 0.1 時間
5 分 59 秒 = 0.0 時間
ある日、「まったく!今日のFlightの前に乗った人、0.1少なくLogに書いているんですよ。」と、飛行訓練中の友人が不満げに私に言いました。飛行訓練などで飛行機の使用料金を計算するときは、通常Hobbs Meterと呼ばれる計器盤に付けられた時計を使います。飛行前のHobbsの数値と飛行後の数値とを比べて、0.1時間単位で料金を計算する訳です。例えば、飛行前のHobbsが 304.5 で飛行後が 305.6、一時間$70の飛行機に乗った場合、$70 / 時間 X 1.1時間となり、料金は$77となります。数字が次の数字に変わり始めていたときは、繰り上げて次の数字を書くことが常識となっています。仮に前の人が0.1時間少なく304.4と記録してしまった場合、後の人が空白の0.1時間を支払うことにもなるわけで、この友人が怒ることもわかります。そういう時はFront Deskに苦情を言えばいいのですが、後味のいいものでもありません。
時計がTachometer内部に取り付けられたもの。
通常のHobbs MeterはEngineを始動した直後に作動し始め、Engineを停止した時に同時に停止する仕組みになっています。Oil Pump出口の配管にPressure Switchが付いていて、Oil Pressureがある一定以上ある限り電流がHobbs Meterに流れて作動するわけです。Hobbs MeterはEngineが低回転であっても回り続けるので、便宜上この数値を飛行機の使用時間、そしてPilotの飛行時間としています。地上にいても飛行時間とは妙な話でもありますが…。飛行機には時計がもう一つあって、これはTachometer (Engine回転計) 内部に取り付けられているので、Tach Timeなどと呼ばれます。1000rpm程度の低回転では動かない、または非常にゆっくりと動き、75%以上の出力でEngineを運転したときに正確な時間を刻むものです。Engineの実際に負荷が掛かった時間を知らせるため、50時間や100時間点検などの整備の目安に使われます。Hobbs MeterとTach Timeとの時間を比べると、いつもHobbs Meterが多く時間を刻んでいるのはこの理由からです。と言っても、飛行機によってはTach Timeだけだったり、Hobbs Meterだけだったりします。Cessna 152/172や、Piper Archerなどは最初から飛行訓練を目的に作られているので、製造時からHobbs Meterがほぼ例外なく取り付けられていて、TachometerにTach Timeが内蔵されたものが取り付けされています。これが通常の訓練を目的としないPiper Malibu Mirage、Cessna 400系、Beechcraft Bonanzaになると、Hobbs MeterかTach Timeだけの場合がほとんどです。整備にHobbs Meterの時間を使うと、Tach Timeよりも時計が早く回る分、費用がかさむのだろうなと思ってしまいますが。
先にHobbs MeterはOil Pressureを感知してと書きましたが、Hobbs Meterの接続方法にはいろいろあるようです。Figure.1はPressure Switchを持たず、Main Basに取り付けられたものです。この場合、Engineが動いている止まっているにかかわらず、Master Switch (主電源) をOnにしているだけで作動してしまいます。耳をすますと、 カチ…カチ…とHobbs Meterが動いている音が聞こえるはずです。訓練の前にRadioを聞いたり、GPSの使い方を練習するときにも作動している訳で、Onにしている時間には気をつけてください。Figure.2は同様にMain BasからPowerを取っていますが、Pressure Switchを介したものです。Master SwitchをOnにしただけでは作動しないので、Figure.1のものよりも良心的です。でも両方に言えるのは、飛行中でもMaster SwitchをOffにしてしまうと (飛行機のEngineは安全性のため、Batteryからの電源に極力頼らないで動き続ける仕組みになっています)、PowerがなくなってHobbs Meterが動かなくなることです。決して、「これで訓練費用が節約できる!」とは思わないでください。Tachometerはその間も作動しているので、Tach Timeとの時間差を見れば、飛行中に何があったのかは分かってしまいますし…。
さて、Figure.3は主流の方式です。Hobbs Meterが飛行機の製造時に付けられた場合は、このような方式になっています。Master Switchの手前からHobbs Meterに接続されているので、Master SwitchのOn/Offにかかわらず作動する準備が出来ています。仮に飛行中にMaster Switchを切っても、Engineが回り続ける限り、Oil Pressureがある限り時を刻むことになります。前のFigure.1とFigure.2の方式よりもさらに実用的な方法です。
Piper Saratoba II TCより。
Tachometerに時計は付いていません。
実は私も飛行機に乗っていて時々不思議なことがあります。飛行を終えてEngineを停止。しかしHobbs Meterからは引き続きカチ…カチ…と音が聞こえるのです。Engineは停止しているのでOil Pressureは無いはず。今までの惰性で回り続けているだけでしょうか?それともまだOil Pressureが少なからず残っているのか?10秒20秒ほどしてようやく音が聞こえなくなります。今までは、単に音だけで数字を進めるだけの力はないだろうと思っていましたが、ひょっとすると、これが先の友人の話を説明することになるかもしれません。もし、Pressure Switchの反応が遅くてなかなかOffにならない、または何らかの原因でOil PressureがHose内部に残ったままの場合、Hobbs Meterが作動し続けることも分かります。でも、ある日は停止後に音が全く聞こえないということもあり、理由は何なのかよくわかりません。この問題の解決策として、飛行後のHobbs Meterは時間を停止直後ではなく、少々の時間を置いてから書くということ、そして不具合のあるPressure Switchは交換することも必要なのでしょう。
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