イレッサ海外での申請取下げについて


  

 

 

 

イレッサに何の利害もありませんが、朝日を批判してきたので、いきがかりで見解を少し書いておきます。

<最近の記事を引用します>

イレッサ 国際協同第2相試験 プラチナ製剤の抗がん剤既治療例 NSCLC で高い相効率で承認された。 

最近の詳しい分別試験で、 腺腫例・女性・アジア系・栄養状態良好・非喫煙例で有効。

  白人では延命が証明されず、ヨーロッパでは発売延期。

日本人に多い、EGF変異タイプに良く効く。

北大などでも、33%の奏効率の報告。 一年生存率は55%。

熊本大学、 EGFR変異ありだと 一年生存率80%以上。 無しだと、55%位。

▽遺伝子タイプ

 検討会が使用継続とした最大の根拠は、臨床試験でマレーシアやフィリピンなどの東洋人は生存期間が延びていた点だ。

 富永祐民(とみなが・すけたみ)・愛知県がんセンター名誉総長は「遺伝子のタイプは人種差があり、日本人の多くはたまたまイレッサが効く。実際、劇的に効いたケースがあり『引き続き使ってもいい』との見解は妥当と思う」と言う。

 その上で「新しい抗がん剤は(販売)初期に副作用が出やすい。その後、上手に使えるようになり副作用が減っていくことが多い」と、使用を続けながら情報を蓄積する重要性を指摘した。

 これに対し「東洋人で有効でも日本人で効くか分からない」と、データ解釈を疑問視するのは、米国で新薬承認業務の経験もある検討会委員の竹内正弘(たけうち・まさひろ)・北里大教授。

 初回の解析のため信頼性が不明な上、東洋人でも人種は幅広く、ひとくくりにするのは問題とする。「詳しい解析データが明らかにされておらず、判断が難しい」と、製造元のアストラゼネカの姿勢も批判した。

2005.2.23 追加
 マレーシア人・台湾人 生存期間 9.5月、 非東洋人 5.5月

以下、多少の私見

他の薬剤での肺線維症・薬剤性肺炎の発症率

bleomycin 4〜5%
methotrexate 0.3〜7.5
busulfan 3〜11.5
Ara-C 13〜23
cyclophosphamide <1
mitomycin 2〜12
docetaxel 1.6
gemicitabine 1.5
irinotecan 0.8
抗菌薬(抗生物質) 0.003
amiodaron(不整脈の薬) 5〜10
インターフェロン 0.18
小柴胡湯 0.004

どれも、重要な薬です。
iressaでは1.6%くらいが見積もられています。
初期には高危険グループが知られていなかったので、今後注意して使えばもっと下がるかもしれません。

それでも、他の薬剤と比べて特に死亡率の高い抗がん剤とは考えにくいのです。
もっと一般的に大量に使われる鎮痛剤や抗生物質等でも確率は低いですが起こりえる副作用です。

朝日新聞のように、ヒステリックに承認取り消しを求めた理由は、科学的には説明できません。
マスコミでは日常的に扇情的キャンペーンは行われますが、統計や科学を理解するものには、なぜかは理解不能です。iressaが承認を取り消すほど危険だというなら、もっと多くの種類の薬が承認取り消しになるべきですが、何故他の薬を攻撃しなかったのか朝日新聞にはご説明願いたいものです。
唯一の説明と思われるのは、ヒステリックで非科学的ということでしょうけれど・・・・。

また、iressaの副作用率は単独使用がほとんどです。使用経験の少ないときは仕方がありませんが、多くの抗がん剤は複数併用療法が主流です。併用療法では、より有効で副作用の少ない使用法が開発されるかもしれません。医師の工夫の余地はまだまだあります。最終的に使われなくなるかもしれませんが・・・。

もちろん、私はiressaが最善・最良の夢の薬とは思っていません。もちろん、アストラゼネカから賄賂や利便を図ってもらったことはありません。もっと良い薬が出てくることを望むものです。
アメリカでは同じ作用の別の薬が承認間近です。副作用が減っていれば良いのですが、統計処理にはさらに時間がかかります。

2005.2.1
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