日経新聞の医療批判

経済・財政のわからん「経済」新聞などいらない


  

 

 

 


日経新聞が「医療再生」良医を育てると称して、日本の医療批判を行っています。
全く、お笑い種で笑ってしまいます。6月14日一面記事より。

シカゴの救急医療専門医がいかに優秀か、専門医試験がいかに難しいかと論証し、逆に日本の専門医制度が形式的で劣っているかと非難しています。

結論は、驚いたことに「名実ともに専門医と呼べる医師にこそ、国民は信頼を寄せ、欧米のような報酬上の優遇も受け入れる。世界標準の制度作りは道半ばだ。」と怒っているのです。

専門医になれば、逼迫する医療財政にもかかわらず、報酬を増額してくれるという「経済新聞」とも思えない記事には開いた口がふさがりません。

そもそも福祉予算の窮乏は、急激な人口構成の高齢化と、世界にも稀な少子化の同時進行によるものです。医師でさえ急激な報酬上の優遇など期待していないのに、経済新聞記者の頭の中身を疑わざるを得ません。

ここ20年くらい、日本の医師の養成は問題視されてきました。循環器医は循環器しかわからない。血液の専門家は消化器が治療できない。これらが反省され、総合内科とか総合診療部がまず私立大学から立ち上がり、国立大学にも波及してきています。この期に及んで、細分化された専門医を増やせという論調にはついていけませんし、記者の言うように専門化を推進すれば医療費は増大するのです。

さらに、アメリカを崇拝し、偉大なアメリカのイメージから日本の現状を批判し、文句ばかり並べ立てるいつもの非科学的新聞記者的手法も、開いた口がふさがらないものです。うそでないから、真実だと主張するようですが、顕微鏡的・重箱のすみ的真実を重視して、全体での位置付けを見誤るのが新聞記者の本質です。こんな連中が日本の経済のオピニオンを形成するとしたら、日本経済に未来はないのです。

馬鹿には、事実関係をあげて反論しましょう。

  日本
    米
WHO健康寿命
1位
24位
WHO医療平等性
3位
32位
WHO医療総合評価
1位
15位
OECDによるGDP
18位
4位
国民総生産に占める総医療費
18位
1位

アメリカは先進医療に見るべきものはあるにせよ、 国民皆保険ではないので、金持ちばかり優遇され、全体でみれば寿命は短く、医療費も非常に効率が悪く高いということです。
日本は貧乏でも平等に医療が受けられ、寿命はほぼ世界一にもかかわらず、医療費は先進国では最低の負担だということです。

経済記者のくせにこの程度の認識もないのです。さらに愚かなのは「欧米のような報酬上の優遇も受け入れる。」というのだから、あほとしか考えられないのです。経済記者が、経済的検討もせず思いつきの愚痴を並べているに過ぎないのです。経済新聞の看板をはずしなさいよ。

もっと具体的に医療費をあげるなら、アメリカは医療費がGDPの14%の150兆円を使っても、寿命を延ばすことができておらず、逆に日本はGDPの7%たった30兆円で世界一の寿命と健康を享受しているのです。日本の医療費がいかに低予算で努力しているかということなのです。一部は専門医の高額報酬でアメリカの医療費は膨らんでいるのでしょう。

世界標準以上の医療を低負担で達成しているのが日本であり、先進世界標準の国民医療保険制度さえ実現できない劣った医療環境がアメリカなのですが、あほの経済新聞記者にかかると「日本の制度は道半ば」と逆の主張になったしまうのですから、開いた口がふさがりません。アメリカ並みの専門医制度を導入すれば「報酬上の優遇」を与えようというのですが、経済新聞なら財政上の根拠を示してもらいたいものです。

ニューヨークで虫垂炎を手術すれば、244万円、ロンドンで144万円の費用です。日本なら35万円、個人負担は最大でも7万円以下です。どちらが福祉として世界標準でしょうか。困難な手術とはいえない虫垂炎でもこれほどなのに、欧米並みの専門医にふさわしい「報酬上の優遇」を認めてくださる日経新聞は、その財源をどこから捻出しようというのでしょう。こんな計算さえできないのが、経済記者といえるのでしょうか。

どこの新聞記者も、アメリカ医療はすばらしく、日本の医療は劣っていると主張したがるものですが、真実ではないのです。科学的統計などを分析できない人間の、妄想とか集団ヒステリーにすぎません。

それほど経済界がお偉いのなら、G7の日本以外の土木建築費が6ヶ国合計で28兆円なのに、日本1ヶ国で70兆円も使っているのを、経済新聞としては合理的説明をしていただきたいものです。アメリカを含んでも28兆円なのです。これこそ「世界標準から道半ば」ですが、経済界御用新聞には批判できるか見ものです。

もちろん大半が税金から支払われているのですが、これほど土木建築費に厚く、福祉医療費に冷淡な国は先進国とはいえないのです。

そんな国や経済界にふさわしい新聞こそ、日経新聞だから仕方ありません。

まとめ
1.日経は財政の困難な状況の真の原因は理解していない。
2.日経はある産業の経済効率性の国際比較さえできない。
3.日経は産業の世界標準を理解できない。
4.ミクロ(経済)を論じて全体を語ったつもりになる。マクロ(経済)を理解する能力がない。
5.日経は日米の医療費の単純比較さえできない。

よって、こんな「経済」新聞など存在意義はない。

2002.07.01
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