母子手帳悪玉論


  

 

 

 


稀ですが、神経芽細胞腫は新生児に多い病気で、悪性のものは悲惨な結末をむかえます。神経芽細胞腫の尿検査があります。簡便なうえに、苦痛もなく早期発見ができます。
私の理解では、現在の京都第二日赤の院長が開発普及されたものです。
これで、実際に多くの(ガン)患者がみつかりました。手術も多く行われました。

20年程度たって普及し、統計の結果が出てきたのは最近です。統計上、この(ガン)による死亡数は減少しないのが解ってきました。私が雑誌で見たのも今年だったと思います。

論文の著者は、「小児のガンであるから、成長とともに消えていくガンもある。見つけていたものには消えるガンもあり、本当に死亡に直結するようなガンは見つけて手術しても死亡する。手術が成功したのは消えるはずのガンの可能性がある。」というものです。

もちろん早急に検証する必要がありますが、二つ三つ論文が出たからといって、すぐにそれが絶対的真実になるわけではありません。
専門家でも悩ましい問題であり、神経芽細胞腫が見つかった場合どうすればよいか指針がありません。少し様子を見るか、大きな悪性の塊と思われるものがある以上、手術でとるかどうかということです。統計的真実はただちに個人の方針に反映できるとは限らないよい例です。学問的に正しいからといって、実地応用とは少し差があることがあるのです。顕微鏡で覗いても、おとなしそうなのにすぐに転移するガンや、まったく悪い性質の顔で、ほとんど進行しないガンもあるのです。

大規模な統計を計画し、何年もかかって結果を待つ必要があります。これがわかったのは逆に科学の成果です。

動物実験は不可能で、人体で統計を取るしかないのです。

しかし「窓」の朝日の論説委員によると、母子手帳は悪玉で大変な精神的・肉体的苦痛を与えたそうです。

要旨はこうです。
自然に治るものをわざわざ見つけてもらっても迷惑というしかない。大きな精神的・肉体的苦痛を強いられてしまう。母子手帳で強制するのはけしからんというものです。母子手帳により、無駄な手術で子供を苦しめたのはけしからんと怒っているのです。

これは、単なる結果論でしかありません。自分の子供も検査したので、まるで被害者ずらです。
必死になって、世界に先駆け検査法を開発・普及させたからこそ得られた成果が、たまたま予想に反したということです。ガンを早期に発見し対処しようというスタート時点の考えを疑うものは誰もなかったのです。やっても無駄だとわかっていて普及させたのではありません。ましてや、単なる科学的興味や金儲けのためではありません。

さらに、母子手帳などはお役所仕事ですから、定説となってもゆっくりとしか変化しないのは仕方がありません。仮に将来廃止になるとしても、科学的検証・証明がすんでからです。なお、母子手帳は健康管理の大発明であり、途上国・先進国を問わず導入が議論されているよい制度です。

繰り返しですが、数編の論文がでても、それがすぐに定説になるわけではありません。そんなのにすぐに飛びついて批判ばかりするのは新聞記者くらいなものです。科学的思考のできるものは、確認が必要だと考えるのです。見つけた異常者からさらに、どうしたら良性と悪性が選別できるのか、新たなテーマとして重要なのです。ところが、朝日にかかると、発見して迷惑をかけたからけしからんと医学に対し怒っているのです。

こんな批判を行っても、現実に何の成果もありません。今ガンが陽性と出ている方には気の毒ですが、結論が出るのには何年もかかるのです。新聞記者のように、すぐさま母子手帳から削除を叫ぶことなどできません。廃止したところで、何の効果が望めるのか?。朝日の論理にはついていくことは不可能です。不安解消のために、「事実関係を隠蔽して安心したい」というのですから、開いた口がふさがりません。情報開示が不要だといっているのです。

朝日新聞のように、感情的・煽情的・被害者意識だけで何でも批判していては、ガンと戦うことなどできません。

論説委員でさえこの程度の論理的思考ができないのですから、あきれてしまいます。

新聞は、「何でも情報開示せよ。そうすれば真実が判明し、よりよい社会が得られる。」とうるさいくらいです。ところが、真実を明らかにして、危険性のある群から科学的結論を提示したら「無責任だ」と批判されるのでは、医師はいったいどうすればよいのでしょう。いつも主張することと正反対の意見をいって平気なのが朝日です。

マスコミの流す医学不信論と、数編の論文を曲解して集団ヒステリーを起こし、廃止されたのがインフルエンザの予防接種です。そのために多くの老人たちが亡くなりました。情報開示により間違った結論を出し、「より悪い社会」作り出した実例がまさにマスコミそのものです。人権侵害の最たるものは命を奪うことです。それに対する反省をマスコミから聞いたことがありません。人権侵害はないから報道規制はやめろと叫んでもむなしく聞こえます。真摯な反省がなかったことに、権力側につけ込まれたのです。

言論による人権侵害は、目に見える犯罪者や芸能人に対する過剰取材だけではありません。圧倒的に有利なマスコミによる間違った情報操作による、正論の圧殺も人権侵害です。タバコ廃止論の矮小化、いつまでたってもやめないガンに対する効果のない民間療法広告の圧倒的情報量。情報量の圧倒的格差がインフルエンザワクチン廃止という暴挙を可能にしたのですが、反省はありません。

9兆円不正請求記事の朝日はまさにそうで、日本医師会の正当な抗議を圧殺し、情報を得るために厚生省の「うそ情報」源を秘匿し権力側と癒着したのが朝日新聞です。

新聞はダブルスタンダードどころか、他を批判するためには数百でも視点を変え、被害者意識や自分たちの「正義」(感)で批判するのですから、たまったものではありません。科学や医学とはまったく遠い世界に生きているのですから、相手にするのもばかばかしいものです。


2002.05.01
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余禄
無罪の人を極悪人とするのが冤罪で、そのような報道は人権侵害です。
それなら、無罪の安部副学長への非難を、報道機関が検証したことがないのはなぜでしょうか。

最近皮膚科のアトピー勉強会へ出ると必ず、ニュースステーションの久米氏の責任論が出てきます。
テレビ朝日がどこまで真剣にこれらの非難に答えてきたでしょう。報道の自由は叫ぶが、死者も出たかもしれない責任には知らぬ顔で国民の理解など得られません。

稀な副作用情報があれば、インフルエンザワクチンを人殺しと金儲けの道具のように報道し、廃止に追い込み、同様にステロイドは悪魔の薬として民間療法を推進し多くのアトピーの子供を苦しめ、数人の死者が出ればインフルエンザがイギリスで大流行していると恥ずかしい報道をし、死者も出ないのにダイオキシンで人類は滅亡しかけるのです。

XXを食べていれば健康になれるという結論、「赤ワインさえ飲めば健康を守れる。」と考えるワイドショーと同じ低レベルの思考回路であり、信じるのは愚者なのです。

知恵のないものに事実関係を明示しても、曲解からとんでもない結論が導き出されるのはよくあることです。何でも暴き立てて、情報開示・真相究明しても、知恵のないもの・科学を理解できないものには逆効果ということです。