エー、ゴホンッ。皆さんいかが御過ごしですか。冬真っただ中のこの2月中旬、俺がやってるカントリー・ロック・バンド、ジェイ・クラーク&ザ・ジョーンズとなんと北緯63度(といってもピンとこないよね。一応調べただけです)の北のはてまでロードに出てきました。そんなとこまで行く機会はめったにないので面倒くさがりの俺も今回に限りツアー・レポートなんぞを書いてみたぜ。バンドはどうでもいいけど北極圏なんて面白そうと言う人もいるかとおもうんで、、、とりあえず読んで頂戴!
ヴァレンタイン・デーの真夜中にボーカルのJayとベースのRobが レンタルワゴンでうちにピック・アップにきた。そしてギターのIan、ドラムのJoeyを拾いまずはオタワに向かう。トロントから約5時間で翌朝オタワにつき朝食をとり空港まで。俺、腕時計ってもったことないんだよね。だから時間はだいたいしかわかりません。ちなみに携帯電話も大嫌い。とにかくオタワ空港の駐車場にワゴンをとめてFirst
Airというカナダ北部を結ぶローカル航空会社の小型旅客機にのりこむ。地面から階段で機内にあがるようなヤツははじめてだったのでビートルズにでもなった感じだ(!?)。3時間弱のフライトで目的地Nunavut準州バフィン島のイカルウィットという町へ。機内では爆睡していたため食事はのがしてしまった。到着前の機内アナウンスによるとその日の気温はマイナス31度とのこと。ふと窓の外を見ると一面白銀の世界がひろがり感動をおぼえる。イカルウィット空港で外に出ると寒さが身にしみる前にまず鼻毛が凍る。今回のプロモーターであるBrian
が迎えに来てくれた。そしてまずはホテルにチェックインする。今回のツアーはBrianがマネージメントするクラブElk`s Lodgeの呼び掛けとFirst
Air とホテルNavigator Inn 両スポンサーの協力によって実現した。バンドのツアーとはいえこのような旅行ができたことを関係者のみなさんに心から感謝したい。
イカルウィットの街角にて。標識は英語とイヌイット語で記されている。
イカルウィットの人口は現在6400人。5年前が4200人だったというから近年の発展はめざましいということだろう。カナダ東部やケベック州などからやってきた白人も多いが今でも7割はイヌイットだ。町は観光地として開発されてきているらしいが規模は小さく車で5分も行けばどこへでも着く。たてものはそれ程多くないがさすがに丈夫なつくりをしていてどこも中は暖房がきいている。命にかかわるからな。イヌイットの氷雪でできた家Iglooはイカルウィットにはないようだ。
ひと休みした後、Brianが町をひとまわり車で案内してくれた。小高い丘の上にある発電所からの眺めが素晴らしい。四方の平原は雪に覆われている。太陽のひかり輝く大地は絵にもかけない美しさといえるが俺はそもそも絵がうまくないからさ。次ぎに地元の学校を訪れる。ここで教えている先生ローマインがJayの友人で彼が口をきいてくれたことがこのツアーのきっかけだった。彼のクラスはグレード9。子供たちはおれたちをはるばるやってきたロック・スターとおもってたようでおかしかった。翌日昼過ぎにはJayがひとりでもどってきてクラスでアコースティック・ギター片手にうたってあげたというからなんともほほえましいじゃありませんか!
夜はローマインの家に招待され彼のルームメイトやその他友人と親ぼくを深める。その後バーにみんなで飲みに出た。町にある飲み屋も数えるくらいしかないのでどこも混んでいる。俺たちがいったZoo
Clubという店がたまたまカラオケ・ナイトだったのには閉口。Jay とRobがそれぞれ歌うとやっぱり彼等はうまいのでおおうけする。翌日のショーのためのいい宣伝になっていた。
16日金曜日の昼。気温はマイナス26度というからチョット暖かくなった!滞在中運良く風の強い日がなかったのでなんとか寒さに耐えることができた。話しによるともっとも寒いとマイナス40度、体感気温マイナス65度にもなるというからおそろしや。でも夏は15〜20度のようなので避暑地としてはもってこいだ。
会場であるElk`s Lodgeにギター、アンプ等を運ぶ。PAは店にあるものを使用、ギターとベースのアンプ及びドラムは地元のミュージシャンが調達してくれたそうだ。これまた感謝。俺はハーモニカのためのアンプをトロントから持ってきた。セッティングとサウンド・チェックを済ませた後、Jay
はCBC(カナダのNHK的なラジオ局)の地元支局におもむきインタビューをうける。夕方、ショーの前にローマインの家で夕食をとる。イヌイットの珍味(?)くじらの干し肉をつまみにホームメードのビールでまずは乾杯。そしてチャーと呼ばれるサケのような魚をほおばる。北極の味、泣けてくるねえ。
凍てついたクラブの外。寒くて誰が誰だかわからない?
で、いよいよショーの初日というわけ。店はそれ程大きくはなく150人くらい収容するクラブ。白人の客が多く満員だった。だけどイカルウィットは観光地ということもあり物価が物凄く高い。おれたちのチケットは$20。トロントでもかなりの値段だ。今度トロントにやってくるシカゴのブルース・バンドMagic
Slim & The Teardrops でさえ$15なのに。3セットを一応無難にこなす。ただ個人的には昨日今日とまったく練習していなかったので音がにぶっていたような感じがする。ただ客の反応はかなりよかった。セットの合間には多くの人から声をかけられた。日本人とイヌイットは多少顔がにているから間違えられることもあった。イヌイットの言葉をせっかくだからおそわる。カヌウィッピ(Hello)、クヤナミ(Thank
you)、マメナ(Sorry)など。日本語とも英語とも音に関連性がないのでなかなかおぼえられなかったな。その後みんなはまたローマインの家でパーティ。ジェイ・クラーク&ザ・ジョーンズはここでも本領発揮だ。ヤツらはまったくロッケン・ロールしてるぜ。詳しくはヤバすぎてホームページにはのせられないよ。おれはすでに酔っていたためひとりで先にホテルにもどってねた。この夜は、まあいわばみんなブライアン・ジョーンズで俺だけチャーリー・ワッツでした。
17日土曜日。昼前に起きて部屋で少しハーモニカを吹く。それぞれ個室が与えられてるからね。スポンサーさまさま。前のOrillia
のミニ・ツアーはみんなで一部屋だったからえらいちがいだ。なんか疲れてたので今日の昼間はほとんどホテルですごす。
再びローマイン邸で晩餐。今日はカリブーという鹿のステーキだ。そしてElk`s Lodgeにてショー。今日はモニターの具合もよく昨日より演奏はしやすい。でも年齢層がやや高く落ち着いていたかな。金土とほぼ同じセットで演奏曲目の約半分はジェイ・クラーク&ザ・ジョーンズのオリジナル、そしてジョニー・キャッシュほかカントリー・チューン、ストーンズ、ジョン・クーガー、ブルース・スプリングスティーンのカバーなどだ。午前2時には終わりまたもやパーティにくり出す。俺も今日の昼間はよく休んだので好調、Wild
Turkyなどを流し込む。
町はずれの丘の上で。積み重ねた石は方角を示す。今ではイヌイットのシンボルになっている。
日曜日の午後はスノー・モービルで出かけた。これはほとんどスクーターのような実用品で北極圏での生活には欠かせない。家から5分も行くともうひたすら雪の丘が続く。ローマインのルームメイト、マークとブライアン、そしてジェイで計3台。俺はブライアンのうしろに座った。かなりスピードが出てスリルがある。振り落とされては一大事だしケツを固定していないと痛くてたまらないので必死につかまっていた。翌日筋肉痛になったくらいだからね。俺も少し運転したけどアクセルとブレーキ、重心の移動などバイクとほぼ同じだ。タイヤのかわりにキャタピラだけど。そしてしばらくいくと一匹のカリブーに遭遇。遠くからしか見えなかったけど白くてデカイ。つかまえてかえったらステーキ何人分になるんだろうとほとんど動物としてではなく食物としてみてしまう自分を笑う。白熊はいなかったけどあれは食えないからどうでもいいぜ。
その夜もローマイン邸で最後のパーティだったがさすがにみんな疲れが出ていたのか早めに切り上げる。食事はロースト・カリブーでこれまたうまい。
スノー・モービルにガソリンを入れてるとこ。自動車と全く同じ。イカルウィットに
行く前はみんな犬ゾリに乗ってるのかと思ってたけど。
ところでいままでのところ何か忘れていると思わないか?そう、オーロラだー。英語ではみんなNorthen
lights って呼ぶ。
オーロラは北極圏でも常に空に見えるわけではなく運が悪いと滞在中に出てこないかもしれない。金曜日のギグの帰り道にそれらしきものがうっすら空に浮いていたけど、どのような状態で見えるのか検当がついていなかったので確信がもてなかった。ただのけむりだったらマヌケだ。そして最終日の夜遅くパッキングを済ませてからこれが最後のチャンスだとばかりひとりコートを着込んで外に出てみた。ホテル周辺はライトが多く明るすぎるので港(と言っても凍り付いているんですねー)のほうまで歩いてみる。天気は良く雲も出ていなかったので万全の体勢なはずだ。よく見ると巨大なベルトというかカーテンというか不思議な物体が空に流れているではないか!まだまわりの光があかるいので目のまわりを両手でおおいライトを遮ってみた。Holy
shit! ついに待ち焦がれていたオーロラを目の前にすることができたぜ。Oh,man! 色は白くそれほどはっきりしていたわけではないが、地平線の向こうからはてしなく続いている。目が慣れてきたらあちらこちらにいくつものオーロラが浮かんでいるのがわかった。一体どのくらいの大きさなのだろう?風に運ばれるようにゆっくりと動くNorthern
lights 。今回のツアーのハイライトのひとつであった。
ドラマーJoey。こんなところにセッティングしてどうすんの?
ドラムの雑誌に写真を送るって言ってた。彼はトロントで放映してた日本のアニメ
に詳しく、「明日のジョー」も知っていた。でもタイトルが"Tomorrow`s Joe"
だって!そのままじゃんかよ。
翌朝オーロラを見たことを伝える。You,sucker! 一大スペクタクルを見逃したみんなは悔し紛れに叫んだ。夜遅かったから呼ばなかったんだけど、、、でも何人かは昨夜もお楽しみ中だったからいいじゃんか!ブライアンが車でElk`s
Lodge と空港、ホテルを往復して荷物を運んでくれた。もう一度、ブライアン、ローマインほか関係者の皆さんに感謝の言葉をおくりたい。「クヤナミ!」。みんな白人で英語なんだけどね。First
Air でワゴンをとめたオタワに向かう。今回の機内食はのがさずチャーを食った。オタワに着くと気温はマイナス10度くらい。暖かく感じた!買った絵はがきを途中で落としてしまった。俺はなんでもなくすから。そしてワゴンでトロントまで走りJay
Clark & The Jones 北極圏ツアーはついに終了する。ドラムのJoeyの次ぎに俺の家まで送ってもらった。Jay,Rob,Ian
Joeyもありがとう。俺は何もしないでくっついていっただけだったからな。
2月19日月曜日夜11時半に無事帰宅。とにかくいい経験だった。
あとはゆっくり眠るだけ。夢にオーロラでも出てくるか、あるいはロッケン・ロール・パーティか。
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