Kenny`s ウェブ・マガジン From Toronto,Ontario
2005年8月 By ケニー吉岡(ブルースハープ・プレイヤー)
ROD PIAZZA & THE MIGHTY FLYERS ライヴ・レヴュー!トロント東部Beachesと呼ばれる地区で毎年夏に行われているビーチス・インターナショナル・ジャズ・フェスティヴァルに出演したロッド・ピアッツア&ザ・マイティ・フライヤーズ(この名前野球チームみたいだけど、、マイク・ピアッツア&ニュー・ヨーク・メッツか)の豪快なショーを観てきたのでここにレポートしよう。
ロッドは(御存じでもないと思うので紹介しておくが)アメリカ西海岸を拠点に60年代から活躍するハーモニカ・マンでアンプリファイドした太くリズミックなプレイだけでなく、ウエスト・コースト・ブルースの大御所ジョージ・ハーモニカ・スミスの流れを引き継いだクロマテイック・ハープの名手であることでも知られている。
以前、友人のハーピスト、デヴィッド・ロタンドがロッドのブルースはオーヴァーアレンジされていて自然じゃないと語っていた。確かに俺の持っているレコードでもキメの部分が多い印象を受けるが果たして生ではどうだろう。
ショーの直前メンバーの誰よりも先にステージ上にスーツ姿で現われ自らアンプ、マイクのセッテイングに余念がない。観客の大半は気にとめていなかったようだが俺は見逃さなかった。スターになっても音には細心の注意を払っているんだねえ。はじまる前から既に尊敬の眼差しで拝見する。でもちょっとグラハム・ボネット(覚えてますか?)風のルックスでおかしい。
一曲目。ジョージ・スミスに敬意を表してかやはりクロマティックでスタートだ。アップテンポでこれがウエストコースト・スタイルだと言わんばかり。と思いきや2曲目はややファンキーにメンバーを紹介しそれぞれのソロをフィーチャーする。ピアノに奥さんであるハニー・ピアッザ、アップライトのベーシスト(紹介された時ロカビリーのアンちゃん風にベースを回転させたところがお茶目)、エレクトリック・ギター、ドラムの5人。ロッドの口調が黒人訛りッぽいので少し笑えた。そして"Baby Please Don`t Go"でシカゴ・スタイルもきめる。はじめから何故かハープの音が小さい。全体の音のバランスが悪く3曲たっても一向に修正する気配がない。ギターとドラムがでかい。P.A.のおっさんポイントおさえてねえなあとボヤく。主役のボリュームが足りないとは何ごとだ。別にステージ上でアンプからフィードバックしているわけでもないし。
そんな不満を吹き飛ばしたのが頼れる女房であった。ピアノとドラムの2人だけによるインスト。これが圧巻であった。ブギ・ピアノのおいしいパートをふんだんに盛り込み10分近く熱演。観客はスタンディング・オヴェイションで応えていたので4曲目にしてショー最大の見せ場になっていたと言える。開演前は正直なところ奥さんがピアノということで(マッカートニーのリンダの例もあるので)あまり期待していなかったのだが、これだけやってくれるなんて思ってもみなかった。とても感動的であった。
その後ガンガンとキメのショットが入ったダイナミックなスロー・ブルースなど定番を続け盛り上がる。最後の一曲で最高にエンターテイニングな演出を披露してくれた。と言うのは、ノリのよいシャッフルをプレイしながら各メンバーを紹介しその度にひとりづつステージから引っ込み最後に残ったロッドがワイヤレスのマイクを通してハープを吹き続けひとり客席に乱入、椅子に立ち拳を振り上げつつリズムを刻む。そちらに客の目がいっている間にメンバーが再びステージに戻り、頃あいを見計らって最後に全員でドカーンと盛り上げて終了した。凄かった。
ロッドのハープの演奏力は素晴らしいと思う。音色は声質同様深みがあってビブラートはまろやかな感じでちょっと個性的。またクロマチックでいろいろやるのを聴いたのジョージ・スミスのCD以来だ。リズムの遊びなんかもユニークだし。即興ソロでグングン押すキム・ウィルソンなどと違って曲の構成を第一に考えているタイプ。ウエスト・コーストの伝統であろうか。またショー全体の流れも計算されていて見どころをあちこちに設定している部分も楽しさ溢れる感じ。ここ数年俺はコンサートでも音がちゃんと出てなんぼみたいな考えがあってアクションきめてギター弾いてるヤツとかみるとバカじゃねえのと冷めてしまう傾向があったのだが、今日のブルース・ショーを観て何か子供の頃はじめてロック・バンドに衝撃を受けた時のようなそんな気分になってしまった。たまには耳をそばだてて聴きいるよりもグル−ヴに合わせて踊った方がよい時もある。ブルースにしても芸術面だけじゃなく芸能面といったものも魅力的な部分だということである。T-ボーン・ウォーカーが背中にギターまわしたりサニーボーイ2がハーモニカを口に入れて吹いたり、、。そうかと言って今度俺もステージでケツ振ったりはしないと思うが、、。ロッド・ピアッツア&ザ・マイティ・フライヤーズ。うむ。俺の中では忘れ難いコンサートになるだろう。
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