屏山アカデミー

2001.8.23〜30 韓国安東市郊外 屏山書院にて


■屏山(ビョンサン)アカデミー

韓国・安東市郊外にある「屏山書院」という建物がある敷地に、大邱(テグ)大学を中心とする韓国の建築系の学生40人位と我々が集まり、3,4人ずつのチームに別れて、同じ設計課題を1週間でやるというプログラムが行われました。
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我々は福岡から高速船で釜山に入り、そこから車で慶州・大邱を経由して安東市に入ります。

■敷地

オフロードの道を数km走ったところに現れる、文字通り屏風のように立ちはだかる「屏山」。この屏山を正面に望み、砂浜を含めると200Mほどの幅のある大きな川を隔てた場所に屏山書院は位置します。
「書院」(ソーウォン)とは、儒教を教える私塾のようなもの。
この敷地の西側には河回村という集落があり、ここから「科挙」の試験を受けようとする者たちが教えを請うためにこの書院に来たのだそう。

我々の課題はこの周辺に適当な敷地を選択し、「アカデミーハウス」を計画するというものでした。この土地をどのように解釈するか、屏山書院との関係をどう理解するかがカギとなります。

製図作業は川原の砂浜に設置したテントの下で。敷地のすぐ近くで作業できるのは良いにせよ、日中は猛暑、夜は虫の襲来に耐えながらの作業で、風で図面が飛んでいくのにも注意しなければなりませんでした。

 
屏山と、我々が作業したテント。 屏山書院を正面からみる。

■書院の断面図と平面図

書院は緩やかな山裾に位置しており、より高い(奥の)位置に、より偉い人が居るというハイアラーキーが構成されています。

左図に名を入れた4つが中心的な建物ですが、「入教堂」には先生が住み、「東斎」「西斎」は生徒の居住と学習の場となっています。
「晩対楼」(マンデルー)は壁のない吹きさらしの建物で、入教堂や中庭から見る屏山の景色をコントロールする役割も持っています。

これらの4つの建物によって中庭(マダン)が重要な意味を持って浮かび上がってきます。その中に植えられた3本の木もとても象徴的に見えます。
この書院におけるもっとも重要な視線は、入口からの建物を見るものではなく、入教堂から見た屏山を望む視線であることに注意しなければなりません。


入教堂から見たマンデルーと屏山


■マンデルー
マンデルー。 マンデルー内部での講評会風景。

建築的に面白い「マンデルー」の建物。「ピロティ」部分の柱は曲がった材料が使われ、二つの階段は大きな丸太を削りだしたもので作られています。壁はなく、柱と床と屋根があるのみ。
最初に入ったときにはあまりの開放性に落ち着かない印象だったのですが、だんだんと、この建物がダイレクトな意味で周囲の自然をテーマとした建物であることを理解。猛暑のなかでしたが、このマンデルーには常に涼風が吹いていたことも注記しておかなければならないでしょう。

■東斎・入教堂

入教堂から東斎をみる。 入教堂裏側から屏山方向をみる。

上の写真からわかるように、東斎や入教堂も、部分的に壁で仕切られ部屋が作られているにせよ、基本的に開放的なつくりとなっています。

■そして、作業…

チーム内のコミュニケーションは基本的には英語で。特に僕らのチームには韓国語と日本語の両方が話せる人が居なかったため、当初意思疎通に苦労しました。日・韓・英・仏の各言葉が飛び交い、頭の中も各語がごちゃ混ぜになります。

別府を朝8時に出発して、待ち時間を含めて12時間掛けて行った初日から深夜3時までの作業。夜に講義がある日は21時に始まって1時半にようやく終わるという具合。3時・4時までの作業はあたりまえで、最後のほうは徹夜が続きます。

近くにあるミンパク(=民宿、ただし「海の家」を想像していただいたほうが正確)に寝泊りするのですが、掛け布団もなく、シャワーはお湯なし、三食とりあえず我々には辛く、最後のほうは食事をとっている時間もなく…等々、非常にハードなプログラムでした。

こんな食事が毎食出ます。
魚の煮付けも必ず唐辛子入り。
僕らのチームが作った模型。

そんななか、我々は相当バテているのに、韓国の学生はなかなかパワフルで、そんなスケジュールを結構平気な顔をしてこなしていましたね。

ハードなプログラムでしたが、各チームについているTutorの先生方の経歴がそれぞれ面白く個性的な面々で、彼らの話をいろいろ聞けたのは面白かったです。
僕が居たチームのTutorの先生はパリVIII大出身で、そんなわけでフランス語は出来るのだけれども、英語があまりできない。だから僕とのやりとりはフランス語で、他の日本人学生とのやりとりも僕が通訳で借り出されてました。韓国でフランス語を使うことになるとは思いませんでした。
締切前夜に一時間も掛けて形態論の個人講義をされたのには少々参ったけれども…、内容は面白かった。

結果としては、良い経験が出来ました…と、締めておこうかな!?。他で得がたい体験であったことには…間違いありません。

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最終更新日04/09/10