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大多福

東京・浅草  おでん


全国1,000万(推定)のおでん・ファンの皆様、こんばんは。
先日ムラカミは上京の折、東都一のおでん(御田)店、浅草は言問通り沿いに或るところの『大多福』へ行って参りました。


…割り箸入れに描かれた入口の絵。


通りからセットバックした入口には、石畳が敷かれ、植物が繁茂し、宛ら京の路地を想起させます。
中に入りますと、カウンターのみの小規模な店かと思ひきや、実はその奥に広い座敷席を擁し、総座席数60に及ぶという、御田店としては恐らくは特大クラスの店舗でありました。

しかしそれでも猶、店の人気はそのキャパシティを悠かに超えていたようであり、我々は入口付近で、浅草界隈の古地図などを眺めながら、来るべき御田と料理の味に期待を巡らせつつ、暫くの間待つことと相成りました。

我々が案内されたのは、座敷席であります。奥寄りの席との間だけに、何故か衝立が置いてあります。これは後に判明するのですが、隣席が子供連れであった所為でした。
子連れの客に対しての、また勿論周囲の客に対しての、心憎きばかりの、小さな計らいであったのです。
この「小さき計らい」の類は、この店に入り、出て行くまでの間、其処彼処に見受けられ、一流のホテル等での教育されたサービスとはまた違った、心の奥に染み入ったふうのサービスの有り様が、店員一人一人に行き亘っており、大変に快適でありました。美味しい食事を戴くには、こうした温性あるサービスが伴っていることが必要条件であることは、改めて云うまでもありません。

偖、座敷席とは雖も、暖かい御田が戴けるようにと、各テーブルにはコンロが設けられ、出汁の入った鍋がそこに置かれるのです。なんと贅沢な仕組でありましょう。
そこで我々は大根・馬鈴薯・雁擬等の"定番"をはじめとして、鶉玉子、蕗、「えびばくだん」、キャベツまき、等々各種を戴きました。雁擬等の種には具材が豊富に入っており美味しく、訊くと豆腐店に特別に注文して作らせているとのこと。

又、御田のほかに我々は「金平」「茶飯」を注文してみました。
牛蒡と人参を大きめに細切りして作られた「金平」は、美味しいには違いないのですが、矢張り我々の舌からすると、その味付や胡麻油の効き具合には「関東風」を感じざるを得ません。
「茶飯」のほうも又、奈良で戴くことの出来る柔らかな「茶粥」の印象とは異なり、色も味も濃く、それに添えられた赤出汁の味に到っては、言わずもがなであります。
関東とは、畢竟、我々にとっては異国なのであります。日本と云う国は、抑、少なくとも4つの国(アイヌ・東国・西国・琉球)に分けるべきであるという網野善彦の指摘 (例えば『東と西の語る日本の歴史』講談社学術文庫 参照) も、真に正しいというべきなのであります。
只、御田については、出汁そのものを戴くと多少塩辛く感じられはするものの、各種を戴くには、我々にも全く問題のない味であること、たいへん美味しく戴けることは、注記しておかなければなりません。

然し乍ら、興味深いことには、舩大工(ふなだいく)なる珍しい名字の主人の先祖は、大阪は泉大津の海辺にて船大工をしていたのだそうであります。「水くさい」=「薄味の」、本拠地であるところの泉大津から、東京は浅草の地に移り、何時から舩大工家の味が「東国風」に変化したかは、現段階では謎としておきましょう。或ひは、左様であるからこそ、我々西国の民にも馴染める御田の美味しさが供されているのかも、知れません。


◎おでん 大多福◎
台東区千束1-6-2
TEL 03-3871-2521

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最終更新日00/11/09