■きらすまめし
99.03.02
globeのケイコちゃんの出身地、大分県臼杵市は、質素倹約の気質が行き亘った土地として知られています。臼杵に降り立ち、少し町中を歩いてみるだけで、そのことは誰の目にも大いに納得できるでしょう。古い家並みはまさに古いままにそこにあり、かといって人が居ないでも朽ちているわけでもなく、そこから洗濯物が下がっている。人が覗いている。この家は古い、だから新しくしたいとか、そういう一般的な感覚がここではさらりと横流しにされていることを、苦もなく理解するでしょう。とくに商店街脇にある、味噌・醤油醸造業の「可児醤油」本社などを見つけた暁には、その確信は絶頂に達します。
かつて筑紫某氏の司会する番組にて、臼杵が「全国一貧乏な市」などと云いながら、市長が自ら市役所のトイレ掃除をしている映像が放映されているのをご覧になったことがあるかも知れませんが、そういったことにも、こんな強い地域風土が背景に有ることを思えば、苦もなく理解するに足ることであります。
さて、きらすまめしです。
初めての方には何のことか凡そ理解不能な言葉と存じますが、これはこの地方の所謂「郷土料理」に中るものであります。ここで補足すべきは、これは「きらすま・めし」という飯類に非ずして、「きらす・まめし」なる一品ものであります。手許に資料不足にてはっきり申し上げられませんが、「まめし」は「まぶす」の意、「きらす」は後述のように「おから」か何かの意かと存じます。
そう、僕自身は直接的に臼杵を知っているわけでは御座いませんので、きらすまめしについても食べたことはあれども、その謂れや地位について知っているわけではありません。
しかしその材料から鑑みても恐らくは、何らかの祝い事に絡めて供されるものではないかと想像します。鯛、そして「おから」を主材料とするものだからです。
海に面しておりますから、魚は新鮮なものが手に入ります。臼杵はふぐも有名ですが、鯛は目出度い席に重宝されたことでありましょう。宴席に並べられる鯛は、当然ながら、刺身であります。
そこまでは標準ですが、これからが臼杵の板前の腕の見せ所です。
刺身で参枚におろされた鯛は、いくら板前の腕が良かったにしても、骨を軸として薄い身を残していることでありましょう。これら一切を似込んで味を出して味わう食べ方も出来ようが、何とかこの刺身のうまさを残したまま食えないものか。
そこで登場するのが、きらすまめしなのであります。まずは「鯛の刺身の残り滓」である骨に残った身を、こそぎ落とします。実に、骨のみが残る結果となります。それをさらには、「豆腐を作った残り滓」であるおからにて和え、それらにて作った「きらすまめし」を、もう一品として供すというわけであります。
実に臼杵的に質素倹約堅実なる料理であるものとして、私は賛辞を惜しまないのであります。
■模型職人。99.5.28
近頃、週末毎に模型を作っています。もう3週続いていて、すっかり模型職人です。
先々週は「丸山・市川邸」、先週は大阪の「眼科医院計画」、今日は「氷ノ山山小屋」です。
模型は「できればよい」が原則ですので、方法を工夫するのが面白いといえばおもしろい。
立体の交差部分はMiniCADで型紙をつくる、家から鍋を持ってきてプラスチックを茹でて(^^)柔らかくして曲げる、などなど。
眼科医院計画は頑張って写真撮ったので出来映えをページに載せる積もりです。
■Jelly Piano. 99.7.18
以前から探していた、レンゾ・ピアノ(ポンピドゥー・センターや、関空の設計者)がデザインしたスウォッチを今日東急ハンズで発見し、買っちゃいました!。
"While in 1977 the exterior and interior of the Centre Georges
Pompidou had simply been reversed, with Jelly Piano the movement of the watch is in full
view."
…スウッチのページより。
「1977年にポンピドゥーセンターにおいて建築のインテリアとエクステリアがひっくり返された(構造や配管やエスカレーターが外部に露出した)ように、Jelly
Pianoにおいて時計のムーブメント(bowels)は完全に視線にさらされた。」
■ペプシ・ボトルキャップ。99.7.16
『シェルタリング・スカイ』がアカデミー賞から全く無視されたとき、監督のベルトルッチはこう言ったというんですね、「アメリカ人は感覚を刺激されることには慣れているが、感情を動かされることには、慣れていないんです」。
なるほど、とか思って、僕も「アメリカ映画なんてサ」ってスタンスでいたことが多かったのだけれど、今回のスターウォーズ エピソードIはワタクシ、純粋に、見たいです(^^;。
やっぱり最初のスター・ウォーズ公開時のブームと興奮を思い出しちゃうからでしょうか…。
そんなわけでPEPSI COLLECT! BOTTLE CAPS CAMPAIGNも楽しんでいます。
でも、そんなにしょっちゅうペプシばかり飲んでいるわけにもいかないので、現在僕のPCの上には彼ら3人がいるのみです。
あ、あと、この映画のポスターもいいですね。砂漠?に少年が一人。彼の影がダースベイダーになっているというところが芸が細かい。
■NEED FOR SPEED 99.09.02
というわけで、スター・ウォーズも凄かったのだけれども、その少し前に同じような意味でビックリしちゃったのが、NEED FOR SPEEDという、カーレース・ゲームです。
Win版とPlayStation版があるそうです。僕は雑誌にオマケでついていたWin用お試し版をやってみたに過ぎないのですが、まぁ、驚きました。無論、スターウォーズ程にまで、すごいわけではありませんが、こちらもなかなかものです。
昔からよくある、カーレースもののゲームなのですが、そのリアルなことといったら。
何がどうリアルだったか、要素をいくつか挙げましょう。
車のボディに周囲の明暗が反射するのがレンダリングされる!。
画面に見えるメーター類も、車が影に入ると暗くなる。夜走るときは当然イルミネートする。
車がひっくり返るとき、カメラアングルによっては、画面もぐるんとひっくり返る。コースのCGがとてもリアル。
石畳を走るときには、ちゃんと画面もガタガタとゆれる…。
急ブレーキを踏むと、ちゃんとコースにブレーキ痕が残る!。
急ブレーキやクラッシュのときに出る煙がリアル。
仰向けにひっくり返って動けないとき以外は、バックしてコースに戻ってから再発進する、リアル志向。
クラッシュしたあとは、ちゃんと車のクラッシュした部分が凸凹になっている!。左をこするとサイドミラーがなくなってしまう。夜間にクラッシュすると、ヘッドライトが片方ずつ消えてしまい、左右クラッシュすると郊外では月明かりの中を走らなければならない…。
走り終えると、今度はTVのF1中継さながらのカメラ・ワークで、自分の走りが再現される!。
カメラのフレアの有無といった細かいところまで設定可能!。
新しい車をサイトからダウンロード可能!。
「たかがカーレース・ゲームに過ぎない」はずなのに、アメリカ人ってすごいですね。これに比較すると日本の「電車でGO!」などはとても牧歌的に思えてしまいます。
(余談ですが日本のゲームにはどうしてアニメチックな女の子が出てくるのでしょう、不思議だ)。
■本日の格言。 99.09.16
赤黒処女袋難入塔音盤店内。
…Virgin MEGA STOREの赤と黒の袋を持ったままTOWER RECORDSに入るのはちょっと勇気が要る、という意味。村上作。
■東京で何を食べるか。 99.10.13
週末、東京に行っておりました。
新幹線でしたので、僕も土曜日のトンネルコンクリート落下の影響を受けたひとりと相成りました。ただ、上り電車は30分以内の遅れ程度で済んでいましたけれども。
東京では鹿児島料理とイタリア料理を戴きました。(九州でもないのに鹿児島の料理を食べるなんて、イタリアでもないのにイタリア料理を食べるなんて、日本人ってホント節操がないワ)。
鹿児島料理のほうは、鹿児島県東京事務所と同じビル(日比谷です)にある、半官半民のようなお店でした。黒豚のメニューが中心でしたが、きびなごやさつま揚げも食べましたョ。やっぱり、スウィートな味付けでした。「甘い醤油」というのもあるんですね。
イタリア料理は、四谷の、たまたま見つけたお店と、新宿伊勢丹のイタリアフェアの仮設レストランで食べました。
オリーブオイル漬けになって帰ってきました。
帰りの新幹線は700系のぞみでした。新神戸まで2時間45分、はやいです。
↑松屋銀座でみつけたドリアンです。
金壱万円也。
■本日の言葉。 99.09.27
生体は振動系…多種多様な振動の重合系である。それは非線形の非平衡状態を基底にしているにせよ、揺動(flactuation)の引込み(entrainment)による同調化の機制によって、マクロには各位階・各位層の準定常的な振動系を形成しつつ、それらを重合している。そのため、生体は、揺動的な不安定性を微妙に孕みつつも、全体としては相対的に安定した振動相を呈する。
…廣松渉『表情』より
■湯垢離について。 99.12.17
雑誌『サライ』の「温泉と宿」特集号を見ていましたら、南紀の湯の峰温泉について、
「熊野詣が生涯の願いだった平安期から江戸期。その湯垢離場となったのが湯の峰温泉」
と、ありました。
垢離(こり)という言葉を知らなかったんですが、調べてみると、真言宗や修験道から起こった、水で身を清めることだそうです。滝で打たれている映像を思い浮かべれば良いんでしょうか。垢離は当て字で、「川降り」の変化だともされているとのこと。
いまの季節、滝に打たれるなんてぞっとしますが(^^;、これを温泉でやってくれる「湯垢離」があるなら、もういくらでも心身を清めちゃいます、というかんじです。
これも、温泉と宗教要素との関わりの一端かな?
ちなみに湯の峰温泉は泉質も「含重曹硫化水素泉」で、最高です。
…いえ、「最高です」というのは別に法の華サンポーギョーではなくて、僕好みである、ということです。
■薄口醤油。 99.11.23
週末、アルゲリッチ音楽祭で大分に戻っていたのですが、塚原の「たべものや」さんの本棚に北大路魯山人の本があり、ぱらぱらとめくっていると、兵庫県は龍野市の話が、出てきました。勿論、薄口醤油の産地として。
…東京人は濃口醤油を用いるが、これはよろしくない。関西龍野の薄口醤油は素材を殺さず、色も活かす。ぜひとも料理人は薄口醤油を使うべきだ。という、薄口醤油礼賛の話でした。
兵庫県赤穂市には、魯山人の「星岡茶寮」の料理人だった人が今も住んでいるそうだし、魯山人自身もともと京都の人であるし、薄口醤油にはこだわりがあったのでしょう。
■ねむり目地。
大工さんらが使ういわゆる「現場用語」ってありますね。
それぞれ合理的な呼び名がついていて面白いんですが、そのなかでひとつ好きなのが、
「ねむり目地」。
「目」という語にはもともと「物と物との間、隙間」という意味があるらしくて(裂け目、割れ目、等)、ヒトの「目」が、「上まぶたと下まぶたとの間の裂け目」であるということも、きっと無関係ではないでしょう。
それで、石やタイルを敷いたり貼ったりするとき(現場用語では「貼る」よりも「張る」と書くことが多いですね)、それらの「隙間」のことを「目地」という。
で、普通は目地を開けているんだけれども、石同士を擦り合わせて、目地を0mmにすることを、「ねむり目地」にするという。
要するに、「裂け目を閉じている」=「目を閉じている」から、「眠っている」=「眠り目地」という、洒落なわけですよね。
面白いですね。
■北京行きと、中国語の特徴について。00.2.8
ムラカミは明日(00.2.9)より土曜日まで、北京に行ってまいります。
◎故宮
…『ラストエンペラー』でおなじみ。そのスケールもさることながら、柱が真っ直ぐに立っていない(内倒しになっている)こと、寄棟の屋根を意図的に誇張していること(南北と東西の屋根勾配を変えてそれを合わせるというスゴイワザをやっている)などを確認できれば…。
◎いわ園
…世界的に有名な庭園。ここは江南の風景を作った庭園ということなので、江南がどういう感じか知らないけど、きっといわゆる北方ではないと思うのです…要するに、中国の建築でも北方と南方は違うわけでございます。だからここに行けば、北方にいながらにして南方建築が見られる、一粒で二度美味しい、ではないかと想像しているわけです。違うかも知れないけど。
◎四合院。
…(風水的にも考慮された)伝統的な住居形式です。魯迅記念館などはこの建築を記念館にしているらしいし、この形式の建物で伝統的な土産物を扱う店もあるそうです。
などを見てこれればと思っております。
☆
この3週間、白水社の『CDエクスプレス 中国語』を買ってきまして、ちょっと勉強もしました(^^)。
中国語ってとても合理的に出来ていて、とくに漢字が読める日本人にとっては入門が楽な言葉だと思いました。
中国語の特徴としていくつか気付いたこと…
◎基本的に構造が簡単。
例えば
●<Ni>好。(ニーハオ)。
というのは、英語で言うと
■You good.
なんですわ。be動詞に相当するものが要らず、形容詞だけで述語になる。
基本的には英語風のS-V-Oの語順だけど、
●晩飯在<waibianr>吃。
■晩御飯は外で食べます。
というふうに、目的語が主題化し、日本語風の語順になることもある。
疑問文にするには最後に<ma>をつければよいし、男性名詞・女性名詞もなけりゃあ、動詞の活用もなけりゃあ、"3単現のs"もない。
なんと覚えやすい。日本人にとってのネックはやはり、発音かな。
◎「反復疑問文」の語感が多い。
●<Ni>「学不学」中文?
■きみは中国語をやらないの?
…「学」と「不学」を並べることで疑問の意図になる。
●<Ni>的中文「越来越」流利了。
■君の中国語は「ますます」流暢になった。
●「好是好」、可是…
■「いいことはいい」が、しかし…
これらは反復疑問文ではありませんが、語感が似てます。
◎「複合動詞」…動詞に特定の語を繋げることで、意味が広がる。
●<Ni>「写完」信了<Ma>?
■あなたは手紙を「書き終わり」ましたか。
●快把照相机「拿出来」<ba>。
■早くカメラを「(中から)取り出して」よ。
◎語気を弱める方法が多い。
●清給我「看看」那个。
■ちょっと私にそれを見せてください。
…「見る」(看)を重ねて言うことで、「ちょっと」というニュアンスをつける。
●<ba>
…命令文の語気を弱める。先程の「早くカメラを出してよ」参照。
●没有<a>。
■ありませんねぇ。
…<a>をつけることで、「没有」(ない)の語気を弱める。
などが面白いとおもいました。
ではいってきます。
■昨日の昼食のはなし。 98.6.11
週に一度は行く定食屋は、揚げ物の類が脂ぎっていて重く、味噌汁もなんというか人工的な味であるし、そんなに美味しいというわけではないのだけれど、700円でそれらしいメニューが食べられる、近所にあまりない店という意味において利用している。
昨日そこで刺し身の定食を摂っていたら(…こちらも、コストパフォーマンスはあるとはいえ、ネタ自体がなんだかくたびれたようなもので、お勧めはできない)、隣の席に制服を着たOL3人衆。「リアルな」OLとはきっとこんな感じなんだとか思いながら見るともなく見ていたら、どうやら彼女らはここに来るのは初めてらしく、そして皆さん天ぷらの定食をたのんでいる。衣が重くて途中取り分けて残してしまいそうな天ぷらのはずなのに、食後に彼女らの一人が感想を述べた。「おいしかった、これに塩がついていたらもっといいね」。
たまたまその日の天ぷらの具合が良かったのかもしれない。あるいは初めての店だから、絶対的な判断ができにくかったかもしれない。でもそれにしても、もっとおいしいものを食べましょうよ、おじょうさん、と思ってしまいました。
これはきっと大事なことだと思う。とくに女性にとっては。男が食べ物に口うるさいことは《芸》にはなっても、必要条件ではない。いつもカツ丼かカレーしか食べない男も構いはしない。でも女性にとってはそういう身体的な感覚ってきっと大事なこと。食べること、スポーツ、入浴、景色を眺めること、肌や身体で感じるものごとに敏感であること。 |