科学
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新科学対話
アスキー出版局
竹内郁雄
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コンピューターの登場によって、科学者に新たな道具があたえられ、
面白いことが起ころうとしてる。今まで紙の上の計算で人手に頼っていたものを、コンピュータの計算能力で力ずくで多量にこなしたり、
コンピュータの中にシミュレートされた環境での研究によって本物の環境を予測したりできるようになった。
簡単な計算を繰り返していくと奇妙な振る舞いをはじめるカオスなどは、コンピュータの出現なくして研究不可能な分野の典型であろう。
コンピュータの専門家が各分野の専門家と対談するこの本のなかで、計算機屋の著者が異分野に首を突っ込んでコンピュータで何か面白いことが起こっているんじゃないのかと尋ねたり、
コンピュータを使うとこんな面白いことができるかもしれませんよ、とそそのかしたりしている。
異分野どうしの融合が新しい成果を生めばいいのだが、
ページ数の限られた対談では、そこまで突っ込んだ議論には及ばなかったようだ。
全体的に食い足りなさが残る。
特に第一部は著作物も多数出している有名人の方々との対談なのに、
今何をしているのかという型通りの話に終始している。
彼らの書き物への道標としての役割しか果たしていないのは、もったいないだろう。
立花隆志さんが、インタビューをするときにはその相手の出している本は必ずすべて読むと言っていた。
そうでないと、相手の本音や突っ込んだ事は聞き出せないのだそうだ。
今回の対談集も第一部にはそのことが言えると思う。
本書は三部構成になっていて、第二部ではネットワークについて、
第三部ではメディアについての対談である。
メディア論の部分では、メディアにあふれている、そこで商売しをしている売らんかなの商業主義の方たちの言葉とは裏腹の将来性についての、
あけすけな話が聞けて面白い。
電子メディアが知的財産権とか情報の値段とかを壊してアナーキーになるかもとか、
ネットはグローバル化ではなくローカライズを加速するとか、
はたからネットを見たときに素直に感じる事を言っている。
反対に、当たり前の事しか言っていないようでもあるが、私は楽しめた。
特に一番最後のメディア論は、マクルーハンのメディア論を現代に演繹したようで、
電子メール・メディアの持つメッセージの話として興味深い。
もしかしたら、こういった対談集は、その人物の背景にある情報を学習した後に読んだ方が違った面が見れて面白いのかもしれない。
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新版アインシュタインを超える
講談社ブルーバックス
ミチオ・カク ジェニファー・トンプソン
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副題は「超ひも理論が語る宇宙の旅」。
量子力学の世界ではクォークが発見された後、このたくさん現れたクォークは物質の究極の構成物とは認められず、クォークよりさらに小さな世界を説明する理論が必要とされてきた。
しかし、現実的にそんな世界の現象を見ることはいくら巨大な加速器を造っても不可能になってしまった。
つまり、究極の理論をつくっても実証できないところまできてしまっているのだ。
そんななかで、超ひも理論が注目されているそうだ。
最初、超ひも理論は数学者のお遊びであるとか非難されていたようだが(実証性がない世界だからね。)
すべての力を統一する大統一理論の候補となり、俄然有力視されるようになってきている。
もし、この理論が正しければ、まさに究極の理論になるはずだ。
しかし、この理論はもう私の理解の範疇を超えている。
数学的なテクニックから生まれた理論なので、それをイメージして直感的に理解することができないのだ。
あなたには、10次元の宇宙を想像できるだろうか。SF的な響きでとてもわくわくする話ではあるが・・・。
数式がいっさい出てこないので読みこなすのは「ホーキングの宇宙論」よりはやさしいかもしれない。
でも、その話は十分に破天荒である。読んでもわかったつもりには全然なれないが、そのての話に目が無いかたは読んでみはどうでしょうか。
超ひも理論の最新の話題とそれまでの歴史を知ることができる。
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