記者会見では以下のように語る。「普段やっている鉄筋本数よりかなり少ないなというのは感じたんですよ。計算書を調べてみたら、地震の時にかかる『水平力』、横の力ですね、これが4分の1にしてあったんですね。何でこういうことをやるのかなというのが、正直言ってその時点ではわかんなかったですね」「姉歯建築士のやり方は、大変作為的で悪意を感じた。わざと操作しているような感じがした」。
一方、参考人質疑では当初は偽造の認識はなかったとする。「図面と計算書を見比べて発見した。図面を見ておかしいとは思ったが、偽造とはすぐに気付かなかった」「その時点ではそこまで深くこの事件が大きいとも思いませんでしたし、千葉の方で一人でやっている構造事務所さんが外注に出してやってしまったという話だったので、そこまでの認識は、あの場所で皆さんなかったと思います。私もなかったです」。
この点について以下の疑問が呈されている。「渡辺氏が当所、マスコミには水平力1/4にしていると説明しているが、構造設計者が水平力の数字を書き換えるのは特別な構造計画の場合に限られる。単独で存在するほとんどの建物は水平力を変更することはない。故にこれだけで偽造であることはわかる。何故、参考人質疑で「偽造と気付かなかった」と変わったのか?不明?」(荻原幸雄「耐震強度偽装問題時系列」建築よろず相談2005年12月23日)。
実際、単なるミスならば、わざわざ日本ERIに調査を依頼する必要はない。渡辺代表は以下のように証言する。「技術的な内容を説明した後に、これを他でやっていたら大変なことになりますよ、調べてみたらいいんじゃないですかということを言いました」(参考人招致)。
渡辺代表は総研も批判する。渡辺代表が2004年3月に偽装を指摘した際、経営コンサルタント会社「総合経営研究所」の幹部も説明を聞いていたことに触れ「(総研は)過去の物件を確認できる立場であり、調べる責任があった」と述べた(「耐震偽装発見の社長から聴取=自民チーム」時事通信2006年1月11日)。総研に調査する責任があると主張している点から、赤羽橋物件の偽造が単なるミスとの認識ではなかったことになる。
渡辺代表の矛盾の背景には何らかの圧力があるとの推測がある。「自ら報道取材や参考人招致に対応し、発言内容が二転三転する状況には不自然な作用が働いているとも推測できます」(イーホームズWebサイト「グランドステージ稲城について偽装の圧力をかけた者(アトラス設計渡辺社長の音声証言)」2006年1月15日)。
渡辺代表は日本ERIが隠蔽したと非難するが、計画変更確認の構造計算書と構造図面を設計し差替えたのは渡辺代表自身である。日本ERIが偽装を公表しないならば技術者として、その怒りをマスメディアに公表すべきであった。それでこそ命を守る真の技術者である。
マスメディアの取材には当初から不審感を抱いていたと語る。総研や木村建設が姉歯元建築士の起用を進めたことに対し、「通常、施工業者が構造計算をする建築士を連れてくることはない。おかしい」と感じたと社長は振り返る。日本ERIから建築確認書が届いても、「不安があった」ため、アトラス設計に再点検を依頼したとする(「耐震強度偽造問題/解明できるか、複雑な構図」東奥日報2005年12月2日)。
その後、Webサイトでは「当時はまさか悪意があっての偽造とは思いませんでした」としている(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「12月7日の衆院国土交通委「建築物耐震強度偽装問題」参考人質疑において、当社名が実名にて発言されたことについて」2005年12月8日)。ここでも渡辺代表と軌を一にして偽造の認識を否定する。
千葉設計は初めて衆院国土交通委員会参考人質疑で初めて社名が明らかになった。これについて千葉設計は「当社としては、これまでは、横浜市の設計事務所ということで匿名の報道で通してきたものが、突然に公表されたことにひどく憤りを覚えています」とコメントした(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「12月7日の衆院国土交通委「建築物耐震強度偽装問題」参考人質疑において、当社名が実名にて発言されたことについて」2005年12月8日)。
構造計算は木村建設の意向で平成設計の肩書きで姉歯建築士が担当した。千葉設計にとって姉歯建築士は初めての取引であった。姉歯建築士が担当することに決まった協議は2003年11月10日に千葉設計において行われた。この場で最も多く発言したのは総研の担当者で、姉歯建築士はほとんど話さなかった(「木村建設などにも「おかしい」と通告 神奈川の設計会社」朝日新聞2005年12月2日)。姉歯建築士は平成設計の建築士であることを示す名刺を使っていた。
千葉設計は協議について以下のように説明する。「施主紹介の建設業者と、その紹介で木村建設、平成設計2名(姉歯氏は平成設計の社員ということで来社しました)、総合経営研究所が当社に来社しました。当日の説明は木村建設の工法を利用すると、工期や工事費にメリットがあるので、今回の工事でその工法を採用できないかとのことでした。そのために平成設計がノウハウを持っているので構造計画(計算も含めて)で使ってもらえないかとのことになり、本来ならこれまで計画段階から構造を担当していたアトラス設計に依頼する予定でしたが、事情を説明し替わってもらうことになりました」(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「12月7日の衆院国土交通委「建築物耐震強度偽装問題」参考人質疑において、当社名が実名にて発言されたことについて」2005年12月8日)。
2003年12月5日、姉歯元建築士、構造計算書納品。千葉設計は丸投げであったことを認めている。「平成設計姉歯氏より構造設計図書を納品される。期日の問題もあり構造図書の内容は確認せず、即時、日本ERIへ確認申請を行なう」(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「偽装発見までの経緯書」2006年1月16日)。千葉設計は2004年1月7日、日本ERIから建築確認済証を受領した。
姉歯秀次元建築士は以下のように証言する。「その前の段階で、北和建設というところに、総研四ケ所さん、四ケ所さんとですね、だれだったかな、篠塚支店長と私と三人で北和建設の安藤氏というところに行きまして、打ち合わせをしました。そのときに、千葉設計で打ち合わせしましょうということで、そちらに出向いたと思います」(第163回国会国土交通委員会第11号、2005年12月14日)。
ここで打ち合わせ場所を提供した北和建設が問題になる。赤羽橋物件の建設に関係した企業と考えるのが自然である。千葉設計によると、木村建設、平成設計、総合経営研究所は「施主紹介の建設業者と、その紹介で」来社したとする。この説明が真実であるならば北和建設は赤羽橋物件の施工業者で、木村建設らを千葉設計に紹介したと考えるのが自然である。
北和建設という社名の会社は全国に複数存在するが、東京都港区にマンションを建てるような企業としては北和建設株式会社(京都市下京区)があげられる。この北和建設は渋谷区に東京支店を設置している。
北和建設で打ち合わせしたとの姉歯証言を受けて、馬淵澄夫委員は「今お話で、この十一月の十日以前に、北和設計で総研四ケ所氏とそして篠塚支店長とお会いになられていると」とまとめている。ここでは北和建設が何故か北和設計に変わってしまっている。株式会社北和設計(奈良県奈良市)という企業は存在するが、東京での活動は見られない。従って馬淵委員の聞き間違えで、北和建設が正しいと考える。
第163回国会 国土交通委員会 第11号(平成17年12月14日(水曜日))
総研は事前打ち合わせを以下のように説明する。総研によると総研・木村建設関与のトリガーは元請会社となる。元請会社と総研や木村建設の関係も調査する必要がある。
「この打合せの趣旨は、元請会社の方から工期短縮工法の話を聞きたいという話が総研に対してあったため,担当として四ヶ所が赴きました。この時点で設計会社は、元請会社の方で「千葉設計」に依頼する予定であり、仮に平成設計が設計業務を行うとしても新たな工法に基づく構造設計のみを行う(意匠設計は千葉設計で行う)予定でした。実際に設計図面(意匠)は概ねできておりました。従って構造設計に関する話が中心となることから、念のため構造計算の担当者を同席させるように四ヶ所から平成設計に指示を出しました。姉歯建築士が同席するに至ったのはそのためです」(株式会社総合経営研究所社内調査委員会「建築物の構造計算書偽装への関与について 中間報告書」2005年12月13日)。
スカラコート麻布十番は鉄筋コンクリート造10階建てである。千葉設計Webサイトの「Works マンションVol.3」に紹介されている。スカラコート麻布十番のオーナーはパン製造業の経営者で、既存の建物(工場、事務所、社宅)を壊して建替えたという。一階の店舗にパン工場と喫茶スペースを作り、二階を一部事務所にして、上階を101戸の学生マンション(ワンルームマンション)にした(北和建設株式会社Webサイト「最近の新築物件」)。
千葉設計は赤羽橋物件について2005年3月下旬竣工と説明する(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「偽装発見までの経緯書」2006年1月16日)。スカラコート麻布十番も2005年3月に竣工しており、合致する。
渡辺代表は検証した経緯を以下のように証言した。「当初、私の会社でやる予定でした。それを途中から姉歯さんということになったので。姉歯さんは一人でやっているということで監理は受けないということだったので、それが私にまた監理で回ってきました」(参考人招致)。
千葉設計は以下のように説明する。「念のため姉歯氏の作成した計算書等の検証を本来の構造設計者に予定していたアトラス設計に依頼したところ、その内部に不正な部分が多数見つかり、このままでは構造上大きな問題が発生することを確認しました」(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「12月7日の衆院国土交通委「建築物耐震強度偽装問題」参考人質疑において、当社名が実名にて発言されたことについて」2005年12月8日)。
2004年3月8日、千葉設計は関係者を召集し、渡辺代表が姉歯元建築士に誤りを問い質した。木村建設の篠塚東京支店長、平成設計の薮常務、徳永氏、総合経営研究所(総研)の四ヶ所氏が同席した。但し千葉設計は「木村建設は同席していない」と主張する(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「偽装発見までの経緯書」2006年1月16日)。渡辺社長の不正の指摘に「建築確認が下りているのだからそんなことはない」と反発する声も出たという(「一年半前、偽装を通報」しんぶん赤旗2005年12月3日)。
渡辺代表は以下のように説明する。「こことここがおかしいですから、(姉歯氏に)『訂正してください』と言ったら、姉歯さんも最初『うっ』という感じで、一瞬ですけどね。すぐに『外注さんに任せちゃったんで、僕よくわかってないんです』という言い訳をして、落ち着きがない感じがしたんですよ、座ってて。ちょっと『ぴくっ』という感じですかね。その場で(姉歯氏は)『間違ってます』っていうのは認めましたし、『訂正します』という形で」。
姉歯元建築士は訂正を約束したが、偽装の構造計算書を訂正で糊塗できる筈もなかった。姉歯氏は以下のように証言する。「まあ十日前後を約束、たしか十日か二週間ぐらい約束、期限を切ったと思うんですが、その後、最終的には自分の判断で、これはもうできないと思いましたので、一・〇に持っていくことは、その状態から持っていくということは相当鉄筋量がふえるということになりますので、私の方から、この物件からおりるということで、おろさせていただきました」。
一方、総研中間報告書は以下のように述べる。「四ヶ所は姉歯建築士が、特にチェック後の納期を守れるかが心配になり、後日、元請会社次長と電話で率直にその旨を話したところ、その次長も同様の心配をしていたため、紹介者としてこれ以上の迷惑を元請会社にかけるわけにはいかないと判断し、本件から平成設計に対してこの仕事からおりるべきだと伝え、また元請会社次長にもその旨を伝えました」(株式会社総合経営研究所社内調査委員会「建築物の構造計算書偽装への関与について 中間報告書」2005年12月13日)。
千葉設計は以下のように述べる。「姉歯氏も誤りを認め構造設計の是正を約束する。期日を1週間とした。途中、姉歯氏より期間延長の申し入れもあったが、2週間ほどしても連絡がないのでこちらより督促したところ、一方的に「この件から手を引く」ということで逃げてしまった」(株式会社千葉設計代表取締役千葉孝「偽装発見までの経緯書」2006年1月16日)。
これが事実であるとすれば認識を大きく変える必要がある。誰の言葉が正しいのか分からなくなってきた。アトラス設計の渡辺代表は偽装を告発するために訪れた月光仮面ではないことになる。イーホームズに濡れ衣を着せることで偽装問題を隠蔽させるために、黒幕から派遣された刺客であったのではないか、との新たな疑惑が浮上する。
これまでも藤田社長は「ヒューザー小嶋進社長の恫喝」や「日本ERIの偽装隠蔽」を暴露してきた。重要なことは藤田社長の暴露が少なくとも大筋では事実に基づくものであることである。
今般の偽装事件の背景について重要な情報提供:「きっこの日記」他
今回の事件はそもそも、アトラス設計の渡辺氏という構造設計士が10/18に弊社の社員に電話で、「北千住」の物件に構造的に疑義があると言う情報を伝えたことが、10/20の内部監査にヒューザー社の申請物件の内から「北千住」の物件を選択した大きな理由です。10/20の内部監査の結果、膨大な設計図書のうち理論的に不可解な計算数値があることに気づき、詳しい調査が必要であるという報告が私に上がります。 この動きとは別に、翌日、渡辺氏が来社して、当社の構造担当部長と課長に対し、「北千住」の物件で具体的な偽造の箇所を指摘しました。重要なことは、渡辺氏は、この北千住の物件は「計画変更確認」を行えばよいと言ったのです。(一度出した確認が偽造と判定されたら取り消さなければなりません。それを計画変更するということは、公文書偽造になるのです。渡辺氏は、約1年半前のH16.4に日本ERIの「港区赤羽根橋のワンルームマンション(H16.1.7確認)」で偽造を指摘し、しかし公表に至らずに同年4月に計画変更してしまったことを隠蔽したと言っていたのだから、この時、なぜ計画変更すればよいと言ったのか、建築士として不自然です)。 しかし、さらに重要なことは、この日、渡辺氏は、2年半前の「グランドステージ稲城(H15.2.28確認、H16.2.18完了検査)」の物件も偽造であることを指摘したというのです。この物件は、完了検査がH16.2月に行われ、今では当然に入居済みです。この物件の工事は木村建設ではなく、志多組、設計はスペースワン(スペースワンの井上氏は、10/27の会議の席上、船橋の物件は偽の写真をつけて合格にすればよいと言った人です。小嶋氏がそれがいいと答えたのです)。そして、渡辺氏は、この物件を公表しなければマスコミに通報すると言ったという事です。弊社からは、北千住の物件は関係者を一度呼んで偽造に至った事実を確認の上で役所に通知して不適合として工事を取り消してもらう、稲城の物件は、資料を倉庫から取り寄せた内容を調査の上適切に判断すると回答しました。 私は、渡辺氏の12/7の参考人招致における言動に不自然さを思い(鈴木氏をとても意識していました)、改めて、担当者に10/21に渡辺氏が何を言ったのかを聞いた所、上記の通りだったのです。これを受けて、私自身が、12/15にアトラス設計の渡辺氏を訪ねて、事の真偽を確かめました。この時の会話は録音もして、複数の信頼できる方にコピーも渡しました。(警視庁にも通報しております) 渡辺氏は、確かに、10/21に北千住の物件を計画変更すればよいといったとのことでした。建築士のあなたが、公文書偽造となるそんなことを何故言ったのかを問い詰めると、手が震え顔が引きつりました。次に、なぜ2年半も前のことを知っていたのか?知っていたのならそのときに通報すればよかったのではないか?稲城の物件は木村が関与していないのだから、誰が姉歯に圧力をかけたんだ?と問い詰めると、「ヒューザーとスペースワンのセットだ」と言明しました。さらに、このセットで複数棟同様の偽造をしてきたとも言いました。私は渡辺氏に対して、あなたが何故そんなことを知っているんだ?1年半前にERIではじめて知ったというのは嘘じゃないか、ずっと偽造がされてきたことを知っていたんじゃないか、というと渡辺氏は興奮して立ち上がり、所員の者3名に体を押さえられていました。この証言を得たので、私はその場を去りました。 渡辺氏の話などから、志多組は宮崎県の地場最大の中堅ゼネコンです。熊本の木村建設のように、宮崎の志多組というような関係で九州圏では競争が激しい関係だそうです。木村と姉歯氏の関係のように、志多組と渡辺氏という仕事の依頼を受ける関係のようなものです。 (中略) いずれにせよ、10/27以前の段階で(弊社が偽造を指摘する以前に)、姉歯氏や木村建設、総研以外にも、ヒューザーも志多組も渡辺氏もスペースワン他設計事務所も日本ERIも、偽造がずっと行われてきたことを知っていたのです。確信犯です。日本ERIの鈴木氏は、東大工学部卒で国交省の高級官僚に同窓が多くいると聞きます。1年半前に日本ERI社は株式公開直前でした。3年前に業務停止を受けて公開が延期していたので、偽造の事実を公表できなかったのかもしれません。被害が拡大した大きな原因は日本ERIに責任があるはずです。私は、国土交通省に、日本ERI社の公文書偽造の調査と処分を徹底的に行っていただくように既に要請しています。 |
藤田社長は人気ブロガー「きっこ」にも「最初に偽装を見抜いたとされる渡辺朋幸設計士の“ウソ”を告発する仰天メール」を送付した(「偽装告発ブログ“きっこ”って誰?“黒幕”スクープ」ZAKZAK 2006年1月4日)。
渡辺代表は志多組(宮崎市)からの依頼でグランドステージ北千住の構造を調べたと説明する。志多組は鉄筋量に不審を抱き、渡辺代表に調査依頼したとする。「施工会社の志多組さんから、北千住の物件で鉄筋が少ないので調べてほしいと依頼を受けました」(参考人招致)。グランドステージ北千住の施工者は未定であったが、渡辺代表は志多組を施工会社と明言している。志多組は少なくとも見積もり候補であったと考えられる。
志多組からの依頼ならば志多組へ返答し、志多組から施主(ヒュ−ザー)や設計事務所へ然るべき連絡するのが普通である。もし施主や設計事務所が動かなければ、工事を止める等、志多組として手段はあった筈である。
何故、渡辺代表は単独でイーホームズを訪問したのか。渡辺代表の行動には疑問が残る。グランドステージ北千住について渡辺代表は志多組から私的に構造の確認を依頼されただけである。渡辺代表が積極的に係わることではない。渡辺代表は港区赤羽橋の物件について日本ERIに情報提供したが、その際は構造設計を姉歯建築士から引き継いで新たに担当したという経緯がある。渡辺代表は港区赤羽橋の物件では構造設計担当者という立場であるが、グランドステージ北千住は私的な依頼を受けて構造の確認をしただけである。検査機関との接点は何もない。
私的な依頼を受けて調査しただけならば、当事者の意向に沿って、当事者を前面に立てて行動するのが自然である。渡辺代表がイーホームズに行くとしても、メインは志多組で、それに同行する形になるだろう。建築確認申請の関係者の指摘と非関係者の指摘では検査機関としても受け止め方が異なる。検査機関にしても施工する立場の人間の話ならば真剣に聞くだろう。もし事件性を感じたならば尚更、外部の人間である渡辺代表が表に出ることではない。
「一構造設計士が、通常の業務では命令系統下に属するデベロッパー(ヒューザー)もゼネコン(志田組)も意匠設計事務所も通さずに、直接に指定確認検査機関に対して、建築主やゼネコンに大きな損害が生じる、または大臣認定の構造計算図書の偽造という建築行政を揺るがす大事件を単独で通知するということは難しいものだと思います」(イーホームズWebサイト「グランドステージ稲城について偽装の圧力をかけた者(アトラス設計渡辺社長の音声証言)」2006年1月15日)。
志多組は九州では木村建設のライバルとも言われていた建設会社である。志多組が首都圏でのヒューザーからの受注を増やすためには、ライバル企業である木村建設は邪魔な存在であったとの考えも成り立つ。
渡辺代表は何故、既に確認が下りた物件に対し、取り消しではなく、計画変更を持ちかけたのだろうか。計画変更確認を指南したならば隠蔽を誘うことになる。グランドステージ北千住が計画中止になったところで、渡辺代表には何ら実害はない筈である。
イーホームズによると渡辺代表は事件公表後の11月21日にも来社した。藤田社長と渡辺代表が会うのは、この時が初めてである。藤田社長は以下のように述べる。「渡辺氏は、帰り際に、にたにたしながら、「イーホームズは嵌められたんですよ」と語った」(イーホームズ株式会社「弊社が認識する偽装事件の発覚の経緯」2005年12月31日)。
渡辺代表が偽装を見破った経緯については以下のように説明されている。2004年3月に赤羽橋の物件で問題を認識し、2005年10月にグランドステージ北千住で偽造を確信したとされる。
参考人招致で渡辺代表は以下のように証言した。「一度目に気づいたのは、一年半前に港区の物件で、私が意匠事務所さんから構造の監理を委託されました。そのときに、図面と計算書を見比べて発見しました。二度目に発見したのが、施工会社の志多組さんから、北千住の物件で鉄筋が少ないので調べてほしいと依頼を受けました。図面を見ておかしいと思ったので、計算書を取り寄せてもらうようにお願いして、そのとき、計算したのが姉歯さんだと聞いて、とても驚いた次第です」。
上記が事実ならば渡辺代表はグランドステージ稲城の偽造を知ることはできない。グランドステージ稲城は2003年2月28日付で建築確認され、赤羽橋の物件よりも前である。赤羽橋の物件以前から偽装を知っていたことになる。仮に偽装を知っていたとして、イーホームズに建築確認申請されたことまで、どのようにして知ったのだろうか。そして何故、イーホームズに対し、グランドステージ稲城の偽装に言及したのだろうか。グランドステージ北千住の偽装指摘が目的ならば、他の物件について「マスコミへ通報する」と口にするのは不自然である。
2003年3月、志多組がヒューザーから「グランドステージ稲城」の施工を請け負う。設計はスペースワン建築研究所、構造設計は姉歯秀次が担当した。
2003年12月、志多組がヒューザーから「グランドステージ川崎」の施工を請け負う。設計は株式会社下河辺建築設計事務所(代表取締役・下河辺隆夫)、構造設計はアトラス設計・渡辺朋幸が担当した。遅くともこの時に志多組と渡辺代表が知り合っていたと思われる。 下河辺建築設計事務所はグランドステージ船橋海神の設計も担当している。その構造計算は姉歯建築設計事務所に発注しており、構造計算書偽造が判明している。
2004年1月、日本ERI、賃貸マンション(東京都港区赤羽橋)の建築確認を下ろす。設計は千葉設計、構造設計は姉歯建築士が担当した。2004年3月、渡辺代表が構造設計に問題があることを姉歯元建築士に通告する 。
2004年4月、渡辺代表が日本ERIに対して姉歯建築士の偽装を通告する。しかし日本ERIはミスとして処理してしまう。
2005年10月6日、グランドステージ北千住の建築確認が下りる。建築主はヒューザーで、設計はスペースワン建築研究所、構造設計は姉歯秀次が担当した。グランドステージ北千住の施工者は未定とされていているが、志多組は少なくとも候補になっていたものと思われる。志多組が渡辺代表に姉歯建築士作成の構造設計書について調査依頼し、偽装が発覚する。
10月18日、渡辺代表、イーホームズに電話して、グランドステージ北千住に疑義があることを伝える。10月21日、渡辺代表、イーホームズを訪問する。グランドステージ北千住の偽造箇所を指摘し、計画変更確認を提案した。加えてグランドステージ稲城も偽造であると指摘した。
渡辺代表がいつ姉歯元建築士の偽装を知ったのか。これまでは2003年12月、渡辺代表がグランドステージ川崎の施工を通じて志多組と知り合った際、既に志多組から姉歯元建築士の偽装を聞いていたのではないか。藤田社長の証言を下に時系列で整理すると、上述のようになる。
同旨の見解が表明されている。「アトラス設計はここで志多組からGS稲城の姉歯氏のこと若しくは構造図の鉄筋量の違いなどを聞いたのではないか?と推察する。ここで疑念を感じたならばアトラス設計が構造監理をしたならば道徳的に建築主ヒューザーに伝えるべきであった」(荻原幸雄「耐震強度偽装問題時系列」建築よろず相談Ver.10 2006年1月5日)。
「会話内容」 A(同席した社員) 「あの時は、あれ(グランドステージ稲城のこと)、志田組さんが稲城市役所の(所轄の工事)をやったんだよね」 藤田(F) 「志田組の時は木村建設が下請けに入ってるでもなんでもないんでしょ?」 A 「これは協力業者だからね」(志田組はヒューザーの協力業者という意味) 渡辺氏(W)「稲城の物件の時は志田組がやったんだけど、それを姉歯さんが構造設計をするっていうのがあった」 F 「だから、姉歯さんは、ほら(偽装の圧力を)、木村建設の東京支店長に圧力をかけられたと言っていたから、志田組の場合は(誰が圧力をかけ)何でやったんですか?」 W 「それはスペースワンと・・・。その時は、ヒューザー、スペースワン、セットなんです。セットなんです」 |
イーホームズWebサイトでは渡辺代表の会話について以下の疑問を呈する。「アトラス設計の渡辺氏が、何故、2年半も前の稲城の物件について偽装事件の組織的背景に関する情報を知っているのか大きな疑問です。自分一人で調べられるわけがありません。具体的な内容を誰かから聞いたに違いありません」。
「渡辺氏と鈴木社長とは目礼をし合っていました。確認検査機関最大手の日本ERI社の鈴木社長が渡辺氏と挨拶しあう中なのか?そもそも渡辺氏が日本ERI社名を口にしたことで、この場に招致されたのですから、渡辺氏を面白く思うはずがありません。参考人答弁においても渡辺氏は常に鈴木社長に視線を走らせ、日本ERI社に対する言葉を慎重に選んでいました。それまで、報道の取材に答えて、1年半前の日本ERI社で偽造が隠蔽されていたことを述べていた姿勢と打って変わって、日本ERI社を擁護する言葉を述べたのです」(イーホームズ株式会社「弊社が認識する偽装事件の発覚の経緯」2005年12月31日)。
渡辺代表が藤田社長に初めて会ったのはイーホームズ訪問時である(2005年11月21日)。最初に藤田社長から「お宅誰? 何しに来たの?」と言われたとする。そして「あなた電車に乗るときホームの端に立たない方がいいですよ…私も弁護士に言われているから気を付けてください」と言われたとする。
藤田社長がアトラス設計を訪問した際は、「どうして稲城の物件のことを知っていたんだ」と高圧的な態度で迫られたとする(2004年12月15日)。渡辺代表は「参考人招致では、聞かれたことにだけ答えるように言われたので言えなかった。本当は聞いてほしいことがたくさんあった」と語る。
渡辺代表はイーホームズがWebサイト等で公表している内容と事実が異なっている点を指摘したとされる。しかし、イーホームズから提起されている疑惑には答えていない。渡辺代表の疑惑とは以下を指す。
第一に赤羽橋物件の建築確認では耐震強度が不足しており、違法であるにもかかわらず、計画変更で糊塗したこと。
第二にグランドステージ北千住の偽装を指摘した際、偽装の隠蔽につながる計画変更を提案したこと。
第三に自身は関与せず、知る筈のないグランドステージ稲城の偽装を知っていたこと。
「藤田に恫喝された」との記事は全く根拠のない嘘です。 私(藤田)が、渡辺氏を恫喝する理由は一切ありません。初対面の人間に、そして、構造計算図書の偽装という事実を伝えた人に対して、乱暴な口調で驚かせる意味がどこにあるのでしょうか?あり得ないことです。 何故渡辺氏が明らかな嘘とわかるような発言をするのか、何故このように弊社の印象を悪くする記事を書くのか不思議でなりません。スポーツ報知は読売系のスポーツ誌ですから、読売新聞と歩調を合わせた意図的な記事と思います。
念の為に、事実と違う点を以下に列挙します。
2)「電車に乗る時、・・・」の発言は、この当時、私は確かに弁護士等から身辺警護に注意を払うように注意されておりましたので、私自身が弁護士からそう言われていると言ったのです。そして、渡辺氏が帰る際に、偽装の事実を弊社に指摘したことで事件が大きな社会問題になっているから、「あなたも身辺警護などされるとよいですよ」と伝えたのです。
3)渡辺氏が10月21日に「グランドステージ藤沢」に偽装の疑いがあることをイーホームズ側に伝え早急な対応を求めた、とありますが、このような発言は一切ありません。渡辺氏はこの日は2年半前の稲城の物件と、北千住の物件について偽装を指摘したのです。 いずれにしましても、アトラス設計の渡辺氏の言動には、12月上旬に報道等に答えていた内容や、12月7日の参考人招致、12月15日に訪門した時の言葉(「稲城の物件で姉歯氏に偽装の圧力をかけたのは、「ヒューザーとスペースワンのセット」、「このセットで複数棟(の偽装)をやってきた」)など不自然なものが多いです。 |
渡辺代表による藤田恫喝発言は自民党ワーキングチームのヒアリングでなされたものとされる。管見の及ぶ限り、渡辺代表は他の場所で同種の発言はしていない。これまでもグランドステージ北千住の偽装してきについてイーホームズの調査能力を批判していた。しかし、藤田社長の恫喝云々は指摘していない。
つまり、藤田恫喝発言は自民党ワーキングチームから出たものである。耐震強度偽装問題の解明に消極的と疑わざるを得ない自民党からの情報だけに慎重に吟味する必要がある。そもそもワーキングチームの存在自体が怪しい。Webサイトをジオシティ上に構築している(http://www.geocities.jp/taisin_gisou/)。自民党のWebサーバ上には載せていないということである。ヒアリングの議事録は一切公表していない。
しかも藤田恫喝発言を報道したのは報知新聞一社のみである。ワーキングチームが渡辺代表をヒアリングしたこと自体は時事通信と共同通信が記事を配信している(「耐震偽装発見の社長から聴取=自民チーム」時事通信2006年1月11日、「指摘放置で被害拡大 自民聴取に設計事務所代表」共同通信2006年1月11日)。しかし、これらの記事には藤田恫喝発言は言及されていない。スポーツ紙一紙のみが報じているだけである。自民党ワーキングチームの活動は、特定のマスメディアに情報を流して、世論を操作しようとしている姑息なものにも感じられる。
イーホームズ担当者は「最初は指摘の意味がわからない様子だった」という(「「こんな図面通ったら大変」偽装通報者、1年半前に指摘」朝日新聞2005年12月1日)。約一週間後に返ってきた答えは「チェックしたが、おかしくない」である(「イーホームズ、偽装指摘取り合わず」読売新聞2005年12月5日)。
渡辺朋幸代表は「イー社も、あんな稚拙な偽造はすぐに見抜けるのに。緊迫感がなかったのか」と憤る(種市房子「<耐震偽造>必死の告発、反応鈍く 空白の1年半に憤り」毎日新聞2005年12月1日)。
警視庁などの合同捜査本部が渡辺朋幸代表に参考人として事情を聞いていたことが判明した(2006年1月16日)。渡辺代表は国土交通省が強度偽装を公表する一年半以上前、総合経営研究所(総研)と木村建設側に姉歯元建築士による構造計算の問題点を指摘していた。捜査本部は、この経緯について詳しく説明を求めたものとみられる(「構造計算問題点、最初に指摘…アトラス代表に事情聞く」読売新聞2006年1月12日)。
建築構造設計会議室 日経アーキテクチャー 青虫 2005/12/13 00:45:12 昨日(12月12日)発売の日経アーキテクチャーに構造計算書偽造 の構造図が載っています。(この雑誌買ったの何年ぶりだろう。) RC11階建ての2階の柱がB×D=850×850で主筋はXY両方向 4本ずつの12-D25は、明らかに少ない。この図面だけ見てもおかしい と思わない人は構造屋じゃない。 でもアトラス設計がやり直した設計の地中梁3段筋23-D32と言うのも どうかと・・・。 この記事でも梁(耐震壁付)が上から下まで同じ断面(300×600)なのは おかしいと書いてありますが、日経アーキテクチャーがこの程度のレベルか と思うと悲しくなります。
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アトラス設計の渡辺社長を応援するスレ! 572 名前:(仮称)名無し邸新築工事 :2006/01/14(土) 18:03:12 ID:??? 渡辺さんが設計し直した配筋図、日系アーキテクチャーで見たけど、 あの配筋で現場収まっているの? 梁筋柱に定着させるのが無理ポイんだけど。 鉄筋屋さんが怒りまくりじゃないの? |
港区赤羽橋学生マンションでは自分が受注する予定であった構造計算を姉歯秀次建築士に奪われた。コストダウンを強要するヒューザーのマンション「グランドステージ川崎」の構造計算も担当している。姉歯元建築士と領域・客層が重なるところが多いように見受けられる。因みにアトラスは手塚治虫の名作「鉄腕アトム」では悪役ロボットの名前である。
ここからは渡辺代表も安全性・耐久性を目指すというより、コスト削減・限界設計・経済設計を志向する立場にあることがうかがえる。勿論、姉歯秀次元建築士とは異なり、建築基準法の基準は当然のこととして満たしていると信じたいが、建築基準法は最低基準に過ぎない。建築基準法第1条で定める通りである。「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」。
建築基準法の基準をぎりぎり満たすだけの建物の資産価値は低い。居住者にとっては避けたい建物である。法令では震度7では崩壊・倒壊しないことが求められている。しかし補修による継続使用が可能か否かは問われていない。従って、法令ギリギリの経済設計で建てられた建物は震度7で崩れないとしても使用できなくなる可能性が高い。現行法の基準では、いくら壊れても崩れ落ちなければよいためである。実際、福岡県西方沖地震(2005年3月20日)では壁に亀裂や剥落が生じた建物が見られた。