北朝鮮からの手紙

朝鮮日報 2004/12/29 15:44

「金正日を助ける人は後日北朝鮮人民が審判するだろう」
北朝鮮高官が本紙に送ってきた秘密手紙

 この手紙は出張で中国に渡った北朝鮮高官が在中同胞を通じて朝鮮日報社に自分の心境を綴った手紙をファックスで送ってきたものです。自分の身の安全のため、身元はもちろん、筆跡が明らかになる手紙の写本も公開しないよう要請しました/編集者。

 私は現在、北朝鮮の重要機関で働くものです。身の危険のため、具体的な身元を明かすことができません。ご了承ください。

 私が危険を覚悟して朝鮮日報読者の皆さんに手紙を書く理由は、韓国政府の対北政策と北朝鮮寄り勢力の行動があまりにも嘆かわしく、民族の将来のために、言うべきことは言おうと思ったからです。

 ご存知のように、北朝鮮人民たちは1995〜1998年のいわゆる 「苦難の行軍」当時、300万人が餓死し、120万人が流浪するようになってから、もはや未練も愛情もなくなりました。

 ただ残ったものと言えば、金正日(キム・ジョンイル)に対する深い憎悪だけです。

 現在、北朝鮮内部には公開することはできませんが、多くの反政府勢力が存在しており、時が来れば民族反逆者 金正日を処断し新しい国家を建設するエリートたちが徐徐に育成されております。志のある同志らがこのことに参加しています。

 私たちは1990年代の「苦難の行軍」当時、金正日を崩せる絶好のチャンスだと思いました。何故なら、金正日が混乱な体制を維持するため、罪のない人々を次から次へと銃殺し、管理所(政治犯収容所)送りにするなど無慈悲に人民を弾圧したからです。

 人民の怨声が高くなると、反抗の気運もまた高くなるのは歴史の真理と言えます。「苦難の行軍」当時、政治、経済、文化、国防を問わず、収拾がつかないほど瓦解し、多くの人民が中国へと発ちました。

 私たちは当時、より多くの人民が北朝鮮を脱出し中国に渡ることを願い、国際社会は金正日の首をもっと強く締め付けてくれるよう願いました。もし、このような状況が現実になっていたなら、いくら残忍な金正日政権でも堪えることができず、崩壊したはずだと思います。

 しかし、南朝鮮政府と国際社会の金正日政権に対する支援で、北朝鮮の反政府勢力は再び苛酷な試練を強いられています。中国へと脱出した数十万もの哀れな脱北者が北朝鮮で連れ戻され公開処刑場で、また保衛部の監獄や管理所で命を失いました。

 どれだけ多い脱北者が北朝鮮に連れ戻され、悲惨な死を迎えたことか、考えるだけで怒りを抑えることができません。それに、南朝鮮政府は金正日に何の借りを作ったのか、継続して金正日を支援しています。

 これまで北朝鮮に流れ込んだドルと支援物資がどのように使われたか、具体的に明かすこともできますが、止めておきます。人民の食生活にはまったく関心のない金正日政権が、外部の支援を人民のためにではなく、自分の政権を維持するためだけに使い切っていることは明らかであるため、このことを是非とも強調したいと思うだけです。

 南朝鮮ではまるで、金正日政権が変化したかのように、しきりに金正日を美化しようとする動きがあるようです。そこで、 「苦難の行軍」 以後の北朝鮮の変化を手短に申し上げます。

 2002年7月に取られた「経済管理改善」措置は、市場の物価を現実化し、事実上有名無実となった配給制と供給制を廃止するほか、人民に対する国家の責任を個人の責任に転嫁したこと以外、特別な内容はありません。

 商売をするためには自由を与えなければなりませんが、現在北朝鮮には個人商売は存在しません。月1万〜3万ウォンを稼げる人は当局の許可を得て商売をしますが、そんな能力のない大多数の勤労者は統制の中、配給も月給もまともにもらえないけれど、職場生活を続けなければなりません。

 最近北朝鮮では 「南朝鮮の連続ドラマ」ブームが起き、各家ごとに家宅捜査が行われ、出退勤の統制もさらに強化されました。個人農業が可能になるのではないか、ほんの少しの期待もありましたが、それも今やうやむやになった状態です。

 今年7月、協同農場の土地を機関と企業所に分けるという話が流れましたが、まだ実行されていません。個人が山を開墾して作った田畑に限り、300坪まで農業を許容しており、それ以上の土地に対しては国家が管理するようになりました。

 もちろん、死に物狂いで対抗する住民たちが政府の統制にもかかわらず、数千坪の田畑を管理することもあります。しかし、土地使用料で税金を払ってしまえば残るものがなく、人民の怨声は高まるばかりです。

 田畑を耕している人たちは、それでも餓死しない程度の農業を営み、自給している人々だと言えます。農民たちは秋になれば軍糧だとして米を奪われ、幹部らにも奪われてしまうと残るものがないため、今はちゃっかりしています。

 各自、泥棒になりきって食糧を確保しない限り飢え死にしてしまうため、農民らはみな盗賊になってしまっています

 だから、秋になれば協同農場の土地は中身のないしいなばかりが転がっています。黄海道の今年の作況が少しは改善されたと言いますが、人民軍の軍糧を去年よりさらに多く持っていかれたため、早くから農民の怨声が聞こえています。

 最近は人民軍も飢えるほど、再び食糧難が深刻になっています。人民たちは人民軍を「暴れん坊軍隊」、「やくざ」、「盗賊軍隊」、「討伐軍」(日帝当時の討伐隊に例えた言葉)と呼んでおり、まともに食べられず栄養失調に悩まされるという意味から「栄失軍」(栄養失調軍隊)と呼んだりします。

 毎日のように民家を襲い、人を殴ったりするため、軍隊に対する苦情が後を絶ちません。飢えで、人民軍の綱紀は崩壊寸前です。

 北朝鮮はますます救いようのない腐敗国家に転落し、さらに滅亡の加速度がかかっている状態と言えます。金正日は何とか政権を維持するため、処刑や拷問など苛酷な刑罰をさらに強化しており、脱北者に対する処罰も、最近は極めて厳しくなっています。国際社会の世論のため、公開処刑はあまり行っていません。

 外部の情報に対する人民の関心が高まり、南朝鮮でどんなことが起きているのか、高官らはすべて知り尽くしています。今や中間級の幹部や若者たちまでもが、米国のラジオ・フリー・アジア(RFA)を聞いて情報を拾得しています。誰が金正日を助けており、誰が北朝鮮の自由と人権のために戦っているのか、私たちはすべて知っています。

 より多くの人民が中国に脱出し金正日と対抗しなければなりませんが、現在中国と韓国政府が脱北者を粗末に扱い、彼らの救出にまったく関心がないということを、すでにずいぶん前から知っていました。

 このような情勢であるため、北朝鮮人民たちは逃げることもできない悽惨な状況に置かれ、飢え死にするか、暴力により死ぬ日だけを待っています。

 そのため、現在韓国政府の対北政策に対して北朝鮮の志のある高官らと反政府勢力は非常に不満を抱いており、南韓政府に対する憎悪はさらに深まっています

 もはや、金正日は行き場がありません。今金正日を好きな北朝鮮人民は誰一人いないと断言します。無知な人民軍を立て、人民を銃や刀で弾圧していますが、もはや彼の運も尽きたと思います。

 人民軍の親兄弟も飢え死にしています。人間として、考えられる頭があるなら、どうやってこの状態を正常だと言えますでしょうか。

 わが民族が困難に陥った時、私たちが兄弟だと信じている南朝鮮人民たちが金正日政権を崩壊し、北朝鮮人民に自由と解放を与えるためにはどうすべきか、ここまで話せば、お分かりになるはずだと思います。

 開城(ケソン)工団は金正日の足りない外貨を稼ぐための 「窓口」と見ると正確です。金鋼山観光も同じです。金正日は南朝鮮の金が必要であり、南北交流は金正日にどれだけの金が入って来るかによって、すなわち 「将軍様」の満足度によって変わるでしょう。

 金をたくさん与えれば、南北関係は良くなり、そうではなければその反対になるでしょう。厳密に言えば、北朝鮮との関係ではなく、金正日との関係と言うのが正しいでしょう。

 もはや、金正日の首を締めなくては、これ以上北朝鮮人民の不幸を防ぐことはできません。人民軍を解体させ、保衛部を弱化させるためには、金が入ってくるのを阻止すべきです。

 米国と日本、南朝鮮が力を合わせて金正日を圧迫すれば、崩壊するか、改革、開放をするか、彼も選択するでしょう。

 重ねてお願いします。北朝鮮の人民たちが今どれだけ惨めに、奴隷のような暮しをしているのか、推し量ってください。金正日を助ける人は後日、必ず北朝鮮人民たちが正義の審判を行うことでしょう。

 ありがとうございました。