第1編 白浜 |
3月27-28日、車中一泊にて、南紀横断のドライブ旅行に行ってきました。 阪和道〜湯浅御坊道〜田辺〜白浜〜中辺路〜渡瀬〜湯の峰〜熊野宮〜熊野市〜志摩〜鳥羽〜伊勢〜伊勢道〜名阪国道〜帰。 南紀は大学1年のときにバイクで周遊して以来です。しかし、そのときには夕方に神戸を出て、夜中にぐるりと半島を回ったという状況でしたから、実際上は初めてであったというべきでしょう。白浜にも来たとはいっても、そのときには駅で警官に呼びとめられて職務質問されたことを覚えているだけで、白浜の白浜たる白浜的景観は、今回初めて目にしたわけです。 |
白浜の白浜たる白浜的景観。ひと月前に見た鳥取の日本海とは明らかに表情が違うところが面白い。どちらかというと日本海のほうが優しく女性的で、海の色もグリーンの印象が強いのに比較して、太平洋は色も濃く(「黒潮」と呼ばれるくらいですし)、自然もより濃密な感じで、確かに「粘菌」くらい沢山生活して居そうです。というわけで、これは「粘菌」の研究者としても知られる当地出身の南方熊楠の功績をたたえる記念館の屋上から見た風景です。展示室内には実物の粘菌の標本も展示されていて、興味深く拝見しました。写真上部左側の二つ並んだように見える島が、熊楠が先頭だって保護を訴え、天然記念物に指定されたことで有名な「神島」だそうです。 |
南国風でいいですね。これも「南方熊楠記念館」付近にて。僕は鹿児島に住んでいたことがあるので、薩摩半島南端の長崎鼻のイメージと重なりました。 白浜は、いまでこそ、近畿から近場のドライブ・スポットですけれど、昔でいえば、「新婚旅行のメッカ」ですよね。確かに、このような風景というのは畿内では味わえないものです。 |
南紀や伊勢志摩は、いまも変わることなく観光地として栄えているのではないでしょうか。少なくとも訪れた印象としてはそんな感じで、どこに行っても多くの人たちでにぎわっていました。ある事典(98年版)にも「千畳敷・三段壁・円月島などの景勝にくわえ、水族館・海中展望塔ほか、ゴルフをはじめとする各種スポーツ・観光・行楽施設もつくられ、季節をとわず行楽客が多い。」とあります。新しいホテルと思われるものの建設中の場面にも出会いました。 |
ん?、白浜でホテルと言えば… でーんと登場しますのが、「ホテル川久」(永田・北野建築研究所)です。ウワサには聞いていたものの、「超弩級」という言葉がまことに相応しいとんでもない建物で、ホテルというよりはむしろ「海上要塞」です。外壁煉瓦はイギリスイブストック社製、屋根瓦は中国産瑠璃瓦、ステンドグラスはイタリア製、石はフランス産、ボリュームを強調するデザインで、まあこれだけの規模のものを好きにさせてくれれば建築家冥利に尽きるというものです。 |
メインゲートへ導く道です。手前の普通の建物群に対して猛烈な異物感があります。 |
さて、気を取りなおしまして、白浜に来たからには温泉を無視する手はありません。 「白浜温泉」という呼び名は昭和以降だそうですが、温泉そのものは、斉明天皇をはじめ歴代の天皇が入湯した記録が「日本書紀」ほかにあり、「万葉集」にもよまれたという、非常に古くからのものです。古くは牟婁温湯(むろのゆ)・紀温湯(きのゆ)と呼ばれていたそうです。 今回はその「牟婁温湯」の湯を引いているらしい「崎の湯」に浸かりました。文字通り、海に突き出した崎に作った露天風呂で、近くの海中展望塔から丸見えです。乳白色で青色みがかった湯で、確認していませんがおそらく「含硫黄−ナトリウム泉」です。源泉を舐めるとしょっぱい。沢山入浴客が居ましたので、のんびりというわけにはいきませんでしたが、それでも、目を閉じて、黒潮が岩を洗う音を聞き、潮風に吹かれながら露天風呂に浸かるというのは、ホテル川久に泊まらずとも、なかなかの贅沢です。 |
第2編 中辺路へ |
最終更新日00/11/09