( May 1st ' 2000) 貧しさ

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    IBの試験科目の中に、CASというボランティア活動を150時間するというものがある。内容は自由で、みんなそれぞれ、個人で考えたプロジェクトをするんだけど、私は今まで、目の見えない人の家の訪問、補習校の先生、小さい子の手伝い、などいろいろしてきた。そして最後に、友達と二人でFavalaに行こうということになった。(Favala=貧しい人達が住む地域)貧富の差が大きいブラジルではこの地域に住む人口はとても多い。ブラジルに住み、ブラジルを知っていると言う以上、こういう現実も自分の目で確かめることも大切だと思い、古着や、食料品を持って行くことにした。なんてカッコいいことを言ってみても、今考えると、ただの興味本意にすぎなかった気がする・・・。

       Favalaがある地域に近づくにつれ、家の作りは簡単になってはいったものの、でも考えていたほとではないなと思い、つれて行ってくれた知り合いのオバさんの車を降りた。するとすぐに、側で遊んでいた子供達が元気に集まってきた。そして僕の家はあっちだよって指差された先は、その立ち並ぶ家の隣の、ごみ置き場のようなところだった。この先にこの子達が住む家があるのかと思うと、それだけで分かっていたはずなのにすごくショックだった。

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    にこにこ笑いながら案内された彼らの家をみていると、不謹慎にも小さいころ遊んでいた秘密基地を思い出した。ごみ捨てばから拾ってきた家具で作られているキッチンやテーブル。どの家も、この中で五、六人の人が住むなんて信じられないような大きさだった。家族構成は母子家庭のところが多く、未婚の母か、父親はお酒に溺れて、職もなく、帰ってこないといった状態での離婚といったケースが多いらしい。そこにいた奥さんに苦労話を聞いていたら気づかないうちに一時間は過ぎていた。夫のいないその婦人のすぐ側で、すやすやと生まれて15日の赤ちゃんが眠っていた・・・。

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    そんな中で、一番印象に残っているは子供達の笑顔。目が合うと必ずにこって笑顔を見せてくれる彼らの笑顔。本当に無邪気で、抱きしめちゃいたくなるくらいかわいい。明るくって元気で・・・。

    私はFavalaにいる間中、ずっと悩んでいた。家に帰ったらこのDiscoveryのページに、私はなんて書くんだろうって・・・。貧しくてかわいそうな子供達?こんなに笑顔で笑っていうのに? 恵まれない子供達?みんな兄弟や他人を思い合いながら助け合いながら生きているのに?そう考えるとほんとうに分からなくなった。貧しいってなんだろう。裕福な家に生まれてきても、虐待を受けている子供もいるし、毎日毎日勉強で他人との戦いの中に生きている子供達もいっぱいいる。愛情を受けているのか、いないのかさえ分からない子供なんて世の中にたくさんいる。そんな子供に比べると、彼らは恵まれていないのか・・・。お金がある家に生まれ、食べ物に困らないからといって、彼らに胸をはって自分達のほうが幸せだっていいきれる子供が何人いるんだろう。あんな笑顔で生き生きとしている子供達を見ていると、恵まれないかわいそうな子供達、なんて思っていた自分はちょっと思い違いをしていたんじゃないかって思えた。  なぜか目が合って、先ににこってされた瞬間、自分がすごく恥ずかしく思えた。

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    かといって、彼らの生活に問題がないわけじゃない。集めた古着をあげて、みんなにペンダントをプレゼントしてあげたんだけど、すごく喜んでいた。学校にいくための靴がほしいとか、物が不足しているのは確かだ。学校に履いていく靴がないなんて言っていても、教育なんて3、4年うけられたら幸せなほうで、行けない子供ものほうが多い。左上に写っている女のこもそうだけど、みんな多少大きくなると妹や弟の世話をしなくちゃいけなくなるし、家族の仕事の手伝いをしなくてはいけなくなる。その親だって、教育を受けられているわけじゃないから、仕事といってもごみを集めてたり、紙のリサイクルをしたりと収入は少ない。だから彼らの貧しさは次の世代にも変わらず繰返されることになる。とても悲しい現実。

    右写真に写っているのはそんなところで成長した青年達。中には14歳で一人目の子供を産んで、16歳で今妊娠中という女のこもいた。教育がないぶん性行為=妊娠、ということに結びつかなかったり、避妊もしないし、そのために広がっていく病気があるということも知らない。女性を妊娠させるということが男にとって権力を示すことにもつながるという考えもあるらしい。宗教的なこともあって子供を降ろすことは許されないし、神様が授けてくださった子ということでみんな若いころから子供を産む。教育がないということがどんな影響をあたえるのか、彼らの生活を見ていてあらためて分かった。

    そして何よりも一番悲しいのが貧しさ上に犯す犯罪。こんなに無邪気で素直で明るい子供が、いつか貧しさの壁にぶつかって犯罪を犯すかもしれないと考えるとすごく心が痛む。やっぱり今がよければそれでいいという生活ではやっていけないし、これから先この子達はどんな現実を知って行くのだろうと思うとすごく悲しい。どんな子供にも平等に可能性が与えられていたらどんなにいいことだろう。だから最近NHKのニュースで犯した少年の犯罪を見ると、すっごく悲しくて腹が立つ。人を殺してみたかった?誰かに自分を知ってほしかった?馬鹿馬鹿しくって聞いていられない。怒りと悔しさで本当に涙がでそう。自分を変える勇気はなくて、他人を守る勇気がなくて、人を傷つける勇気があるんだからどうかしてる。

                                    そんな思いで今のこ写真を見ていると本当にやるせなくなる。

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