“ディスコ イズ ファック” 外伝


これは、METAL SWORDのメンバーが、この曲を書くにいたるまでの愛と勇気の物語である。

[前編]

俊夫は、青森県出身。この春めでたく都内のW大学に合格したばかり。現在、上尾市のアパートに下宿している。 とある日、渋谷の駅頭で、高校時代から憧れていた、テニス部の1年先輩の恵子に偶然出会う。 元来がSHYな俊夫のこと、高校時代は、告白なんぞできるわけもなく、毎夜恵子の姿態を思い浮かべては.......(以下略)

俊夫:『あっ、恵子先輩じゃないすか? 久しぶりです』
恵子:『えーと、佐藤君だっけ』
俊夫:『はい、佐藤俊夫です』
恵子:『あ、そうだったわね、久しぶり。 で、今日は何しに来たの?』
俊夫:『はい、レコード屋へ行くところです。 先輩は?』
恵子:『あ〜ん、先輩はやめてよ。 じゃ、私も一緒にパワーレコードでも行こうかしら』

(思わぬ展開に、たじろぐ俊夫)

俊夫:『け、け、け、恵子さん、ぼ、僕どちらかというとディスクユニコーンのほうが....』
恵子:『あ、そ、別にいいわよ。 じゃ行きましょ』

恵子は、1年間ですっかりと垢抜け(注1)、流行のキャミ+プラダ完全武装の今風女子大生であり、露出度も決して低くはない。 さっさと腕を組まれて思わず固まってしまう俊夫であった。
レコードを買ってから入った喫茶店にて......

俊夫:『け、恵子さん、どんなの買ったんですか? ちょと見せてくれませんか?』
恵子:『いいわよ』
俊夫:『ををっ! ジャケットが1つも付いてないですね(注2)。 僕、後追いなので良くわからないんですが、ひょっとしてNWOBHMですか!?』
恵子:『へ? 何? そのニューなんとかっていうの?(注3) ひょっとしてラブホの名前? いやあね〜、ツネっ!』
俊夫:『いててっ、あ” 違ってましたか。すいません。 で、何すかそれ?』
恵子:『何ですかって、ネタに決まってるでしょ』
俊夫:『へ? ネタ?』
恵子:『もう、知らないの? で、俊夫君は?』
俊夫:『(ガサゴソ)今日は、MANOWARの新譜を買いました。』
恵子:『へ? まの〜?? ちょっと見せて......げ、何これ? ちょー汗臭いって感じぃ。 ひょっとしてこれヘビメタってやつ? Y-JAPANのおっかけでもやってるの?』
俊夫:『(ちょっとむっとして)違います。ヘヴィーメタルっす』
恵子:『何わけわかんないこと言ってんのよ』
俊夫:『すいません』

思わず謝ってしまう俊夫であった。

恵子:『ま、いいわ。 ね、今日暇なの。飲みにでも行かない?』
俊夫:『行きましょう!』

思ってもいない展開に、小躍りしつつも、しっかりと喫茶店代を全額払わされる俊夫であった。 しかも、カフェラリルでケーキまで食われた日にゃぁ、決して安くはない。
フリで入った炉端焼きで1時間ほどしてから......

恵子:『あ〜ん、わたし、何だかちょっと酔っちゃったみたい』

(と、俊夫にしなだれかかる恵子。 完全硬直状態の俊夫)

俊夫:(こ、この展開は! も、もしや.....持ってて良かった!)

(SHYな俊夫ではあるが、当然ながら○△×には、人一倍興味はあるのである。 普段から定期入れの中には、コ○○ー○を1ケ忍ばせているのであった。 おかげで、俊夫のジーンズのポケットは、Ring Wear(注4)していた)

恵子:『ね、くらブでも行かない?』
俊夫:『え”? 恵子さんで、今でもOGずらごいで高校の部活だば通ってるだべか? えれぇずらなぁ。 え? でぼごれがら青森までいぐずら?』
恵子:『あがが、俊夫ぐんで、おもしろいべ。 だばいっしょにいぐべ。 い、いけない! 思わずつられちゃったわ! って、行くわけないでしょ!』
俊夫:『はぁ、そうですか。 何が面白いんだろ......ブツブツ』
恵子:『じゃ、行きましょ!』

(なんだかさっぱり話しのわからない俊夫ではあったが、“くらブ”というものが、なんだかアヤシイ響きを放っているので、ますますいきり立ってしまう俊夫の○○であった。 なお、飲み代もしっかり全額払わされたことは言うまでもない)

恵子:『は〜い、タクシー!』
俊夫:『え? タクシーで青森まで行くんですか!?』
恵子:『いつまで言ってんのよ!、六本木でしょ!』
俊夫:『は、はぁ......』

(タクシーの中で......)

俊夫:『恵子さん、その“くらブ”というのにいつも行ってるんですか?』
恵子:『そ〜ね〜、週1くらいかしらね』
俊夫:『ははぁ。(週1ねぇ、恵子さんで結構エッチなのかも、ウフフ....)』

(高まる期待に反して、タクシー代まで払わされて心もとなくなる俊夫の財布。 CD購入資金として、せっかく初めて入ったバイト代を全て握り締めて家を出たのが不幸の始まりであった。
ほどなくして......)

恵子:『さ、着いたわよ』
俊夫:『ははぁ。ココってひょっとしてディスコっすか?』
恵子:『ディスコぉ!? それってひょっとして死語じゃないのぉ』
俊夫:『あ、いや、そのぉ、羽根扇とかボディコンとか......』
恵子:『今時、そんな子いるわけないでしょ!』
俊夫:『ははぁ.....』

(青森時代にTVで見た、東京のディスコ風景。 それはまさに阿鼻叫喚で、しかもひじょーにウレシソウなものであった。 う〜ん、もうやってないのか、とちょっと寂しく思う俊夫であった)

恵子:『さ、入りましょ!』
俊夫:『はいっ!』

小雨が降り出していた.....

(果たして俊夫の運命やいかに! 後編に続く.........)


(注1)地方出身のほうが、反動でかえってケバくなることが多い。
(注2)NWOBHMのシングルには、P/S(Picture Sleeve)が元々無いものと、後天的に紛失したものがあり、それらを見分けるための知識が必要である。
(注3)もともと、キャミプラ女子大生にNWOBHMを聞くこと自体が無謀であった。
(注4)P/Sの紙質が弱いと、長年の貯蔵や取り出しの繰り返しで、P/Sにリング状の擦り跡が残ってしまうことをいう。 アルバムよりも、7"や12"のシングルに多い。