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特集:ノンフィクション

フィレンツェでジュエリー職人になる
伊東史子 世界文化社
ルアン先生にさからうな
ルアン・ジョンソン 酒井洋子訳 早川書房
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 はい、白状します。「フィレンツェ」と「ジュエリー」に惹かれて手に取りました。
 が、しかしっ、私のミーハーな興味なんて恥ずかしくなるほどの真剣な本でした。 たぶん、作者の伊東史子さんは、とてもキマジメな人なんだと思います。 少なくとも私にはこんな自分が丸裸になるような文章は書けないです。
 だからといって堅苦しい本ではありません。
 伊東さんははじめミラノに1年住んで、ちょっとつらいことがあって フィレンツェの友人の家に滞在します。 そこからフィレンツェのジュエリー職人養成学校に入ることになるのですが、 その友人の家、イアビコリ家には双子の赤ちゃんがいました。
 子供達をかわいがる伊東さんは「もらわれ叔母」となり、合鍵も渡される。 大人達の挨拶もそこそこ。
「だって、ルイーザ、私は子供の光に照らされるほどの贅沢を知らなかった。 天国はきっとこんな味じゃないかな」
 ね、素敵でしょう?
 確かに子供にはそういう力があると思う。
 実は、「フィレンツェ」で「ジュエリー職人になる」だけの本ではないようです。
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 この作品は、ミッシェルファイファー主演で映画化されています。 『推定無罪』と違って、こちらは全然映画を見ていません。惹かれて手に取ったのは、 装丁のたまもの。最近のハヤカワ文庫ノンフィクションのデザインは、素敵です。
 さて、ルアン先生。30代、女性、離婚経験アリ、海兵隊出身の新米教師。 ・・・なあんて書くと、スポコンなお話を想像するかもしれませんが、全然違います。
 でも、日本の学校もすさんだといわれるけど、アメリカの公立校とは程度が違うっ。 やっぱり、ルアン先生も生徒には色々てを焼くんですが、歯を食いしばって唱えるのがスゴイ。
「悪い子は学校に来ない。悪い子はム所にいる」
 しかも、彼女の教え子には国語(この場合、英語ですね)が話せない、書けない子がたくさんいる。高校生なんだけどね。(ヒスパニック系の移民が多いせいです)
 どうも高校生よりルアン先生の方に年が近いせいか、
「こんな教員生活大変だろうな〜、えらいよ、あんたはっ!」
と、思ってしまいます。こんな先生だったら、なんて青臭い考えは出来なくなっちゃったのね。もう。
 それでもやっぱり、ルアン先生は私に教えてくれました。
 それはね、ガッツ。それでもって、へこたれても、高潔でなくてもいいんだよ、ってこと。
 すべての生徒を愛して、手を差し延べることは出来ないけど、さ。
君について行こう
向井万起男 講談社
■今回のまとめ■
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 著者は向井万起男さん。宇宙飛行士の向井千秋さんの旦那さまです。
 向井万起男さんをTVで見たことがある方も多いと思いでしょう。 打ち上げの時のニュース、その他に出ていたもんね。
 しかし、世間にうとい私は、同期がこの本を貸してくれるまで、 向井さんのことは何も知りませんでした。マキオちゃん(千秋さんは、こう呼ぶ) って病理のお医者さまだったのね〜。しかも、アメリカからの中継に写ってたのは、 ただ打ち上げを見に行っただけじゃなく、留学していたんだったのねーっ。
 私は、一躍有名になってしまった奥様の影で、カゲの薄い旦那さまかとばっかり思ってました。 ・・・失礼ですね(笑)。
 この本はチアキちゃん(マキオちゃんはこう呼ぶ)との出会いから、いよいよ宇宙に 出たところまででのお話です。チアキちゃんが宇宙に行くことで、お二人とも色々な人に 出会うことになりました。でね、マキオちゃんの記述がけっこういつも同じ。
『私はうれしくなってしまった。そして、XXが大好きになってしまった』
 ・・・毎回、こんなことでいいのかっ!
 もちろんいいのだ。
 そんなマキオちゃんの視点から見る宇宙飛行士の旦那さんのマイニチ。楽しいですよ。
 実は、ノンフィクション(実体験もの)というのはめったに読みません。
 なんとなく一番玉石混合の分野なんですもの(笑)。
 そんな私が同期からおすすめされて借りたのが、『君についていこう』。 これはシアワセな出会いでした。なんてったって、楽しいし。
 そして、考えてみると大変貴重な著書です。 だって、現存する日本人の「宇宙飛行士の旦那さん」って、向井万起男さんしかいないんですよ! (そりゃそうだろう。女性日本人宇宙飛行士が、今のところ向井千秋さんだけなんだから) 日本に一人だけという珍しい人種が書いた、珍しい体験の本なワケです。
 本当は、それぞれの人が自分だけの貴重な体験を持っているんですよね。 ノンフィクションは、その体験を疑似体験させてくれる貴重なもの。 アダやオロソカに扱ってはばちが当たるってもんです。
 だからこれからはノンフィクションを・・・読むかなあ? だって、玉石混合なんだもの(笑)。
(99.05.08)

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