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12月某日 八神庵は苦悩する。
理由は勿論、刻一刻と迫り来る某学ランファイターの誕生日が近付いているからであ る。
時の止まった世界に住む彼らにとって全く意味を成さなかった「誕生日」というもの だっかが 『何時まで留年させる気だよっっ!!』と、某ビルを燃やし尽くした男のおかげで彼 らは「時の流れ」を取り戻した。

「12月12日・・・・」
カレンダーに大きく付けられた花マルは勿論、その日をもって一つ年上になる男が付 けたもの。
「さて・・・どうしたものかな・・・」
何が欲しいか尋ねた己が馬鹿だった。
笑顔で『お前が欲しい』と言われた。
無論、そんな事はすでにお見通しで 「躰なら散々今までにも好きにしてきただろう・・・? 心などという形にみえない 取り留めの無い物・・・渡せる訳がない」 ときっぱりと断った。
事実、今迄にも幾度も躰を繋げたし、心など幼い頃に奪われたままだ。
「今更・・・俺にどうしろと・・・」
大袈裟に溜め息を吐く。

庵とて、分からない訳ではない。どうすれば良いのか、何を望んでいるのか・・・。
つまりは・・・『好きにしていい』という状態を望んでいるのだ。強姦魔は・・・。
何時ものような本気混じりの抵抗など一切無い・・・
「・・・・冗談じゃない」
苛々と煙草に火を付ける。



某氏誕生日・前日 八神庵は途方に暮れる 目の前に用意されたのはラッピング用の白いレースのリボン。
用意したのは勿論プレゼントを受け取る男。
「・・・・馬鹿にしているのか・・・?」
ひらひらのリボンを手に取る。
『明日が楽しみだな』
浮かんだ先程、これを置いていく時に見せた笑顔に忌々しそうに舌打ちする。
「こんな物・・・・」
煩わしいと呼び寄せた炎で燃やそうとする。
「・・・・・」
待つ事5分・・・。
「・・・・ふんっ」
庵は手にしていたリボンを机の上に戻しその場から逃げるように去った。




同日・深夜 庵はきがきじゃなくて眠れない。
明日の朝にはプレゼントを受け取りに来たとやってくるであろう・・・
「大体・・・。こんなもの男に付けて何が嬉しいというのだ・・・?」
再び手に取る。
『似合うぜ・・・。絶対に』
自身ありげな言い方が気になる。
「・・・似合う筈などないだろう・・・? 女でもあるまいし」
溜め息を吐き小さく欠伸をする。
「馬鹿馬鹿しい・・・。寝るか」
テーブルの上に置いた時、ふと、窓に自分の姿がくっきりと写っている事に気が付 く。
「・・・似合うものか」
あの笑顔に対し嘲笑を浮かべると手にしたリボンをはちまきの容量で頭に巻く。
「・・・これでは気違いだな」 しゅるりと布の擦れる音を立てて解く。
「・・・首にまけば似合うというのか?」
何をすれば似合うとあの男は思ったのだろうか・・・?
「・・・・」
首に巻いてみたが似合うとは言い難い。
「プレゼント・・・もらいに来たぜ・・・」
突然後ろから声がして全身で驚く。
立っていたのは、今一番あいたくない男。この姿を最も見られたくない相手。
「っ・・・貴様・・・いつからっ!」
羞恥で顔を真赤にして、それでも威嚇する。
「・・・さっきから」 この上なく嬉しそうなスマイル。庵は唇をかんだ。
「騙したのか・・・?」
「騙してなんか無いだろ? ちゃんと約束通り誕生日に取りに来たぜ?」
時計を指差され見れば確かに0時を回っている。
「ありがとう・・・。凄く嬉しいぜ」
耳元で囁かれたところで・・・・。が、とうとう諦めたのか庵は肩を竦めて笑った。
「どうした・・・?」
「・・・貰うからには・・・大切にするんだろうな・・・? 捨てる事は許さんぞ ?」
何時も囁かれてばかりだから、今日だけはと甘い声で囁く。
「俺は・・・高いぞ?」
艶然と微笑めばすっと横抱きにし
「取り扱い注意か・・・」
優しく抱きかかえてくる。
「このまま連れてってくれるのだろう・・・?」
首に腕を回す。
「ーーー積極的だな」
「・・・今日だけ・・・な。今日だけは・・・貴様の酔狂に付き合ってやろう」
しょうがないから・・・と苦笑を浮かべてやる。

某日。2人の関係がつかの間の蕩けるような密に包まれた日。

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