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〜人魚姫一部抜粋〜

「イオリ!ちょっとイオリッ!?」
 甲高い声で長女のマチュアが末の姫(笑)を呼んだ。人魚の城にある庭は姫たちがそれぞれに所有する花壇があり、その奇天烈な花が犇く間をずかずかと歩いて行く。向かう先は当然末の姫所有の花壇だ。
「止めておきなよ、言っても無駄さ」
 興味なさそうに次女のバイスが笑う。奇妙な花が途切れた先、可憐で小さい花ばかりを集めた可愛らしい花壇が現れ、その花々と不似合いな体格を誇る末の姫が佇んでいた。彼が今丁寧に磨く少年の石像こそマチュアの頭痛の種であった。