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 まるで息が出来なかった。
 四肢は鉛のように重く、視界がきかない。
 何故自分がこのような状況に陥っているかを考えると、次々と記憶がフラシュバックした。

 KOFに出場した

 神楽…そして八神と組んでいた

 優勝した

  …オロチ!

 鮮やかに甦る記憶

 オロチに殴りかかる寸前の八神の横顔

 「八神…八神!!」
 瓦礫に横たわったまま、動かない首をどうにか曲げ、近くに倒れている八神を見つける。
 仰向けに倒れている八神の瞳は閉じたままで、生きているのか死んでいるのかわからない。

 「おい八神!!」
 やがて、八神の眉がかすかに動く。
 生きている、それだけを頼りに何度も名を呼ぶ。
 「…うるさい…」
 低く掠れた声がした。
 こんなときでさえ憎まれ口な彼であったが、今はその方が良い。
 「お前も動けねぇのかよ、情けねぇな!」
 安心感に包まれ、胸が詰まる。
 生きている
 「丁度良い機会だ、てめーには言いたいことがいっぱいあるんだ。今なら動けないから嫌でも聞くだろ?」
 「…何だ、言ってみろ」
 言って八神は咳込んだ。
 広がる咽返るような血の匂い。
 折れているらしい肋骨を庇い、楽な姿勢を取ると一息つく。
 「少しは自分のことも考えろ!無茶ばかりしやがって…」
 「…ああ」
 素直に話しを聞く八神が嬉しくて、硬い地面も気にならない。
 思いつく限りの文句を言ってやる、その度に八神は小さく返事を返した。
 「お前一人で何でも背負うんじゃねぇ!」
 「…そう…だな」
 「オロチのときもそうだ、一人で勝手に動きやがって」
 「…」
 「これからは」
 「…」
 「…八神?」
 「…」
 「……」
 ふいに胸が痛み、あまりの痛みに寝転がったまま蹲った。
 「今までずっと言えなかったけど…」
 堪えていたものが瞳から溢れる。
 「俺…お前のこと…」

  


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