戻る メインメニュー

「始業ベル」
[1/25(月)10:04] 由次郎
 新学期が始まった春のうららかな陽射しの中、チョークが黒板を叩く単調な音が京を眠りへと誘っていた。
 顎を机に置いたまま、呆然と視線をさ迷わせる先に彼の後ろ姿がある。少ない動きでルーズリーフへとペンを走らせているのを暫く眺めていた。
 「草薙」
 咳払いに我に帰れば、真横で現国教師が青筋を浮かべて見下ろしている。
 「好きな子でも見ていたのか?」
 「イッテ!」
 分厚い教科書で頭を軽く叩かれ、二人のやりとりに生徒たちが爆笑する。その中で、彼も小さく笑っていた…もちろん自分の視線には気付いていない。


強敵出現!
[2/14(日)14:21] 若葉殿

 「さて、本題に戻ろう。我が慶應江府学園に赴任したばかりの新米教師”ななかせ、やしろ”くんだ。みなさん、仲良くするように」
 と現国教師が紹介したのは見知った顔の白髪の大男。
 何故、やつがここに?
 そいつは八神にニッコリと微笑みかけると、俺に向かってニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

 私服OKの学園でも目立つ格好のこの新任教師は高い位を持つオロチだ。
 これは超極秘事項だが、このKOF学園のライバル校、八岐大蛇学園は世界各地に支部を持つ秘密教団オロチ教の日本支部教育機関である。過激な自然信仰を宗旨と するオロチ教団は全国で洗脳教育を行い、ゆくゆくは世界征服を目論んでいる。
(以上、神楽ちづるの受け売り)
 そして何お隠そう俺様は、オロチの野望を阻止せんとする学園理事長代理 神楽 ちづるを司令官、女子高校生ゆきをマネージャーとし、大学部の二階堂紅丸、柔道部師 範代の大門五郎と共に世界平和のために日夜闘う高校生ファイター草薙京様だ。
(うざってー!!!!!)


強気の本気が無敵に素敵
[3/11(木)00:12] あらし。殿
 自分で云うのも何だが、しかしこう云うことははっきりしておかねばならないのであえて云おう。
 俺にはやる気が全くない。
 八岐大蛇学園がうんたらとややこしい説明を総て憶えているのは、以前理事長・神楽の命令をぶっちぎったら謹慎処分をくらい、一週間の自宅謹慎中同じじ文章を50回 書かされたからだ。神楽の命令は無視したくせに、そいつはちゃんと仕上げた自分はつくづく若かったと今では思う。
 ……そいつはともかくとして。
 たった今『新任教師』として紹介された七枷社。八神に微笑んだ時点でやつの目的は明ら様だが、それよりも問題は、俺にあんな面で笑ってみせたことだ。つまり、あの 男は、選りにも選ってこの俺に喧嘩を売ってきたってことだ。
 「……野郎絶対ぶっ殺す」
 俺の呟きが聞こえたらしく、隣の席の女が関わり合いになりたくなさげな目つきで俺を見た。俺は時々不用意にこう云うことを呟くので、この女には「草薙君は学校の裏番 長」と思われている節がある。

学園バトルもの!!(笑)
[3/18(木)03:27] 由次郎
 七枷はお約束通りな自己紹介を始めた。俺はわざとらしく大きな音を立てて机に両足をかけ、椅子を揺らす。だが奴は気付いていないのか、それともわざとなのか、何 事もなかったかのように冗談を交えながら話を続けていた。
 そんな俺の奇妙な空気を察したのか、庵がふと俺を振り返った。
 庵は何も知らない、ただ妙にカンが良い。出来るだけ自然に視線を窓の外に向け、何とか誤魔化した。
 「京…あの人って…」
 後の席のゆきがペンで背中をつついた。
 「…ああ」
 オロチ教団との闘いは、どうやら本格的になり始めたらしい…。


馬に蹴られて死んじまえ!!!(笑)
[3/24(水)12:12] 聖殿
  しかし、本当はオロチ教団との戦いなんぞどうでもいいのだ。問題は奴が八神に微笑みかけた事だ。
 八神は何も知らない。八神はこの戦いには何も関与していない。それなのに奴、七枷社は八神に対して爽やかに微笑みかけた。
 という事は、奴は八神に気があるのだ。そうに違いない!!!奴は確実に八神を狙っている!!!
 そう考えると、全身に力が漲ってくる。しかも先程この俺様にケンカまで吹っかけてくれたおかげでやる気マンマンだ。
 しかも、これで奴をブッ倒せば、あの五月蝿い神楽にも褒められるし、八神にまとわりつく蝿も駆除できるし、いい事尽くめだ。
 「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえって言うんだぜ・・・・・・」
 楽しげにつぶやいた俺を、ユキがいぶかしげな瞳で見つめていた。
 その視線を知らぬ振りをして、授業後の事に思いをはせる。
 こんなにも、待ち遠しい気分は久しぶりだ。礼を言いたいくらいに。
 俺は一人にやにやとしながら、おとなしく椅子に座っていた。


ファースト・コンタクト
[3/27(土)16:45] ちはる殿
 一体奴をどの技で片づけてやろうかと思いながら授業終了を待つ。
 長いような短いような一時間が過ぎ、チャイムが鳴る。
 奴が教室を出たのを見て、俺も席を立った。教室を出て、廊下を曲がる。
 ・・ん?職員室に行かないのか?
 「八神・・だったな」
 休み時間のざわめきから離れた人通りの少ない廊下で七枷は手洗いから出てきた八神に声をかけた。
 「はい?」
 八神が無防備な視線を返す。周りの人間には無愛想に見えるかもしれないが、そのきょとんとした視線は犯罪なほど可愛いんだぞっ!!
 七枷なんかにそんな顔すんじゃねえっ!
 「おいっ、あんたっ!」
 たまらず、俺は八神と七枷との間に割り込んだ。
 俺の見てる前で俺の八神に手ぇ出そうなんざいい根性してるじゃねえか。


ヤツは俺の心をいつも知らない
[4/13(火)12:43] 聖殿

「草薙・・・・・・?」
 八神と七枷の間に割って入った俺を八神はいぶかしげに見つめてくる。その白い眉間にはわずかにしわが刻まれていてその顔は悩ましげで綺麗に俺には見えた。俺 はその顔に見惚れてつい鼻の下が伸びそうになってしまったが、当初の目的を思い出しこらえる。
 強い未練を感じながら八神の顔から視線を引き剥がし、七枷のほうに視線を向ける。するとヤツは俺の考えは全てお見通しとばかりにむかつく感じの薄笑いを浮かべて 俺を見つめている。本当に嫌な野郎だぜ。
「てめえ・・・・・・八神に何の用だよ・・・・・・」
 俺の許可なしに八神の側に近づくヤツは容赦しねえ。そんな思いを込めながら七枷の野郎をじっとりと睨みあげる。ちっくしょう、何でこの俺様が見上げなきゃならねえん だよ。ハッキリ言って俺は身長は高いほうである。こいつが日本人離れして高すぎるのだ。
 理不尽な恨みまでもプラスした俺の睨みは、心臓が弱いヤツならばこれだけでポックリと逝ってしまいそうな代物だった。しかし敵もさるもの仮にもオロチ、これぐらいで はビクともしなかった。七枷は平然と俺の視線を受け止めている。
「おい・・・・・・」
 俺の物騒な気配に真っ先に反応したのは七枷ではなく八神だった。八神は何故こんな事になっているのか理解できないと言うような眼をして俺の短ランの裾をわずかに 引っ張る。ええい、お前のためでもあるんだ。ほっとけよ。
 七枷はそんな俺と八神の仕草にも知らぬ振りをして、平然と俺らのほうを見つめている。大人の余裕、というものを見せつけているんだろうが酷く癇に障る。
「君は確か、八神と同じクラスの生徒だったよな。八神への用をわざわざ君に言う必要があるのか?」
 七枷は俺のことをしらねえ筈はないのにそのことはおくびにも出さず平然と俺に話しかける。何が君だよ。きっしょく悪い。
「そうだよ。八神へのアポは全部俺を通してもらおうか」
 俺は悪びれて七枷を睨みながらそんな言葉をヤツに投げかける。八神がどう思うかも考えずに。
「ぐあっ!!」
 俺がそのことを言った次の瞬間、八神のこぶしが俺の頭にクリーンヒットした。
「馬鹿も休み休み言え!!!」
 俺は容赦ないこぶしのダメージに思わずしゃがみこんだ。しゃがみこみながらも八神のほうに振り向くと八神はいつもきつい眼をさらにきつくして俺のことを見つめている 。やばい、おこってらあ。
「先生、俺に何の用かは知りませんがこの馬鹿は此処に放っておいてさっさと行きましょう」
 八神は俺の気持ちも事情も知らずに七枷の後ろに従えさっさとどこかに向かってしまう。
 馬鹿野郎、そいつは狼、いやオロチなんだぞ、悪いヤツなんだぞ。行くんじゃねえ〜〜〜!!!!!
 という俺の心の叫びはもちろん八神には届かず、八神と七枷はどこかに行ってしまった。ちっくしょう!!!

八神が俺を呼んでいる!!
[5/15(土)01:34] 4SGR殿

「もう京ってば!何してるの!!」
 俺がその肉体的・精神的ダメージを必死に回復させながら立ち上がると、後ろからユキが素早く駆け寄り、俺の腕を引っ張った。
「どうして庵さんの事になると、こう理性がふっとんじゃうのかな・・。」
 ふー、やれやれ。そんな感じでユキが溜め息を吐く。
 ・・・・・やっぱり俺、切れてる様に見えてたか・・。
「あんな事したら、余計に庵さんが頑なになっちゃう事ぐらい、判ってる癖に・・もう。」
 第一判ってるの、ここに来た理由!・・ユキはそっと俺にしか聞こえない様に囁いた。
「今迄、ちづるさんから口止めされてたから・・言えなかったけれど。」
 ユキの瞳がきらきら光って俺を見る。
「・・おいっ!ユキ・・?!」
 そして掴んでいた腕を更に強く握り締めて、俺を先導するかの様に走り始めた。
「・・やだ・・っ、庵さんが・・呼んでる!・・・京、って・・泣いてる!!」
「・・・な、何だよ!ユキ!!」
 俺はつんのめりながらも合わせて駆け始める。
「多分・・こっち!!・・この感じだと生活指導室、かな?!」
 とりあえず行き先が判ればこっちのものだ。
 俺はスピードを増し、反対にユキを引っ張る様な格好になった。
「ユキ・・!何だよ・・、教えてくれよ!」
 八神が呼んでるって??
「・・あのね、今迄言わなかったけどね、八神さんは大事な存在なの!オロチ教団に渡しちゃいけない人なのよ!!」
 俺達は階段を駆け降りた。
「何だって?!」
 ああ、この階段がもどかしいったらねえ!!
「・・何か・・いけないチカラが集まってる・・。」
 走りながらも後ろを見やると、そう言ったユキの顔色が、どんどん悪くなってゆくのがはっきり判った。
 ・・・何だかわかんねえけど!庵は俺が助けるぜ!!!


戻る