「正々堂々新婚開始!」
[11/09(月)06:08] 由次郎
「お帰りなさいませ」
俺は恐怖に凍り付いていた。
陽光照らす玄関先、八神庵が床に両手をついて深々と礼をしているのだ。
普段のドレスシャツの上に不似合いな、いや、よくそんなサイズがあったと思える程その体躯にフィットした割烹着の白が、眩しいほどに俺の目を射ぬく。
立ち尽くしたまま、暫し呆然とその様を見つめていると、八神がそっと顔を上げた。
「やはり普通にした方が良いのではないか?神楽」
小声で伺うように振り返る先に、まるでこの家の主のように悠然とした足取りで楽が現れた。…わかっているだろうが、ここは俺、草薙京の家である。
「何事もはじめがカンジンなのですよ、八神」
「おい」
凛とした声が神託を告げるかのごとく厳格に響く。八神は八神でソレを一心に聞き入っていた。
くるりと向きを変えた神楽は俺を指差し、とんでもない事を告げた。
「八神を娶るのです、草薙。彼を八尺瓊へと還す為に…!」
俺はかなりのオーバーアクションで驚いて見せた。鞄が軽い音を立てて玄関へと落ちる。
「八神を呪われた血から引き離すのです…。それには貴方の傍にいるのが一番」
そして、と意味有り気に間を置き、八神へと視線を移した。
「何より彼が望んだこと…そして彼の自覚が必要なのです、草薙の元へ下ったという自覚が…」
改めて俺は八神を見る、その目は真剣そのものだ。
マジ…?
八神は少し伏目がちに、軽く頭を下げた。あの八神が、俺に頭を下げている…。
「頼む…」
オロチから開放されたからといって、いくらなんでもそれはないんじゃないか!?
「御両親の了解を取って、表向きは養子という事にしてあります。八神の…いいえ、草薙庵の荷物は既に運び込んであるわ」
「なっ!?」
状況の掴めない俺に手を振り、神楽はそそくさと玄関先に立った。
「それではお幸せに☆今夜は新婚初夜ね!」
口元に手を当て笑いながらさっさと引き戸へと手を掛け、俺にだけ聞こえる程の小声で囁いた。
「何をしても構わないのですよ?…夫婦ですもの」
俺が言葉の意味を理解するより先に神楽は出て行ってしまう。
「エプロンの誘惑」
[11/10(火)02:59] 指名打者・あまる殿
残されたのは、いつもの居丈高なようすが見受けられず、それゆえに一層何を考えているのかわからない感じの八神…もとい「草薙」庵。
「…で、オレは何をすれば良いのだ?」
割烹着の白に赤い髪がよく映える…何てことはどうでもいい!
何をすればだって?それはこっちが聞きたいくらいだ。どうしろというのだ、どうしろと。そりゃあ俺も男だし、夢見がちなポエマーだし、ケッコン生活とか妄想しちゃったりすることだってあるさ。だが、たとえ天地がひっくり返ろうとも、身の丈180を超えるようなガタイの良い「男」、しかもよりによって八神がその相手だとは想像すらしない。
「メシはできてるが、先にフロに入るのか?」
……神楽のヤロウ、俺が甘く夢見た新婚のセリフをそっくり八神に教え込みやがったな。そっちがそのつもりなら、俺も徹底して「ダーリン」になってやろうじゃねえか。八神がどこまで耐えられるか、俺がどこまで耐えられるか、だ。ちくしょう。
「フロ…はあとでいいや。メシ、の前にさあ、俺結婚したら嫁さんにやってもらいたいことがあんだよな」
「なんだ?」
「ハダカエプロン」
「は…だか、えぷろ…ん…?」
「そ、おかえり?っつって奥さんが裸にエプロン一枚でお出迎え。ゴハンにする?おフロにするぅ?それともアタシィ?なーんて、そのままベッドイン。あれ夢なんだよな?」
どうだ、これは神楽マニュアルにもあるまい。訳わかんなくてパニクってんのが俺だけなんて言わせねえぜ八神。案の定八神は困惑の表情で、きびすを返すと隣の部屋へと消えた。ほっと胸を撫で下ろし、煙草を加えて火をつけようとした瞬間、背後でがらりと戸が開いた。
「さあこい京!」
…俺は忘れていたのだ。俺が負けず嫌いなのと同様、八神も引くことを知らぬ奴だってことを…。逞しく張り詰めた筋肉を縁どるようにしてひらめく淡いピンクのドレスエプロンだけを素肌にまとい、すっくと仁王立ちして俺を見つめる八神の上気した顔がやけに色っぽく見えてしまったのは、たぶんきっと、いや絶対、何かの錯覚にちがいない…。
「続・エプロンの誘惑」
[11/10(火)17:31] 聖殿
「い・・・庵・・・?」
1cmと言えど、自分より背の高い男を色っぽいなどと考えてしまった事に俺は激しく戸惑い、その感情をごまかす為に、つい、意味も無いのに庵の名前を呼んでしまった。
「なんだ?京」
庵は、怪訝そうな顔をして振り返る。奴は今まさにベットインするために布団を敷いている所だった。
俺は庵に答える事など出来ないままに、ただ庵が布団を敷いている様を見詰めていた。
布団が翻るたびに、庵が身に付けているエプロンがその風で翻る。知らず知らずの内に俺の瞳は、その庵の姿に釘付けになって離せない。いや、離したくなかった。俺は自分のそんな無意識の欲求、感情の動きに愕然とした。
「どうしたんだ?京??」
固まって動かない俺に、庵は怪訝そうな、心配そうな顔をすると、敷きかけの布団を放り出して俺に近づいてくる。
俺はもうどうしたらいいかわからず、ただただ、庵が自分のそばによるのを見ていた。庵が一歩一歩近づくたびに、何故か頭に血が昇る。
庵が目の前に来た時にはもう、俺は自分の顔は耳まで赤くなっているという事を信じて疑わなかった。
「京。顔が赤いぞ・・・熱でもあるのか・・・?」
庵はそんな俺の様子にはかけらも気づかず、寄りにも寄って、俺の額と自分の額をくっつけて、熱を測るという暴挙をしでかした。
「無防備の誘惑」
[11/11(水)15:54] まつりん殿
「・・・?熱は無いようだが?」
不思議そうに庵が俺の顔をのぞき込む。
・・・!!可愛いぜっっっ!!
「い、いや、別にどこも悪くないぜ」
「ふむ。」
庵に説明すると、納得いかなさそうな顔をして、再び布団敷きに戻る。
案外割烹着なんか似合うんだなぁ。でもやっぱエプロンだろ。
・・・なんてにやにやしてたのがばれたら庵に殺されるかもな。
後ろから見ると・・・裸にエプロンってのは、実に機能的だ。
そのまま押し倒して後ろから・・・。
いや、初夜がそれじゃあまずいな。強姦みたいだ。
そう!俺たちは夫婦!!新婚ホヤホヤだ!
だったら庵だって何らかの期待ぐらいはしてるはず!!
(以上:京の思いこみ)
枕を置いてぽんっと軽く叩く。
どうやら布団敷きは終わったようだ。
しかし!そこで俺が見たのは想像と少し違っていた。
「おい、庵!何で布団が二枚も敷いてあるんだ!!」
「つかず離れず…」
[11/12(木)02:29] 由次郎
二つの布団は見事なまでの距離を置いて並んでいた。
無言でソレを振り返った庵は、そ知らぬ顔で俺に向き直る。
「布団は人数分敷くのが日本古来からの風習だろう」
どうやら初夜を何事も無く過ごすつもりらしい…。それはそれで都合が良い事になる、俺は別に八神を抱きたくてこんな事をしていた訳じゃない…きっと。
二つの布団を前に睨み合った俺たちは、それぞれ大人しく布団へと入った。
知らず八神がいる方向へと背を向けた格好になる…。
一つ屋根の下、俺たちは夫婦としている…その現実にまだ頭が混乱していた。
「真夜中の混乱」
[11/12(木)04:44] 指名2号・匿名希望殿
……夫婦ねぇ…。
俺は既に明かりの消えた部屋の、ほとんど黒にしか見えない天井を意味も無く睨む。少し離れた先には良くは見えないが八神がいる。さっきアイツは何を思ったか、裸エプロンなんていうある意味極めて高等なテクを…いや話振ったの俺だけど。そういや、アイツあの格好のままなのか?
…大体なぁ、何で俺が八神のヤツを妻にしなきゃなんねーんだ。俺はコレでも精神面はもっぱら普通人だし、学校でヤバイ成績取ってるけどこの関係が人として不毛という事は良く解ってるし、……いや、道徳とかそういうのは知らねーけど……ソレで無くとも相手はちっとも柔らかく無い男だぜぇ?八神だってそれぐらい百も承知の筈だろうが。
百も承知の筈……、…………………!!
その時の俺の起き上がり方は、まるでガキの頃に良く引っ繰り返して遊んだ虫のそれだった。上半身のバネで反射的に起きるのだが、その時の音が想像以上に大きかったらしい。
ようやく目の慣れた薄暗闇の中、こちらを向いてるであろう八神が酷く困惑した表情を浮かべてるのはたやすく想像がついた。
俺は少し離れた八神の布団まで素早く近寄る。身体を起こしているだけの八神と視線を合わせようと畳に膝立ちになるが、近くに寄った所為で八神は未だ裸エプロン状態という事実に冷静に成りかけた思考回路が一気に沸騰し、思わず頭を掻き毟り、額を壁に打ちつけたくなる。
畜生!!何がコイツをこんなにしちまったんだー!!
いいや、コイツもきっと誰かに騙されてるか言い包められているかに違いない。でなきゃ冷酷残忍無慈悲極悪と言う点に置いてはどこぞの犯罪者よりもタチ悪かった、あの八神庵が、幾らオロチから解放されたってもあのや・が・みが!……こんな姿で俺の前に居るなんて誰が予想出来たんだ。
やはり八神は困惑した表情で俺を見ていた。
「真夜中の恋」
[11/12(木)11:30] 聖殿
俺は困惑している八神に掛ける言葉も見つからず、混乱しながらもただ、何をするでもなく八神の顔を見つめていた。
八神も、先ほどから思い切り挙動不審な俺に掛ける言葉も見つからないのだろう。黙って、どこか心配そうな顔さえもして、俺の顔を見つめている。
暗闇の中とはいえ、至近距離である。お互いの顔だけはよく見える。そこの時点で俺はふと、こんなに近い距離で八神の顔を見るのは初めてだと言うことに気がついた。
いや・・・初めてではないのかもしれないが、少なくともそれは俺たちが戦っているときであろう。そんなときに落ち着いてお互いの顔など見れるはずがない。やはり初めてだと言っても良いだろう。
俺はせっかくなのだからと、まじまじと八神の顔を観察する。只でさえずらずらと長い前髪に隠されて、観察しにくい顔である。いい機会だ、これで奴の顔をしっかり覚えておこう。何しろ、前髪を切ったら町ですれ違っても気付なさそうな奴だからな。
俺は自分が混乱していたことも忘れ、どこか面白がりながら、奴の顔の観察を始める。
すると、奴、八神の顔は俺が思っているよりも秀麗な顔をしているという事に気がついた。
瞳はあくまで切れ長で、睫は長く、眦が少しつり上がっている。眉毛は細く、形がよい。少し眉毛が太い俺はなにやら羨ましい。鼻筋は通っていて高い。けれども、それは白人のようにやたらと高いのではなくてちゃんとバランスがとれている。唇は薄く、形がよい。色は、暗いのでよくわからないが、どうやら男には珍しく薄いピンク色をしているようだ。顔の輪郭は見事な卵形で、二十歳にもなって未だに丸い俺には少し羨ましい。
総合すると、八神は俺よりも顔が整っているということに俺は気が付いた。気が付いてしまった。
俺は、思わず激しくショックを受けてしまった。
そんな・・・!!!しつこく俺の命を狙ってきた。あんなストーカーまがいの変な男が俺よりも顔がいいなんて・・・!!!
しかも俺は自分の顔に結構自信を持っていたので、よりショックである。もちろん人の好みはそれぞれだから一概にはそうは言えないかもしれないが、やはりショックである。
ナルシーな紅丸に負けるならまだともかく、八神に負けるなんて・・・
ショックのあまり、瞬間的に頭に血が上った俺は、八神をこちらに引き寄せようと、奴が唯一身に着けているエプロンを強く引っ張る。
すると、元々、あまり強く結ばれていなかったのか、八神が身に着けていたエプロンの紐が外れ、俺は結果的に八神からエプロンを剥ぎ取ってしまった。
俺が自分のやったことに呆然として、自分の握りしめた手のひらの中にあるエプロンをぼんやりと眺めていると、八神は全裸になってしまったのが恥ずかったのか、掛け布団の中にごそごそと潜り込んでしまった。
とりあえず、どのような理由があったとしても他人から服を剥ぎ取るのはあまりいいこととは言えない。ので、俺は、八神に謝ることにした。
「すまん!!八神!!悪気はなかったんだ!!!」
すると八神は、困ったような顔をして、掛け布団の中から顔だけを出してきた。羞恥心のためか少し顔が赤くなっている。 八神は、と言うか八神家の人間は皆、透けるような白い肌をしている。その肌が今は薄く色づいている。その白い肌が紅に染まる様はひどく色っぽい。
しかも今、奴がしているその表情がまた問題だ。
その細い眉はわずかに顰められ、どこか怯えたようにさえ見える上目づかい。唇は誘うように僅かに開かれていて・・・ひどく扇情的だ。
自分ののどが大きな音を立てながら生唾を飲み込んだのを感じる。何キロ走ろうが乱れることのない鼓動が、少しずつ速くなり、息も荒くなっていくのを感じる。 間違いなく今、俺は八神に欲情していた。
その信じられない事実に俺は気づいてしまった。しかし何故だ?
その理由をはっきりとさせるために俺は、もう一度おそるおそるとだが、八神の顔を見てみる。すると、先ほどとは比べ物にならないほどのスピードで、俺の心臓が激しく全身に血を送り出していくのを感じた。
間違いない、俺は八神のことが好きらしい。
「恋の瞬間まであと一歩?」
[11/15(日)19:03] ラブに挑戦!あまる殿
八神の顔が近づいてきた。いや、違う。俺が顔を近づけているんだ。形のよい薄い唇を指でなぞってみる。それは、思ったよりもずっと柔らかかった。その柔らかさを今度は唇で確かめる。「口づける」という自覚もないまま、俺は唇を重ねていた。
「うわっ、わりィっ」
我に返って身を起こしたが、多分たっぷり30秒はくっついていた唇は、まだ八神の唇の感触を恋しがっている。パンチか炎をくらうだろうと踏んで目を閉じたが、何も来ない。おかしい…。
「怒ってない…のか?」
おそるおそる開いた目の先には、半身を起こした全裸の八神。下半身直撃の気配を押し殺し、下腹に力を込めて耐える。
「俺が神楽に言ったんだ」
聞き慣れた低音がつぶやいた。
「へ?」
「俺が神楽にお前の所へ行くと言ったんだ」
唇を、今度は俺が塞がれた。何がどうなっているのかさっぱりわからない。が、こんなふうに人の体温を感じて抱きあうことが、その相手が八神だということが嫌ではない。俺は八神が好きなのか? 欲しいのか? 自問自答よりも先に身体が勝手に動いた。本当は前から触れてみたいと思っていた八神の白い肌を撫でる。筋肉を確かめるように舌を這わせる。ちくしょう、やっぱりイイ身体してるぜ…。布団に隠れた下半身に手をのばすと、八神も俺と同じように兆しているのがわかる。そっと触れると八神の全身がぶるりと震えた。
「この先、進んでいいか?」
俺の声はやけにうわずっている。
「いちいち聞くな…お前はお前の好きにふるまうがいい。俺も、俺の好きにする」
少し乱れた息の下、かすれた声で八神が答える。赤い髪に見え隠れする上気した顔に欲情する。目の前にいるのは本当に八神なんだろうか。いやそれより、こうして八神に触れたいと思っているのは本当に俺なんだろうか…。
「瞬間、心重ねて(・・・体も)」
[11/16(月)12:51] 八言殿
自分の気持ちに整理のつかないままに、俺は再び八神の唇に自分の唇を重ねた。そして、八神の前に触れていた手も、少しずつ動かし始める。
その時、多分、反射的になんだろうけどもアイツが俺の肩を押して、押し返そうとしてきた。でも、そんなこと俺は気にしなかった。八神が嫌がってないのは分かってたし、それに何よりも、今、こうしてアイツと肌が重なっているこの感触が・・・俺にとっては気持ち良いんだから。
「ふ・・・・・ん・・・」
少し、息苦しそうに八神がしている・・・。長いキスと、俺の手の動きで体が熱くなってきているのが、俺にも感じられる。俺は、手の動きはそのままにして唇の方は開放してやった。
「は、う・・・。きょう・・・」
アイツが、目をきつく瞑って、なにか(・・・って、決まってるんだけど・・・)に耐えるように俺の肩口に額を押し付けてくる。いつもは人並以下の八神の体温が、今は俺の方が参ってしまうくらいに高くなっていて、うっすらと汗ばんでさえいた。アイツの、普段聞いた事の無いような震えた声が、耳から入ってくる・・・。
「い、いおり・・・」
俺は、自分でも無意識の間に「したの名前」を呼んでいた。
「燃える〇心!!」(題名って困る(;;)
[11/16(月)22:33] 側近殿
意識しないまま口から出た名前に庵の肩がぴくりと震えた。
俺の肩口に押し付けていた顔を上げ、ゆっくりと長い睫を震わせながら瞳を開いていく。
・・・なんか、眠り姫の目覚めの瞬間でも見ている気分だ。
しばらく俺と八神・・いや、庵は見詰め合っていた。
随分と穏やかな気分ではあったが、体の方はそれどころじゃなかった。
じんわりと下肢に集まる熱は散らすにはすでに昂ぶりすぎるほど昂ぶっていた。
このまま見詰め合っていたいのを目を逸らせることで振り切る。
「庵・・・」
名前を呼びながら再び肌に手を滑らせれば、庵の方から俺にしがみ付いて来た。
そして、腰を擦りあわせてくる。
積極的な庵の行為にすぐにでもイってしまいたい気分になった。
「本気!?」GoGo京ちゃん(爆死)
[11/16(月)23:41] まつりん殿
「・・・っふ」
庵が小さく声を挙げる。
俺の昂ぶりを感じているからなのか、変に気を使って俺に触れないように逃げようとする。
しかし、中途半端に隙間など無いわけで、力を込めずに擦っている状態になっている。
もちろんそのほうがある段階では刺激が強いのだが。
「庵・・・?お前は?」
「・・・んぅ?」
「お前はどう?気持ち良いの?」
「・・・んうぅっ!」
答えなんかわかっている。
こんなに近くに、触れ合っているのだから。
「ねえ・・・どう?」
「・・・う・・・っふ」
庵は耳まで真っ赤にしていやいやをするように首を振る。
「気持ち良くない?」
「あうぅ・・・ううぅ」
恥じらいからか、はっきりと答えようとしない庵の神経をきつく握ってやる。
「ふぁああぁっぅ!!」
背中を弓なりに反らす。しかし、これは俺に腰を寄せる行為である。無意識とはいえ、これには俺もかなりクる。
「迷うこたあねえ」
[11/18(水)14:18] 直樹殿
堪んねえ…なんて感想を持つ自分に俺はふと我に返る。
…ったく。俺もどうかしてるぜ。いくらご盛んなお年頃ったって、相手は
あの八神なんだぜ?それなのにこのビンビンで準備OKなムスコさんは
どうだよ。やっぱコレって八神が好きってことだよな。
うん、そうだ。いったれ!なんだか知らねえけど八神だってこんなにノリノリなんだし、迷うこたあねえや。人生犯っちまったモン勝ちだぜ。その後のことはまた後で考えればいい。
俺は途中まで煽った八神のソレから手を離した。まるで焦らすようだがそうじゃない。単に俺の方が限界だというそれだけのことだ。
「……っ?」
いきなり解放されて八神が躊躇いがちに目を開いた。睫が微かに震えている。…へへっ。待ってろよ、仔猫ちゃん。
不思議そうに俺を見つめている八神の足を、俺は前触れもなく掴んだ。
そのまま左右に広げると俺は体を押しつけていく。
「な……っ!?」
「入れるぜ…?」
俺の先端が八神に触れる。途端に八神の体が震えた。
「や、やめろ…っ!」
急にもがき出した八神に俺は押しのけられた。なんだよ、今更。ああ、そうか。初夜だから緊張してんのか?意外とカワイイな、お前。
「今更だろ…?」
ブチッ。
なんだろう、この音は…。まあいいか。そんなことより、と再び手を伸ば
した俺を八神は乱暴に払いのけた。
「八神?」
「これ以上は辛抱ならん!もう止めだっ!!」
おい、ちょっと待てよ。俺のコイツをどうしろってんだよ…。
「ふざけるにも程がある!入れるだと?男相手によくそんなことが言えたもんだな、貴様はっ!!」
…なんだとお?
「テメー、誘ってきたのはそっちだろうがっ!」
「ふん!…貴様が勝手にそう解釈しただけだろうが!!それによくそんなものにのってこれたもんだな」
う…。それは確かにそうだ。やっぱり俺が八神を好きってことなんじゃねえのかよ…。
「とにかくこれ以上は付き合いきれん。おおかた神楽の企みだろう。…くだらん!」
その八神の顔は心底嫌そうで…。俺、なんかすげえ馬鹿みてえじゃねえか。
…え?ちょっと待てよ、神楽?なんだよ、それ…。俺達ハメられたのか?
「天上天下唯我独尊」
[11/18(水)16:15] 聖(ひじり)殿
だが、俺は改めて考えてみる。神楽の企みなのは始めから明らかである。問題は、途中までおとなしかった八神が何故急に暴れ出したかである。
俺は少ない脳味噌をフル回転させて、考えてみる。ちなみに、もう限界状態の俺自身はほっといている。もうちょっと我慢してくれよ。
その1・八神は途中まではおとなしかった。
その2・俺にいろいろされて、感じていた。
その3・八神は、俺に入れられそうになってから急に暴れ出した。
これらから、導き出される答えはひとつである。八神はバージンであるが故に、こんなにも大きくて太い俺自身を入れられるのが恐くて、暴れているのだ。
後は、やっぱり照れているのだろう。可愛い奴だ。
俺は、八神に対する、愛情が更に高まっていくのを感じた。それと同時に俺自身もシンクロして更に元気になっていく。
「優しくしてやるぜ・・・八神・・・」
俺はそう呟くと、いったん台所に行ってきて、オリーブオイルを手に、再びこの部屋に戻ってきた。
「夢見る佳人」
[11/20(金)03:07] 愛のかけは師殿
「待たせたな、八神・・・・」
躍る胸、上がる息、高まる息子ッ!いやいやちょっと待て、高まるのは俺の恋情であって何もそんな下半身ばかりじゃないのさBaby、詩人ともあろう俺がつい八神の色香に興奮しちまった・・・・・やっぱ処女の扱いってもんはなたとえ相手が雲突く大男であろうともだ(いや突くのは俺だが)耳元で甘いセリフを囁いてやってそれからおもむろに食らいやがれえっ!
期待のあまり思わず零コンマ一秒で読点なしの妄想を展開させつつオリーブオイルの瓶を割れんばかり握り締めつつ戻った俺を待っていたのは。
・・・・・・ぽっこり人型に膨らんだ布団と開け放されたベランダだった・・・・
「逃げ出した花嫁」
[11/20(金)16:08] 聖(ひじり)殿
開いている窓からは、冷たい夜気が流れ込んでくる。身体はもういつでもオッケー準備万端、手からとはいわず全身から炎が出てきそうなほど、超燃え燃えファイヤーな状態の俺には全然寒くなど感じないが(それどころか真夏のように暑く感じるぜ!!!)、服も着ていない八神は寒いかもしれない、こんな気配りが上手な俺に惚れるなよ・・・(いや惚れてくれなきゃ困る)などと思った俺は八神のためにわざわざ窓を閉めてやる。
それにしても、頭まで布団をかぶって丸まるなんて、やっぱりあの態度は単に恥ずかしかっただけなんだな、ふっ可愛いぜ・・・などと考えながら、俺はおもむろにゆっくりとに布団へと近づいていく。
そしてギリギリまで布団へと近づいたところで、人型に膨らんだ布団へと被さる。へへ・・・驚いたかい?Baby。
だが、なにやら感触が変である。まず、布団から体温が伝わってこないし、妙に柔らかい。まるで、中に毛布でも入っているかのような・・・なにぃ!!毛布?!
俺は即座に布団を引き剥がし、中を見る。すると、俺が感じた通りに中は、人型に整えられた毛布の山だった。
だが俺は怒らなかった。八神はロストバージンが怖いだけなのだ。ここを優しく受け止めてやらねば、旦那として失格である。
とりあえず八神の捜索は明日にすることにして、俺は持て余されていた俺自身を、自分の手で解放させてやると(フッ・・・虚しいぜ)、見つけたら今夜の分も含めてたっぷりと可愛がってやるぜ。尻・・・いや、尻の穴を洗ってまってろよ!!!と、妖しい笑みを漏らしながら眠りについた。
朝目覚めると、なにやらパンツがべとべとして気持ち悪い、どうやらやってしまったらしい。しかも、掛け布団の上からでもはっきりとわかる、股間の膨らみ。朝とはいえ元気過ぎるぜ。俺の息子よ。まあ、昨日はつい八神の夢をみちまったからしょうがないけどな、などと考えながら俺はとりあえず目の前の問題を素早く処理しながら考える(でも、俺ってそんなに早くねえんだよな)。
八神はどこへ行くだろうか・・・必死に考えてみるが思い浮かぶのは昨日の色っぽい八神の姿ばかり。
これじゃあいけねえ、と考えてもやはり上手くいかない。
荒くなる息とともに、まあ、俺もやりたい盛りの高校生だもんな・・・などと考えているうちにフィニッシュをめでたく迎えた。いつもより早いとは効果抜群だな、などとちと感心する。
さてと、息子もおさまったし、八神を探しにいくぜ!!!・・・と、俺は朝っぱらから元気バリバリだった。
だが、俺は八神がどこに行くのか、奴の行動範囲も知らない。俺の追跡をおそれておそらく奴の実家にも帰っていないだろう。
俺は途方に暮れてしまった。
「庵ちゃんを探せ!」
[11/25(水)01:27] あまきち殿
「神楽ぁ〜出てきやがれぇ〜〜〜!!」
俺は勢いよく神楽の家のドアを蹴破った。何もかもがあの策士の仕業だとすれば、八神はここに逃げ込んでいるかもしれない。というか、ここしか俺には思いあたる場所がなかったのだ。
「暴力はいけませんよ草薙」
「そんなこたぁどうでもいい。八神を出せ」
「ここにはいません」
「じゃあどこにいやがるんだっ!」
たたみかけるようにして詰問する俺の剣幕にビクともせず、神楽はイヤな笑みを浮かべてこう言った。
「逃げられましたね。八神に」
そうだ、そうだとも。まんまと初夜の床からトンズラされたよ!…とは言えず、俺は言葉を呑み込んだ。
「お前が匿っているんだろう?出せよ」
「本当に知らないんですよ。私も」
どうやら嘘でもないらしい。それじゃあ、奴を探す手掛かりはゼロということか!?
「でも八神を追うことはできますよ」
「どういうことだ?何か知ってるのか?神楽」
神楽が「これを使えばね」と言って出してきたのは、携帯電話のようだった。
「何だケータイかよ。八神は持ってねえから役に立たねえぞソレ」
「これは特製の受信機です。こんなこともあろうかと八神には発信機をつけてあるのです。ただし、緊急時用なので常時つながってはいません」
「そんなこと言っても八神は自分の服は置いてっちまったぜ。今着てるのは俺のだ」
「大丈夫です。発信機は八神の身体のとある場所に直接つけてありますから」
身体に直接って言ったって、裸エプロン姿の八神にそんな機械はついていなかったぞ。あと俺が目にしていない部分といえば…まさか…。
「その部分に過度の刺激が与えられない限り反応しません」
「神楽…その部分ってのは…」
不吉な予感が頭をよぎる。まさかそこまでは…とは思うがこいつならやりかねん。
「どうやって装着したかは秘密ですよ」
やけに嬉しそうな神楽の態度から、俺の憶測は90%以上の確率で正しいと見ていいだろう。まったく八神も哀れなやつだ。いくら三種の神器といえど、やっていいことと悪いことが…。
「まあそのへんはあとからじっくり聞かせてもらうぜ神楽。で、この受信機はどう使うんだ?」
そうだ。八神を探すのが先決だ。
「発信機が反応すると、液晶画面にナビゲーションマップに八神の現在位置が紫で表示されます。同時に音声もオンになりますから、それを頼りに探してください」
…てことは、八神が誰かに手を出されてナニされそうになったら場所が分かって音が聞こえるってえ寸法か…なにィ!音!?…それはちょっとドキドキだぜ。いやそれより、そんな事態になってから駆けつけても八神は…。
「万一間に合わずに八神が傷モノにでもなったら、草薙、あなたとんだお間抜け亭主よ」
とどめの言葉を微笑みにのせて、神楽は「ごきげんよう」と家に入って行った。
仕方ねえ…とりあえずコレしかねえか…と手の中の発信機を見つめたとき、
「馬鹿者!どこに触っているっっ貴様〜〜〜!!」
裏返った八神の罵声が響いてきた。
[11/25(水)07:04] しみすけ殿
衣擦れのノイズみたいな音が聞こえ、受信機に耳を近付けていた俺はその雑音のあまりの大きさに思わず受信機を放り出しそうになる。それを寸での所で止め、もう一度発生する雑音から庵への手ががりを見つけ出そうとした。何故か心が小躍りしている気がするが、そんなのは後回しだ。早く庵を探し出さないと俺の輝かしい草薙家当主の経歴に大きな傷が付く……の前に庵が他のヤツに喰われる事の方が俺にとっては人生最大級の汚点アンド後悔になるに違いないつーかシャレにならねえ。
庵のバージン逃しただけでなく他のヤツに喰われるなんて、栄光ある選ばれし庵の旦那の称号を持つ俺として絶対許す訳………あ、鼻血。
「きっさまぁ〜〜〜、己のしている事が理解出来ているんだろうな!!」
「お前さんこそ何されてるか解ってる訳?」
鼻から盛大に血を垂れ流していた俺は、唐突に耳に入ってきた庵の怒号に我に返る。どうも昨晩から身体中の血液がたぎって仕方が無い。相手の煽り文句もまた俺の類まれなる想像力を更に活性化してくれちゃったりする。
庵を奪回したら俺も言葉でたっぷり嬲ってやろう。
しかしこの声、どっかで聞いた事あるような気がするな。
[11/25(水)16:03] 端月殿
「この男前から逃げるなんて百年早いの。」
「さぁ〜わぁ〜るぅ〜なぁっ!!!!!」
はっ!!!この声は……七枷社!?
俺がそー思っている時、携帯から庵の喘ぎ声が聞こえて……!!
「ひゃ……っう、や、やめっ…!イヤぁ……」
「イっちまいな〜何ってな♪えらい感度良いのな、お前。」
なっ……何ィ!?とすると庵は今貞操の危機!!
俺は慌てながらも冷静に思考し始めた。
庵=七枷がいる場所=共通するもの=バンドマン=ライブハウス!!
きゅぴーん!!
さすが俺様。神楽からの受信機を頼りに、オリンピックの選手もビックリ♪の早さで、オレはある場所に向かって行った……!!
「愛と性技の使者京さマン!ただいま参上!」
[11/26(木)16:08] 八言殿
ドドド・・・ドドド・・・ドドドド・・・ドドドドドドドドドドド!!!!!
渋谷の町をひた走る俺様!俺の後には、コンクリなのに何故か土煙がたっている。
まぁ、それほど俺は急いでるっちゅーわけだ。
はっきり言って、この辺にゃライブハウスも多いんだが(作者注:本当かどうかは知らない)、庵の俺に助けを求める愛の波動で(注:そんなものはありません)一発必中、俺は社と庵がいるライブハウスになぐり込みをかけることに成功した。
ドカァァァァァァァァン!!!!!
R.E.D.キックで楽屋の扉をぶち蹴破ったらば、そこには庵のナニに手をかけてる社がいるじゃねーか!
「て、てっめぇぇぇぇ!!何やってんだ!離せ!それは、俺んだ!」
叫ぶと同時に社の首根っこつかんで琴月・陽!ボガン!オリャ!
「あちゃちゃちゃちゃ!!・・・お、おまえこそ人のお楽しみタイム邪魔してんじゃねぇよ!この扶養家族が!」
こ、こいうつ〜〜(怒)!何気に禁句言ってんじゃねぇよ!
「うるせぇ!人の嫁に手ぇ出しやがって・・・姦通罪で訴えてやるぜ!」(注:使い方間違ってます)
俺様は、鼻息荒くこのあほたれに厳しい&残酷な(俺に取っちゃぁスゥイートラブリンな)現実ってやつを教えてやった。案の定、やつはあんぐりと口をあけている。思い知ったか!
庵の体も心もナニの時の声も感度も、みーんなこの俺、S○Kが誇るギャラクシースーパーアイドル主人公草薙京様の物なんだよ。
決まったな・・・。
ふっとニヒルに笑みを決めつつ、俺は庵の方へ寄ると、彼奴の腕を優しくとって耳元でささやいてやった。
「もう、大丈夫だぜ・・・。俺がおまえを守ってやるよ・・・」
極上に甘い声と、きらきらと王子様のような微笑み!やっぱ、俺って決まりすぎだぜ!
そして庵をお姫様だっこして帰ろうとした瞬間・・・・
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
キュピーん!ドカバキズコザスギャギャギャズザボカァァァン・・・!
庵のやつ、いきなり、八稚女を放ってきやがった!ゲージ、いつためてたんだよぅぅぅぅ・・・。
哀れ、俺は庵の八稚女をくらってその場にダウンしてしまった。
夫婦としてはともかく、こいつも格闘家だからなぁ・・・本気で戦わないとこっちの身がアブねぇ・・・。
庵は、ゼーゼーと肩で息をして、仁王立ちになりながら俺を見下ろして言い放つ。
「人を女扱いしおって!馬鹿者!」
んなこと言っても、お前って俺の嫁さんなんだぜぇ?・・・と心の中で思ったことが相手に分かったのか、
庵がさらに追い打ちの闇払いを放ってきやがった!
バジュシュシュシュ!!
ごあああ!!
もちろん、よけることの出来ない俺はもろに食らってしまった・・・。
瀕死のけが人に手加減する心意気とか 言う物はないのか?お前には!くっそー、こうなったら、こいつに思い知らせてやる!
俺は、気力とプライドと「庵にお仕置きしたい欲」を振り絞り、よろよろと立ち上がった。
俺の並々ならない雰囲気に気づいたのか、庵の表情にこわばった物が走る。
「へ、へへ・・・。そんなことして、無事ですむ思ってんのかな?いおりんは・・・」
「き、貴様・・・」
庵が、一歩二歩と後退する・・・逃がすか!
[12/04(金)06:17] 由次郎
俺が駆け出すより先に八神は全力で逃げ出した。
「てめぇ、逃げんのかよ!」
今まで敵前逃亡なんてしたことがないのを思い出す。だが八神は逃げるスピードを落とさず走り続けた。
「今日のところは見逃しておいてやる、五時からスーパーの特売だ…貴様も手伝え!!」
「…特売??」
八神はそのまま商店街へと駆け込んだ。全速力で走る長身の男二人をご近所の皆さんが呆然と見送る。走りながら後ポケットを探りだし、何やらメモを取り出した。
「今日は貴様の好物の秋刀魚がメインだ。それと草薙伝統の煮物を教わる予定になっている…静さんに頼まれた物全てを今から買うぞ!!」
すっかり主婦を滲ませる横顔に言葉も出ない。八神の頭の中ではすでに俺は買物荷物持ちその一なのだろう。
「行きつけのスーパーでティッシュがお一人様一パック限りで格安だ、貴様もいれば二つ買える!」
「ハハハ…そっか」
俺の中のお仕置きしたい欲は見るも無残に萎えきっていた。俺の知らないうちにこいつに何が起こったというのだろう…?主婦なんてやっていてバンド家業は大丈夫か
?不憫で何だか泣けてくる。
そうこうやっているうちに、小さい頃何度かお袋に連れて来られた覚えのあるスーパーへと辿り着いた。買物かごをワゴンに乗せた八神はそれを俺に渡す。
「早くしなければ、そろそろ秋刀魚が100円引きで売られている筈だ、行くぞ!」
勇ましく店内へと乗込む八神の姿はそこらのおばちゃん連中に負けない勢いだ。生鮮食品が陳列された辺りへと器用に人の隙間を行くが、俺はワゴンとおばちゃんに邪魔され八神の背を見失いそうになる。
「あらやだ、草薙くんじゃないの。今日はお母様と?」
ぶつかりそうになった顔見知りのおばさんが話し掛けてくる…今日ばかりは放っておいて欲しい。その上、つ…妻とです…何て…言えるはずねぇだろ!!
「ファミリーフレッシュを使って手をつなごう☆」
[12/04(金)11:00] 聖(ひじり)殿
妻とです、なんて言えるわけはない。しかし、この手のおばさんが好奇心旺盛で、今ここではぐらかせば、余計まずい事態になるのもまた確か。何とかごまかさなけれ
ば・・・
「今日は、お袋とじゃなくて、お袋に頼まれて、今うちにきている俺の従兄弟と一緒に夕飯の買い物しているんですよ」
と、ユキにすらめったに見せた事のない、全開の笑顔でさらりと嘘を付く。
「あらまあ・・・感心ねえ・・・それで今何を買ってるの?」
ごまかせたのはいいが、世間話は終らない。ちぃっ!!おばはんは手強いぜ!!!
「今は、庵がサンマを買いに行っています・・・あ、戻ってきた」
俺がおばはんと話しているその時、ちょうど庵が戻ってきた。もちろん手には三匹パック二百円の生サンマが二パック握られている。
「あらまあ・・・庵君っていうの?はじめまして、あなたかっこいいわねえ・・・」
庵の外見に少しばかり驚いたようだが、怖じ気づくこともなくおばはんは庵に話しかける。強いぜ・・・
しかし、庵がこんなおばはんと世間話が出来るのか?
「どうもはじめまして。草薙庵といいます」
俺の心配もなんとやら、庵は平然とおばはんと世間話をしている。しかもはにかんだような笑顔付きで・・・・おいおい!!俺はお前のそんな表情初めて見たぞ!!!
「今から何を買うのかしら?おばさんが安いのを教えてあげるわよ?」
どうやら庵の笑顔は俺だけでなく、おばはんの心もノックアウトしたらしい・・・妙に親切である。
「それはとてもありがたいです。是非お願いします」
今度は全開の笑顔付きだ・・・お前一体どうしたんだよう〜〜!!!
「買い物帰りに」
[12/08(火)23:10]側近殿
スーパーから帰る間際におばはんから割引券までもらい
庵のヤツは上機嫌で俺の前を歩いている。
なんか・・こうやって一緒に歩くってのもいいな・・
やつの後ろ姿をそんなことを考えてついて歩く。
両手に持ったぎっしりと詰め込まれた買い物袋が重かったが
早足で庵の隣に並ぶ。
そして声を掛ける。
「庵」 奴が立ち止まった。
庵の両手も荷物で塞がっている。
俺は一歩足を踏み出して奴の無防備な唇を奪った。
「閑話休題 への108番」
[12/13(日)03:34] カラス殿
多分端から見れば、俺達は「異様なカップル」に間違いない。でもいま、俺の
目の前数cmの距離でキョトンと目を見開いている庵は確実に可愛いいと思う。
(目ぐらいつぶれよ)
心の中で苦笑した。余程驚いているんだろう。その時。
「あーっ!あのお兄ちゃん達、キスしてるー。」
ガスッ。
「ギェッ!」
俺の爪先には缶詰類満載の買い物袋がヒットしていた。
「ち、ちちちち違っ・・・!」
項まで真っ赤になって否定する庵。う〜ん、こういうのもちょっと色っぽくて
いいかもしれない。やっぱ恥じらう姿ってのは必須アイテムじゃん?足元には
(俺の足元でもあるのだが)先刻まであれ程必死になって獲得していた買物が
散らばっている。
「おぅ、こういう時には気を利かせて黙ってるもんだぜ、お子様。」
学校帰りらしい小学生の群れに俺は思いきり男らしい微笑みで答えてやった。
「京っ!こんなところで貴様・・・!!」
「だって俺達、フーフなんだろ?」
・・・案外さらっと口にした台詞に、自分でも驚いた。でも庵がこれだけ動揺
するのを見られるなら、多少恥ずかしいのには目を瞑って、夫婦でいるのも
いい気がする。庵はと云えば、まだウゴウゴとなにか抗議しかけている。
俺はしゃがみこんで缶詰を手に取った。そういえばコイツ、お袋がどうとか云ってなかったっけ?
「庵・・・卵割れてる・・・」
結局卵は近所のコンビニで買う事になった。バッチリ店員とも顔見知りの
店だ。
「奥様と旦那とコンビニ店員と」
[12/14(月)15:15] まつりん殿
プシュー。
「いらっしゃいま・・・ああああっ!」
店員は俺達の顔を見るや絶叫した。
しかも、だいぶ複雑な。
「よお。しっかりバイトしてるかぁ?」
「く・・・草薙さんっ!はいっっ!俺、頑張っちゃってます!」
力一杯拳を握って答える店員。
そう。俺の弟子(ということになってる)矢吹真吾だ。
「真吾、おい。卵あるか?」
「あ、卵ですか?だったら、そこのジュースの隣ですっ!」
といいつつ自分で取りに行ってしまう。
庵はぽかんと口を開けて見ていたが。
真吾が10個1パックの卵を持ってくる。
「これですっ!」
あーあ・・・、そんなに強く握りしめるなって、全く・・・。
俺が頷くと真吾はレジを打った。
「えーっと、128円です」
なにい!?スーパーより全然高いじゃねーか!!
「おい、これ高いじゃねーかっ!」
真吾の襟首をむんずとつかむ俺。
「そ、そんなことないですよう(;;) どちらかといったら安いほうなんですぅ」
真吾は涙目で必死に首を振っている。
「草薙!」
庵を振り向くと、ぱしんと頬を叩かれる。
痛くしようという意志のない叩き方で。
「さっきのスーパーは特売の時間だっただろう。
無理を言うな」
あ。
俺が反省していると、庵のやつ、真吾の 服の乱れを直してやっている。
もっとも、真吾の表情は強張っているが。
仕方なく俺は真吾(レジ)に金を払い、 ぐすぐすと鼻をすする真吾から卵を受け取る。
庵は真吾の頭を撫でてやっている。
そんなこと俺にもしたことねーくせにっっ!
真吾はだいぶ八神に慣れたのか、突拍子も 無いことを言い出した。
「なんか、八神さんって、俺の初恋の人に 似てます・・・」
・・・なにぃ!?
[12/24(木)03:02] 覚醒もみじ殿
「クラスメイトの女の子だったんですけど…すごく可愛かったんです…でも一本筋が通ってて…思い出すなあ…。」
真吾は懐古モードに入って帰ってこない。一方八神はどう対処していいかわからないという顔で「そうか…」とかなんとかつぶやいている。
不意に胸が苦しくなった。この感覚を俺は知ってる。自分のものを人に触られているときのあの不快感。俺は八神を完全に自分のものと決め付けているらしい。
「八神、早く帰るぞ。魚が腐っちまう。」
強引に手をつかんで引きずるように自動ドアをくぐる。真吾はそんな俺たちの事など目に入ってないようでまだ何かブツブツ言っている。あいつ、こういうところがなけれ
ば無害なんだけどなあ…。
「京、離せ!!袋が落ちる!」
「ならまた買いに行けばいいだろう!?」
「何言ってる…もう特売は終わって…」
「ならまた真吾の所に買いに行けよ!!きっとサービスしてくれるぜ?なんてったって初恋の人にそっくりなんだからな!!」
ぴたり、と八神の足が止まった。何度引っ張っても動こうとしない。
「……貴様は一体俺に何を望んでいる?」
…………?
振りかえった俺の目と八神の目が真正面からぶつかる。
八神はただじっと俺の目を見つめながら微動だにしない。
「俺が踏み込めばお前は拒絶する。かといって何も関与しなければこれだ。一体お前は何を考えてるんだ?」
…そうだ…俺はさっきから八神の事なんか何も考えずに行動していた…八神の吐き捨てるようなセリフに胸が痛んだ。
何もしゃべろうとしない俺に、もう一度八神が問い掛ける。
「お前は一体、俺に何を望んでいるんだ…?」
「揺れる心」
[12/25(金)15:53] 聖(ひじり)殿
『お前は一体、俺に何を望んでいるんだ・・・?』
庵が俺にそう問いかけるのも当然だ。けれども、そんな事は俺にもわからない。
わかる事は、庵の側には俺以外の誰も近づいて欲しくない・・・という気持ちと、庵に触れたい、俺が、俺だけが庵の側にいたい・・・という酷く子供じみた執着だけ。
庵に問い掛けられるまで、仮にも夫婦なのだからこれでいいと思っていた。
夫婦なら、庵が俺の奥さんなら、庵は俺のもんだからだ。
庵に近づいて来る奴がいたら、俺のもんだと言って追い払えばいいと思っていた。
でも、庵が俺を拒んだら、庵自身が俺のもんになるのを拒んだら、一体俺はどうしたらいいのだろう・・・?
そんな事は、今まで考えた事もなかった。考えたくもなかった。
庵は俺の事をどう思っているのだろう?
俺は、庵に何を求めているのだろう?
いくら考えても結果はでない。
卑怯な俺は、質問返しで庵をごまかした。
「お前こそ俺に何を求めているんだ?」
「恋人未満の夫婦」
[1/08(金)14:53] まつりん
問いかけに、庵は答えない。
きっと、俺と同じ。答えなんか出ちゃいないんだ。
「おまえだって、答えられねーじゃん」
責めているわけじゃない。
でも、庵は所在なさげにうつむいている。
「俺は、おまえに色々望みすぎてるのかもしれねえ。でもな、おまえのこと、もっと知ってたら無理なんか
いわない」
庵はぴくりと身を震わせ、俺の目をじっと見る。
俺は庵のその視線に深い意味があるなんて気づく
わけもなかった。
「貴様に、俺のことなんて・・・。 わかるはずない・・・」
「始まったばかりの恋」
[1/22(金)06:51] 由次郎
それきり俺も庵も黙り込んでしまった。
買物袋の重みで白くなった指が痛々しく見えて、素直な愛しさがこみ上げる。俺は、いつもの意地を捨てて買物袋を持ってやった。
頭のどこかで気付いていた。いつのまにか俺は、八神に惚れている…他の誰にも渡したくないほどに。
「俺だって、何も考えてないわけじゃないぜ」
俺たち二人はバカみたいに不器用だった。庵は荷物を全部持った俺を不思議そうに見ている。
言葉じゃ嘘くさくなっちまうから、俺に示せるのはこんなことぐらいだ。
「何やってんだ、お袋が待ってるだろ!」
歩き出した俺を立ち止まったまま呆然と見ていた庵が慌てて追い掛けて来た。
夫婦から始まった俺たちの関係は、まだ始まったばかり…。
END