■ジョージア・インターンシップ日記■

#09: 5月23日

今日の決勝戦は4:00からでしたが、明後日から始まるシングル・ダブルス戦に出場する選手が朝から練習するということだったので、8:30組と12:00組に別れました。 私はその真ん中をとって10:00にテニスコートに出向きましたが、 丁度本部トレーニングルームに着いた頃に激しい雨。 選手達が屋内コートに移動する中、私たちは本部(といってもスタンドの裏に立てられた掘っ立て小屋ですが)で約2時間雨宿りすることとなりました。 私はメモなどをその間にとっていたのですが、 他のトレーナー達はカードゲームなどで時間をつぶしていました。 正午過ぎ、雨も上がり強い日差しでコートに溜まっていた水もすっかり乾き、決勝の準備はすべて整いました。

決勝戦はスタンフォード対 VCUでしたが、試合はスタンフォードの独壇場となり、見事カーディナルズナショナルチャンピオンの栄冠を手にしました。

試合後トレーナー達の雑談の中で、ESPN(スポーツを専門的に扱ったTVチャンネル)の女性リポーターが、あるスタンフォードの選手がベンチに戻るたびに脚の付け根にアイスバックを当てているのを見てしきりに「彼はどうしたんだ?」とトレーナー達にきいていた、という話をみんなでしていました。その中で、そのリポーターが「彼はスプリーンを Rupture(切断)したんじゃないのか?」といっていたそうなのですが、私はそれをきいてぞっとしました。というのも、そのスタンフォードの選手は数日前私がエバリュエーションをして、「大した事はない」と伝えた選手だったからです。私は恐る恐るスティーブに聞いてみると、彼は2年ほど前に実際スプリーンを切っているが試合中には切っていないとのこと。私は思わずほっと胸をなで下ろしたのでした。

考えてみると痛みが脚の付け根周辺にあったわけだからスプリーン Rupture である可能性は低いわけですが、もし本当に彼が別の内臓の怪我を負っていたと考えたら…。この時私は Hillcrest High School で働いていた時の CI であった Jose(ホゼ)との会話を思い出していました。それは、エバリュエーションをしてその結果を選手やコーチ、親などに伝えるという事についてだったのですが、その際気を付けなければならないのが、どのように彼らに伝えるか、ということでした。ホゼが言うには「絶対断定してはならない」ということです。例えば、あるアスリートが手首が痛いと言って来たとします。エバリュエーションの結果、ただの打撲だ、とあなたが判断したとします。しかし、ここで「あなたのけがはただの打撲です」とか「単なる打撲だからそんなに心配しないでいい」とかいうことは言ってはならないのです。というのは、ひょっとしたらそれは骨折かもしれないし、 別の怪我かもしれないからです。 もしあなたのエバリュエーションが間違っていて、後日レントゲンの結果骨折していたとなると、選手や親は「大した事無いといったじゃないか」とあなたに詰め寄ってくるでしょう。 ですから、「痛みなどからいって骨折とも言い切れませんが、 打撲かもしれません。 とりあえず今は冷やして様子を見て、明日医者に診てもらいましょう。」などといった、どちらにも転べるセリフを用意しなければならないとのこと。 「そんなんでいいのか?」と思うかもしれませんが、 これは自分の身を守るための策ともいえます。何故かというと、ここアメリカではちょっとしたことですぐに裁判沙汰になるので、「あなたがただの打撲といったからそのままにしておいたら、実は骨折でもう骨の形が元に戻らない。 これはあなたのせいだからあなたを告訴します」のようになりかねません。 それに、もし間違えてしまった時に失う選手、親、コーチとの信用は計り知れないでしょう。 そもそもアスレティックトレーナーに「診察 (Assess)」する権利があっても、「診断 (Diagnosis)」する権利が無いのですから当然の話ではあります。 ですから今回の件でそのことについて大いに思い知らされました。

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