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     【 確実な成長見込まれる食品宅配サービス … ベルリン 】

   閉店法によりショッピングの時間帯が制限されているドイツでは,時間
  に制約されずに買い物ができて,自宅まで商品を届けてくれる宅配サービ
  スの人気が高まっている。個人商店から大手スーパーや通販会社までが次
  々と参入し,サービス地域も拡大している。

  <大手が未参入のサービスに着目>
   ドイツの食品小売業界は価格競争が激しく,個人商店は通常のやり方で
  は大手スーパーやディスカウントストアに太刀打ちできない。そのため95
  年6月,シュツットガルトで小さな食料品店「エマおじさんの店」を営ん
  でいたテルナー兄弟は,食品の宅配サービスを始めた。

   商品数は1,200点に抑えられているが,正午までに電話やファクスで注文
  すると,その日のうちに配達される。50マルク以上の注文であれば配達料
  は無料だ。96年夏にはオンラインでも注文できるようにした
  ( www.Onkelemma.de )。

   現在,売り上げ全体の12%はインターネットによる注文である。ドイツ
  のスーパーや一般商店では店員の数が少なく,客は必要以上に時間を浪費
  する。商品説明や価格表示などの不備・不適切も多い。また,エレベータ
  ーのないアパートが多く,重い荷物を運ぶのに多大な労力を必要とする。
  このため宅配サービスに対する潜在需要は大きい。

   通信販売が普及しているドイツでも,オットー,クエレなどの総合通販
  会社は,即座に必要な日用消耗品や生鮮食品の宅配を行っていなかった。
  しかし零細個人商店が地域内で宅配サービスを始めると,需要のすそ野が
  広いことが判明した。同じ職場に勤める顧客数人で共同注文し,配達料金
  を分担する例も増えている。

  <ターゲットは共同購入者>
   共同注文に着目して成功したのは,モハメッド・バルバキ氏だ。同氏は
  96年に宅配サービス専門店「あなたのホーム・サービス」を始めた。

   カタログには4,000点以上の商品が掲載されている。店舗販売と同レベル
  の価格を維持しているが,1回当たり5マルクの配達料を商品価格に追加
  している。客は電話やファクスで注文するが,97年からはインターネット
  でも注文を受け付けるようになった( www.ihr-home-service.de )。

   バルバキ氏は同店のフランチャイズ化を始めており,現在ドイツ国内に
  5店を持つ。フランチャイズの条件は個人経営の店で,コールセンターと
  配送インフラを外部委託せずに自分で組織できることだ。これにより客と
  の個人的な接触ができ,大手にも対抗できる。

  <大手スーパー,通販会社も参入>
   大手流通業もこのサービスに注目し始めた。食品流通業で国内第4位のテ
  ンゲルマンは,98年に,ベルリンとミュンヘンでスーパーの有料宅配サー
  ビスをスタートした。99年に入ってからはサービス地域をフランクフルト
  とデュッセルドルフにも拡大し,99年11月時点の顧客数は約1万人であった。

   小型スーパーのボランタリーチェーンで国内第2位のエデカも99年10月
  中旬,南西部のバーデンヴユルテンベルク州全域の1万2,000店で有料宅配
  サービスを始めた。

   総合通信販売トップのオットーは、キールの食品卸,CITTIと合弁会社
  「オットー・スーパーマーケット・サービス」を設立する。2000年春から,
  2,500〜3,000点の食品や日用品をカタログやインターネットで紹介し,ハ
  ンブルク地域で1年間のテスト販売を行う。

   その後全国11の大都市圏で同様のサービスを開始する予定だ。大手から
  の資本参加で生き残り, 大手の進出によって,宅配サービスは小規模個人
  商店のニッチマーケットから脱皮しつつある。

   95年にハンブルクでカタログとインターネットによる生鮮食品の宅配サ
  ービス「アインカウフスネッツ」を開始したラーマン・ナセリー氏は,98
  年11月,国内第5位の食品スーパー,「シュパー」による50%の資本参加
  を獲得した。共同で「アインカウフ24」( www.einkauf24.de )を設立し,
  シュパーから経営者を受け入れた。今後シュパーの持つ物流網を利用して
  順次サービス地域を広げ,2001年までにはドイツ全国に宅配サービスを広
  げる計画である。

  <2010年には食品販売の10%に>
   食品の宅配サービスヘの需要は共働きの夫婦,子供のいる家庭,高齢者
  世帯などを中心に着実に増えつつある。

   流通業専門の調査会社,BBEの調査では,消費者の22%が食品宅配サー
  ビスの利用に関心を持っている。大手経営コンサルティング会社,ローラ
  ント・ベルガーは,98年には食品販売の0.1%にすぎなかった宅配は,
  2000年には1%,2005年には6%,そして2010年までには10%を占めるよ
  うになると予測している。