卿の逆襲 (KYO STRIKES BACK!!)


                      written by 狂極

第弐話:悪魔に魅入られた男達 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 愚羅市長を筆頭とする6人は、ロス市警察に立ち寄り例のデス−バレイへの道を 調べた後、練田署長の友人、芦腹老人を探した。ロス市警察の署長の話では彼は ここ何日か無断欠勤をしているとの事であった。 愚羅市長:どうする署長?君の友人はこの所出勤していないらしいが... 練田署長:どうもこうも有りません。彼は既に『卿』のWHビールスに汚染され      た可能性があります。とにかくデス−バレイに行ってみましょう。 山亀警部:署長!? 本当に行くんですか? やだなー... ファミコンゲー      ムみたいな悲惨な戦いをしなくてはいけないのかなあ.... 井戸検事:うっはっはっは、署長! 山亀警部は既に臆病風に吹かれていますよ      !何だったらこの際私が警部も兼任しましょうか!?  (虎視堪堪と警部の椅子をも狙う、元良識派の井戸検事であった.....) 木戸判事:良吉博士、我々は何としても此処で一旗挙げて将来の出世の糸口を掴      もうではないか!君は行くだろう!? 一緒に行こう!昔、コーマン      ジで戦った仲ではないか! 良吉博士:....えっ、私?...も?...ですか!?!?      ええ、はっ、はい...判事が行くのであれば私も。(しまった..      こんなにシリアスな状況だったとは...俺はただ...アメリカ西      海岸の白人金髪女の裸が見たかっただけなのに..うっ、かあちゃん      ...先立つ不幸を...) 各々の悲喜こもごもの思いを抱きつつも、とにかく一行6人はデス−バレイに向 かったのである.....卿と芦腹の罠が待っているとも知らず..... 彼らは到着した。デス−バレイの巨大な廃虚を前にした6人は全員何とも言えぬ 寒気を感じていた...... 練田署長:芦腹老人からのFAXによれば、ここの廃虚の何処かに『卿』が待ち      受ける地下迷宮の入口があるはずなのだが....みんなで手分けし      て、探そう! 何時になくシリアスな、練田署長であった..... 愚羅市長:(.....偉そうに練田の野郎めが...一体誰のお陰で署長にな      れたと思っているんだ!このままでは俺の出る幕がない...) いざとなると元より犬猿の仲の2人であった..... 木戸判事:あっ、これだ!この階段が...署長!! 有りました!!!      こんな所に階段が...... 木戸判事が云った通り廃虚のほぼ中央に地下に向かう薄暗い階段があった。6人 は練田署長を先頭にして階段を1歩1歩降りて行った。階段を降りきった所にコ ンクリートのドアがあった...その右には...     ”ようこそ、諸君! 卿の迷宮...階層迷宮へ...” と書かれていた。 愚羅市長:何に?階層迷宮??何だこれは??? 井戸検事:階層なんだから...階層なんでしょーね...市長。 練田署長:...うーん、わからん..... 山亀警部:階層ねー...何か、PCゲームの水龍士みたいだなー... ともあれ、6人はロス警察で十分に装備した各人の収納袋から拳銃と懐中電灯を 取り出して、まるで誘われる様にドアを開けて中に入って行った。全員が入ると 間もなくドアは...ギギギーイと自然に閉じてしまった。 良吉博士:げげ!しょ、署長!!ドアが閉まりましたよ!!!だっ、大丈夫です      か!?もう二度と出られないんじゃあ... 木戸判事:うるさい!喚くんじゃない!!博士、いい加減に覚悟を決めるんだ。      此処で手柄を上げなきゃ、俺達の未来はないぞ!! 一度、『卿』を裏切っただけに...悲壮な決意の木戸判事であった。全員ゆっ くりと当りを見渡した。そこは両側がコンクリートのブロック壁に挟まれた一本 の長い通路であった。通路の先は暗くてよく見えない。暫く歩くと再びドアあ有 った。ドアの横の壁に何やら文字が書いてある...;        【地下1階: 臆病者は去れ!】 愚羅市長:うーーーん、署長、どう思う...この迷宮の作りを... 練田署長:これは...明らかに『卿』の挑戦だな。しかもこの作りは何処かで      ......そうだ!井戸検事、お前も何か思い当たるだろう。 井戸検事:はい!署長、こっ、これはどうみても『ダンジョン.マスター』の地      下迷路とそっくりです。 良吉博士:だっ、ダンジョン.マスターだって。やだ!やだ!俺はやだー!俺は      この迷宮だけは嫌いだ!あんなアンテッドやドラゴンなんかの得体の      知れないモンスターと戦うったって、こんな拳銃だけじゃ、絶対勝て      っこないじゃないか。木戸判事、もう帰りましょう。早く帰って前の      様に引っ張った女の子を脅して...しましょうぜ。 木戸判事:帰るんなら一人で帰るんだな、博士良吉。お前も一度は死んだ体      、今更じたばた騒いでも『卿』の攻撃は間違いなくお前を襲う。 何も云わないでいるが、6人の心にはとてつもない『卿』の不気味な迷宮の圧迫 が着実に襲っていた。6人は覚悟を決めてドアを開けた。 中はだだっ広い部屋であった。しかも壁や地面は輝くような銅色に塗られていた 。6人は早速部屋の探索に係り始めた......一通り探索を終えた所で6人 は部屋の中央に輪になって座り相談を始めた。 愚羅市長:入って来たドアは別にして此処にはあと3つのドアが有る様だ。 練田署長:うん、しかもそれぞれドアの横の壁に案内文字まで書いている。親切      な野郎だ。『卿』と云う御仁も..... 山亀警部:左側が...『装備を補強せよ!』...か... 井戸検事:右側が...『便利な物もあるぞ!』ですね。そして真ん中が多分、      地下2階に通ずるドアでしょう。 6人は2手に別れて左右のドアから探索を開始した。先ずは左側は井戸検事/木 戸判事/良吉博士、市長達は右側のドアを開けて入った。 ...........暫くして、6人は意気揚々としてかなりの品物を集めて 舞い戻ってきた。 練田署長:よーし、全員の集めた物を調べてみよう。真ん中に出し合おう。 各々が集めてきた全てのアイテムを車座の中央に出してみると;    1.旧約聖書    2.ゲーム書1(RPG)    3.銅の鍵 4.マップ1(銅の間)    5.銅の矛槍    6.銅の鎧    7.銅の盾    8.銅の兜 の8個のアイテムが手に入ったのであった。 愚羅市長:装備は別にして他のアイテムは一応私が預かっておこう。 練田署長:まあ一応今回の旅のリーダーは私ですが、ここは市長の顔を立ててお      きますかな。 井戸検事:しかし、装備はどうしますか?練田署長。一応、ロス市警察で準備は      して来たものの全員軽装ですからねー。武器と云っても警棒とパイソ      ン357の44口径じゃ、心元ないでしょう。 練田署長:うーん、そうだなー...問題は誰に装備をさせるかだが... 一 同 :.....うーーーん.....どうしようかなー..... 誰もが一番先に装備をしたいのは目に見えているが、臆病者と云われるのが嫌で 口を出せないでいたのであった.....そんな中で.... 良吉博士:ぼっ、僕に装備させて下さい。お願いします。後生ですから。僕はも      う2度と死にたくないのです。何とかお願いします。 結局一同は、初めから恐がっていた良吉博士に銅の装備を持たせてやる事にした のであった。 暫く休憩をした後、6人は最後の中央のドアを開いて中に入って 行った。ドアの先には予想通り下り階段があった。階段を降りた先は、左右に曲 がりくねっていたが1本道で迷うような道では無かった。 そして...一同は 今までのドアよりは一段とがっしりした銅色のドアの前に辿り着いたのであった。 良吉博士:へっへっへ、なーんだ何も出ないじゃないか。『卿』の迷宮と云って      もだらしがないですねー、木戸判事! 幾ら『卿』でも急場凌ぎの迷      宮なんで、モンスターまでは手が回らなかったようですねー。 井戸検事:おお、銅のドアだ。鍵穴が付いている様だ。さーてどうするか。 木戸判事:しかし、何も出ないと云うのが気になるなー。何となく不気味で、ど      う思います、署長。 練田署長:.....うーん、分からない。...『卿』がこのまま楽に通すと      はとても思えんがなー。まあ、とにかくドアを開けよう。おい!良吉      博士!この鍵を使ってみよう。 市長から先ほど拾った銅の鍵を貰い、良吉博士に手渡した。良吉博士は早速ドア を開いた。すると...ドアの向こうには...1匹の...     カッパー.ドラゴンが大きな口を開いて待っていた!!! 良吉博士:ひっ、ひっ、ひっ、でっ、出たぁーーーーー。 井戸検事:なっ、何だ!このドラゴンは。色がまっ茶色だ。逃げろ! 木戸判事:おっ、おい、良吉!早く引き返せ!食われるぞ!! 愚羅市長:いきなり、とんでもないモンスターが出たもんだ。とにかく俺は逃げ      るぞ!署長、お前も逃げるんだ!! 良吉博士、お前は装備が完璧な      んだから、俺達を守るんだ! と云うが早いか、一同は先頭の良吉博士を残して一目散で今来た道を引き返そう とした...その時...市長の言葉を魔に受けて銅の矛槍を両手に支えてドラ ゴンめがけて突進した良吉博士の悲痛な叫びが木霊した; 良吉博士:ぐぇー、ぎっ、ぎゃぁーーーーー........... 良吉博士の叫びを聞いて一同が振り返って見ると........哀れ良吉博士 は矛槍諸ともカッパー.ドラゴンの口に飲み込まれ、そのまま体毎引きずられて ...ドアの向こうの暗闇に消えて行くのが見えた..... .................................... あとに残ったのは、また元の静寂だけであった............... 気を取り直した5人は急いでドラゴンのあとを追ってみたが、既にドアの向こう には広い黒鉄の部屋があるだけで、ドラゴンも良吉博士の姿も消えていた。 木戸判事:良吉...博士...うっ、うっ...畜生、『卿』め。 練田署長:やはり、『卿』の迷宮はただものではない。油断をしたのが大間違い      だった...すまん、良吉博士。 愚羅市長:......ごみん.....良吉..... 井戸検事:市長!そして署長!グズグズしていてもしょーがないです。我々も先      を進みましょう。良吉博士の仇を打ちましょう。 山亀警部:(やっと俺の台詞が回ってきた)...そうだ!井戸検事の云うとお      りですよ。署長!先を急ぎましょう。 5人は良吉を追う前に例によって付近の探索を開始した。しかし、彼らは動転し ていたせいもあり、今入って来たドアの壁に次の言葉が刻まれていたのをうっか り見過ごしてしまったのである;       【地下2階  : ここから始まる地獄の1丁目!】 【黒鉄の間 : 次の獲物は誰だ!】 彼らの地獄の恐怖はまだ始まったばかりであった........ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−         卿の逆襲  第弐話:悪魔に魅入られた男達   − 完 −

Copyright (C) 1996 by 狂極

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