3回忌


                      written by ケイ・プロクシマ

     ねえねえ      覚えてる?      初めてデートしてくれた日のこと      なんだあ 忘れたの?      ほら 帰りぎわに      髪の毛を2本抜いたんだけど・・・・      覚えてくれてるの?      そんなに痛かった?ごめ〜ん      私とデートしてくれるなんて夢みたいで      きっと 最初で最後だな・・・って思ったの      だから 記念にって      ねえねえ      知ってた?      かずこもよしえもりかも      み〜んなあなたのこと狙っていたのよ      え?知ってたって      もてもてだったものね      わたしなんか 相手にしてくれないとあきらめてた      最初に言われたもの      嫌いだって      いまさら いじめてるんじゃないのよ      感謝してるの      いろんな運命に      ねえねえ      もう一度やりたいね      何って・・結婚式      やりたくないって?      まあ 聞いてよ      だあれもいない教会に忍びこんで      ふたりだけでやるの      わたしは 今度は別のドレスを着るから      あ 笑ったな      もう似合わないって 顔に書いてある      指輪・・・今度こそ失敗せずにはめられる?      ほらまだ はめてるわよ      あなたのもここにあるわ      あなたのほうがサイズが小さいから      小指にちょうどいいわ      ねえねえ      あの娘ね      来年の春に こどもが生まれるわよ      わたしたちの孫よ      あなたおじいちゃんになりそこなったわね      男の子みたい      あなたに似るといいね      わたしは男の子は産めなかったから      やだ〜嫉妬しないでよ      そういえばこの娘を産んだとき      よかった〜と喜んだのは息子に愛情を      取られずにすんだと思ったからって 知ってるわよ      だいじょうぶ      いまでも あなたが一番好きよ      ねえねえ      一人で寂しい?      わたし約束を破ったわけじゃないのよ      あなたが死んだら 後を追うつもりだったの      ちゃんとわたしの膝枕で看取ってあげたでしょう      それも約束だったもの      あなたの骨にわたしの骨をまぜあわせるの      未来永劫ふたりはいっしょよ      いやだって?      だ〜め      それがわたしの最後の望みなの      あなたが死んでから      毎日毎日 あなたとのこと ひとつひとつ思い出してた      気が付いたら2年も過ぎてた      ねえねえ      はやく迎えにきてよ      そこにいるんでしょう?      そのロッキングチェアーに      いつもすわっているからって言ったよ      わたしには見えないの知ってるくせに      ちゃんとでてくるからなんて      うそつきなんだから      うそつきなんだから      わたしを残して逝ってしまうなんて      あいしてたのに      あいしてたのに      ねえねえ      ほら あなたの髪の毛      「薔薇の名前」に挿んでおいたよね      見つけたのよ      昨日      あなたの命日に

Copyright (C) 1996 by ケイ・プロクシマ

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