Some let me see


                      written by グラウコン

Some let me see 夢の中で見た突然の噴水のように 何かを叫び続けるおまえの頬は熱く燃え 痴呆の笑いが氷のように冷たく痛い おまえは世界をガラスの言葉で切り取った どんな風もおまえの唇をふるわすことはできず 他人とつながるどんな方途も失った おまえの声がおれの領土に響いたことはない おまえの何かを呼ぶような発声法はおれの領土には届かない おまえはすがたを持たない青空のようだから 異邦の言葉で語られる形のない青空にすぎないから おれたちの盲目の島では 入り江のように屈折した沈黙が 不安に憑かれた日々を透き通らせる おれたちには伝えるべき言葉がない なぜなら目指すべき場所を持たないから おれたちには親しくなるための言葉がない なぜならともに生きるいわれがないから おれは自らを定位しない 言葉はもはや意味を伝えない 目に見えるおまえの姿がおれの視線になる 逆光線に照らしだされるおまえの輪郭があらゆる形象を貫通して 世界そのもののように青空と哀しく溶けている 受肉せよ すべてが立ち現れるあの場所で 狂える青の現れるあの場所で おまえは受肉して ひとつの形象を結べ なにかが見させる その姿を あらゆるものが遠い過去の中に消えていく前に Some let me see おれはまだ正気でいられる

Copyright (C) 1997 by グラウコンADM02488@pcvan.or.jp


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