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或るサッカーファンの偽らざる述懐の巻

草莽工房庵主敬白


いやあ、日本のサッカー強くなりましたね。長いサッカーファンとしては、サッカーこそ日本人が世界に通用する可能性のあるスポーツだと信じて応援してきた甲斐があったというものだ。
サッカーはフィジカル面と技術力そして組織力が要求される。ただ日本人の苦手なフィジカル面の果たす部分が、やや少なく、技術力と組織力で或る程度カバーできるスポーツである。
身体の大きさが重要な割合を占めるバスケットやラグビー、アメフトは、国内で戦うのはいいが、世界レベルとなると、はっきり言って日本人向きではない。でも、サッカーなら日本はひょっとして世界一にだってなれるかもしれない。

私は、そう広言して日本サッカーを応援し続けてきた一ファンである。 そして、今、ようやく技術力が世界レベルに達しつつあり、もともと得意な組織力とあいまって、もはやアジアではトップクラスに君臨する段階まで達したのである。
いやなニュースの多いご時世だが、サッカーに関しては、本当に嬉しい今日この頃である。
もちろん、アジアのレベルは高くない。世界のトップクラスに立つためには、さらに技術を磨くとともに、身体能力の高さも必要だ。中田が世界レベルなのは、技術面だけではない。フィジカル面の強靭さも兼ね備えてきたからなのである。

その昔、釜本・杉山時代というのがあり、メキシコオリンピック銅メダルという一瞬の輝きがあるが、それ以来世界舞台は踏もうにも踏めない。アジア予選すらまず突破できない冬の時代が続いた。もちろん韓国には勝てず、東南アジアのチームにも苦戦していた。
日本リーグも観客が呼べず、有望な少年達にもサッカーは人気がなかった。

そして、ようやくJリーグの開始から状況は変った。ヴェルディーとマリノスという有力チームに引っ張られ出航したJリーグだが、ジーコによるアントラーズの強化と人気化こそ日本サッカーに大きな影響を与えた。
オフト日本はドーハの悲劇により敗れたが、そのオフトはジュビロという優れたチームの基礎を作った。ベンゲルによるグランパスの活性化も見逃せない。
その後、加茂日本から岡田日本にいたりジョホールバルの感激によりワールドカップ初出場を果たす。
フランスでは力の差を思い知らされ、トルシェ日本が誕生する。A代表はまだ成果を挙げていないものの、トルシェはワールドユース選手権で日本を準優勝に導き、22歳以下のチームは韓国に連勝しオリンピック予選も無敗で突破した。

海外の名プレーヤーを招請して当初大きな人気を得たJリーグも、選手の名前で客寄せする段階から落ち着きを取り戻し、いまや逆に世界へプレーヤーを送るようになった。
現在、中田と名波は世界最高のプロリーグであるセリエAで活躍している。

かつて奥寺氏がドイツのプロリーグへ行った時、周囲の目の冷たかったこと。国が強化してきた選手が外国へ行ってしまうとは、なんたる裏切りという風なムードがあったのは事実だ。
ところが、それに比べて、今の中田の扱いはどうだろう。日本の国を代表するスター扱いである。

オリンピックアジア予選全般を通じて、安心してゆっくり見ることができた。こんなことが、かつてあっただろうか?
感慨深いものがあり、夢のようである。
一段階、上に出たことは間違い無いだろう。何より、コンスタントに世界の舞台に立てるようになったのだから。
選手にしても逸材ぞろいだ。中でも攻撃的MFの素晴らしさはどうだろう。中田、小野、中村が君臨し、小笠原や藤本、奥もいる。サイドも三浦(淳)、平野、本山、市川、明神、西谷、川口それにもしアレックスが帰化したらどうなるだろう。どのように組み合わせるべきか迷うほどの、若手では世界でも有数な豪華中盤である。
守備的MFも稲本を筆頭に多彩で、上の年齢には名波、福西、伊東らがおり心配無いだろう。
DFに関してはトルシェ流のスリーバックが一応成功し、中沢、松田をはじめ大型のタレントが育ってきた。不安はあるものの方向は見えており、その線で強化していくだけだ。

問題はあいかわらずFWだろう。スピード、シュート力、強靭な突破力という身体能力が大きく要求されるFWには、世界クラスのタレントがいないのは事実だ。ブラジルにはロナウド、アルゼンチンにはバティステュータ、イタリアにはビエリ、ドイツにはビエルホフ、スペインにはラウル、イングランドにはオーウェンがいる。今のところFWに関しては、日本は韓国やイランにも見劣りするようだ。
そこが解決されないと、世界レベルでは引き分けることはできても「勝てない」。まずワールドカップ一次予選は突破できないだろう。2002年までに成長する選手が現れるだろうか。

現時点では平瀬が一歩リード。柳沢・小倉は復活するのか。新たに代表候補となった久保山はどうか。高原、福田、吉原、小島はもう一皮むけるか。それとも北嶋や永井雄、西といった新顔が飛びだすか。いやもっと若く、現在、高校3年生の矢野(帝京)や2年生の田原(鹿児島実業)が期待の星かもしれない。
上の年齢では、経験をプラスした城、久保、岡野、西澤、森島らが候補だ。 2年先では中山、呂辺須、カズ、福田(正)は年齢的に少しつらいか。 うーん。FW問題は日本サッカーファンの永遠の課題かもしれない。

ちなみに、独断と偏見ついでに「未来の夢の日本代表」を考えたので、興味のある方はこちらを見ていただきたい。

とりあえずは、今年のオリンピックである。一人は平瀬が有力だが、流動的でまだまだ分からない。
中田を前に置くのも一案だが、彼の最大の持ち味であるキラーパスが減ることになるので私は反対だ。年齢例外が数人は認められそうだから、久保あたりを持ってくる手もあるが・・・トルシェのお手並み拝見である。

私はトルシェを高く評価している。ある程度長い期間、権力を与え任せたことが好結果を生んでいる。ブラジルやイタリアでなく、ワールドカップに初優勝したフランスという上昇力のある国から招請したのも成功の一因だろう。
日本人監督でも失敗した中田の扱いが結構うまいのにはびっくりしている。突出した若者には外国人監督のほうがうまくいくのかもしれない。

トルシェは、気持ちを前に出すアグレッシブな選手を使う。柳沢より平瀬を、小笠原より藤本を好むのはそのためである。得点力が課題の日本にとっては、このやり方は、単純だが正解だと思う。
そうした攻撃的な方針で、平瀬・本山・中沢を発掘開花させ、中村・宮本・中田浩二をより以上に成長させた功績は大きい。私はオリンピック予選で過去にない幸せを味あわせてもらった。オリンピック本番でも大いに期待出来るだろう。楽しみだ。

が、その先は一体、A代表をどのように構成し強化していくのか、これからまさに真価を問われる。どこの国も懸命に強化に励んでいるのだ。世界で最も競技人口が多く愛されているスポーツであるサッカーは、当然、世界で最も競争の激しいスポーツである。さほどの施設も必要無いサッカーは、発展途上国にとっても最重点スポーツである。カメルーンがその良い例だ。
だが、それだからこそ最もやりがいのある面白くて困難な仕事だともいえる。 世界は甘くはないが、ここまで来たら、当分はトルシェに日本の運命を託す他はないだろう。

Ver1.1(2000.1.1)


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