僕の海と僕の空
                                  By 一歩

====================================== 第一部 ===== ABCDによるお話 =====

〜 僕の海 僕の空 〜

A:「『うみ』と『そら』、どっちがいい?」
B:「……うみ、かな。」
C:「そら、ですよ。」

 某創作系フォーラムのオフミである。

B:「さあ、遊びに行こう、といって最初に浮かぶのは、うみだ。」
C:「それはその人の趣味によりますよ。現に私は、そらですよ。」

 共同執筆企画の、設定細部の調整を主目的とした集まりだった。
 のだが、例によって、どうでもいい脱線話にもつれ込んでいる。

B:「うみには男のロマンがある。」
C:「そらにだってありますよ。」
B:「釣り、サーフィン、スキューバダイビング、ヨット、……
   沢山のレジャーがある点から言っても、うみの方が一般的だろう。」
C:「そんなの古いですよ、これからならハンググライダー、パラグライダー、
   他にも色々とあって、トレンドといえばそらになりつつありますよ。」
B:「何をチャラチャラとそんなレジャーしてるかな、これだから最近の奴は。」
C:「それをいっちゃあおしまいですよ、あなたたちが時代遅れなんだ。」

 なごやかな雰囲気こそ壊れはしないが、対立は深まるばかりで、一向に解決に向かわない。

B:「より身近にあるのはうみだろう。大体、全ての命はうみから生まれたんだ。」
C:「母胎回帰願望ですね。回帰より進歩の方がテーマ的じゃないですか。
   夢をみるなら新世界への挑戦、そうと来たならそらですよ。」

 そんなやりとりをぼおっと聞いてる奴もいる。

A:「やれやれ、決着がつかないな。」
D:「やっぱ、第一案のままの方が良かったか。」
A:「! お前が最初に異義を唱えたんじゃないか! いいだしっぺが無責任に。
   全く、なんにでもとりあえず逆らってみせるんだからな、お前は。」

 それでも、そろそろ話を切り上げても良さそうだ。意見も出尽くしたようだし。

B:「『船』があるくらいだから、やっぱ『うみ』だ。」
C:「でも、『空間』て言うぐらいですから『そら』が適切ですよ。」
A:「はいはいそこまで、二人とも。
   それぞれに思い入れがありすぎて統一がとれそうにないから、
   最初の提案通りで行きましょう。それでいいですね?」

 もちろん、誰にも文句は無い。もともと、単に好みの問題とは判っているのだから。

A:「じゃ、それで決定って事で。
   作品中、今回のテーマの『宇宙』の読み方は『うちゅう』で統一しま〜す!」


B:「なあ。」
C:「はい?」
B:「おまえ、トミ○監督作品が好きだろう。」
C:「そういうあなたはマツモ○ファンですね。」
B:「……ばれたか。世代だよなあ。」
C:「お互い様ですよ。へへへへへ……」

 二人は肩を組んで歩き出す。行き先は、カラオケ屋。

B:「いいか、アレのオープニングは俺が唄うからな。」
C:「もちろんです。その変り、アレの映画テーマは僕のモノですからね。……」


Reference
(アニメ)機動戦士ガンダム シリーズ/富野監督
(アニメ/漫画)宇宙戦艦ヤマト、キャプテンハーロック/松本零士
(他)某創作系フォーラム

============================================ 第二部 ===== Bによるお話 =====

B:「おい、編集長。作品あげてきたぞ。」
A:「はやいね、どれどれ、……なんだ、お前、やっぱり海にこだわってるのか。」

〜 水の惑星 〜

……人は、その生活空間を宇宙にまで拡げつつあります。
  今は、後々の歴史にまで語り伝えらる時代なのかもしれません。
  そう、語り継ぐ、といえば。
  生物には、ご先祖様から受け継いだ『記憶』がある、というのは本当でしょうか。
  種族的記憶とか、遺伝子上に記憶が刻まれるってネタは、SFじゃあよく聞く話
  です。実際、遺伝子だって只の化学物質に過ぎません。
  宇宙を旅した者の遺伝子に、無重力特有の変成作用がおきて、それが子孫に伝わ
  っていったとしても不思議じゃない。
  すると……

 無重力の宇宙の海の中を、流線型の一団が光の速度でこちらへ向かってくる。

「おい、本当にこんな辺境に文明が栄えているのか?銀河中心からかなり外れているが。」
「この方向から、一連の人工としか思えない電磁波が来たのは御存知でしょうに。もっとも、数千年前から電波は途絶えていますがね。」
「全く、誰が居たのか。何があったのか。」
「それを調べるのが私達調査団の仕事ですよ。」

 彼らは、銀河中心地の無重力地帯で発生し発達した異星人、いや、星じゃないないから、異宇宙人だ。
 弱肉強食、食物連鎖、無重力でも自然界の掟は変らずに存在する。
 彼等も又、そんな切磋琢磨の中から生まれた知的生命体だった。

「見えてきましたよ、発信地は、あの太陽系です。」
「太陽系? おい、そんな所に何があるんだ。
 生物というものは無重力の海の中でこそ生まれるものなんだぞ。あんな複雑怪奇な重力井戸の下では、どんな生物だって生まれるはずが無い。拘束条件が強すぎるのだよ。こんなの、小学生だって知っている。」
「でもですね、実際に電波はあそこの第3惑星から来てたらしいんです。」
「ふん。しかたない、調べるだけ調べてみるか。このまま帰ったんじゃ本部に言い訳がたたんからな。」

 穏やかなる宇宙空間からのぞめば、惑星表面は何処だって大暴風だ。いつも嵐の吹き荒れる、土くれの上になんぞに降りたがる奴はいない。
 それでも何人かの下っ端が、命令とボーナスに釣られて、狭くて汚くて体の重たい地表へと派遣された。

「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶ部長!」
「なんだ、騒々しい。」
「下にいった奴等からの報告です、生物がいます! それも沢山!」
「ななななななななななにい!」

「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ部長!」
「またか!」
「それが、生物だけじゃなくて遺跡も出てきたんです!
 あれは、どうみても人工的なもの、知性による文明の産物だ!
 下には、間違いなく知的生命が住んでいたんですよ!」
「なななななななななななななななにい!」

「それで、その知的生命は?」
「判りません。地表には大規模な破壊の跡がありまして。
 天災か、戦争か、何が起きたかは目下調査続行中です。
 知性体の方は、さっぱり。その破壊で全滅したのでなければ、退化して知性を失ってしまっている可能性がありますね。」
「すぐに地表の全生命の分析を命じる! もしまだその知性体の子孫がいるなら、草の根分けても捜し出すんだ!」

 アメフラシの分析、反応無し。トンボの分析、効果無し。
 猫の分析、文明を築ける程の知性と呼べるものは無し。
 もしかと思った松の木の分析、やっぱり結果は否定的。
 だが、しらみつぶしに続ける分析に、一筋の光明が現れた。

「おい、このサンプルの遺伝子分析チャートを見ろ! 宇宙航行の痕跡があるぞ!」
「何! これが宇宙航行種族だと? こんな低級生物が、各地に見られる遺跡の創造者の成れの果てだというのか!?」
「確かに、姿形だけなら私達と似ていなくもない、だが、あまりにも体の構造が単純すぎる! 無重力真空の宇宙でなぞ絶対生きて行けないぞ!」
「俺だって信じられん! だが、チャートが、科学分析がそうだと示しているのだ!
 時の流れと進化(退化)とは、かくも不思議なものなのか。」

 更に文明の解析は続く。

「ふむ、ほぼ惑星全域に都市がある。昔は何処にでもこの生物は行けたらしい。」
「とすると、この星は海洋惑星だったようだな。陸地は島ぐらいなものだったのだろう。ほら、証拠の貝の化石だ。山の上から発見された。」
「5本指のキーボードを発掘した。この生物の首の根元についてる対の触手、この、うちわみたいな奴な、昔は指だったらしいな。」
「どうやら彼等は、身の回りの世話などの為に、2本足の奴隷生物を利用してたらしい。この奴隷を綺麗に着飾らせるのがステイタスシンボルだった様だ。」

 次々と上がってくる肯定的な調査結果。
 部長もじきじきに地表へと降りてきて、調査の陣頭指揮をとりはじめる。
 無重力生物である彼等は、地表では、特殊な宇宙服ならぬ地上服を着てないと生きていけない。これが結構うざったいので、今まではさぼっていたのだ。
 だが、そうもいってられなくなってきている。

「信じられん。だが、確かにこの重力井戸の底で、一つの文明が発達し、そして、滅びたのだ。もう少し、あと数千年待っていてくれたなら、私達とコンタクトが出来たというのに!」

 狭くて苦しい地上服の中で、部長は悔しさにうち震えた。
 彼等の体は、無重力での高速移動性等等の問題で、流線型に進化している。
 その流線型の体を激しくよじって悲痛に訴えかける。

「もう一度、往時の姿を取り戻してくれ、失われた文明のマスター達よ!」

 目の前の水槽の中を泳ぐメダカは、その訴えにも何の反応も示さず、
 ただ無心に水草をつついていた。


……宇宙の実験で孵化させたメダカの子孫は、日本各地で大切に飼育され、その数を着実に増やしつつあります。……


Reference
(小説)ブラッド.ミュージック/グレッグ.ベア/早川文庫SF
(小説)青の騎士ベルゼルガ物語 シリーズ/はままさのり/ソノラマ文庫
(史実)NASAと毛利さん


============================================ 第三部 ===== Cによるお話 =====

C:「議長、へへへ、実は私も。」
A:「……お前は空かい。」

〜 鳥頭 〜

「提督、ついにこの計画も終盤ですね。鳥の脳味噌を艦載機に組み込んで、半自動運転化させるなんて、よく思いつきましたね。」
「ふふふ、芸は身を助ける。わしはSFが趣味でね。
 本当はシャチやイルカ等、海棲哺乳類の方が良かったのだがな、奴等の脳は複雑すぎて、とても接続出来んそうだ。その点、鳥はまだ単純でね。
 鳥頭だからな、『三歩歩くと恩を忘れる』と言われてるように、教えた事をすぐ忘れるのが欠点といえば欠点だが、なに、人も乗ってる半自動化で良いのだから、それで充分だ。」
「試作のイーグル機とフクロウ機は、おえら方を納得させるだけの戦果を上げましたしね。宇宙という名の空を駆け巡るあれらの姿、興奮しました。」
「あれは嬉しい誤算だったよ。イーグルの一撃離脱、フクロウの策敵と忍びよりの技術、まさしく本能による生来のものだった。
 あれを教訓に、今回は様々な鳥類を試してみさせている。次の正式採用内定機種はどれになるか、今から楽しみだよ。」
「提督、トトカルチョしますか?」
「しぃっ。いかんなあ、幹部たるものがそんな事を提案しては。」
「では」
「うむ。三番機に一口」

「提督、テスト開始します。」
「うむ。テストとは言え、仮想敵には実弾を使用させている!
 鳥の本能がごまかしを見破った時、その生来の技能を発揮しない可能性があるからだ。だから諸君、本テストは充分に気をつけて行って欲しい。
 テスト開始!」

「スズメ部隊、小惑星帯に突っ込みます!
 あ、あれ? そのまま小惑星に着陸してダベりはじめました!」
「小惑星は電線じゃないんだぞ」

「ツバメ部隊、ホーミングミサイルを追跡、捕捉。
 見事に絡め取りました。
 あ! そのミサイルを抱いたままこちらに帰ってきます!」
「どういう事だ! 裏切ったのか?」
「いえ……多分、雛に餌をやるつもりではないかと……」
「餌? なんだ、それは。て、待て!
 わしはミサイルなんぞ食べんぞ!」

「離艦しない機体があります。」
「ええい、どれだ!」
「あれは、三番、ダチョウ機です!」
「なぜ飛ばん! アイツには超高速機として期待をしておったのに!
 ……ああ、そうか、ダチョウは飛べない鳥だったな……」

「あのアホ! 何故ミサイルを避けん! ああ、当たった! くそ」
「大丈夫、不発の様です、至急あの機に不発弾処理班を向かわせます。
 ……あ、駄目です、あの機体、味方からも逃げ回ってます。
 あれの子機がその後をついてまわってて、行列を作って。
 不思議だなあ、なんであんな戦場の真ん中で大名行列してて、死なないんだろ。」
「何の機体だ。」
「カルガモ機、ですね。」

「ええい! あれもだ、あれもお! 逃げるばかりだ、何故攻撃をせん!」
「お待ちください……あれは、ハト機ですね。あ、なるほど。」
「何がなるほどだ」
「ハトは平和の象徴ですよ、戦争なんかするはずありません。」
「……貴様、本気で言っとるのか」
「当然です」

「五番機より入電! 機体が発狂したそうです。」
「はあ? 番号じゃない、鳥の名で報告しろ」
「ペンギン機です。」
「それが何故発狂を」
「提督、判る気がします。多分、空間恐怖症ですよ。海と違って、真空じゃ水を体に感じれませんからね。」

「わしが、わしが発狂したいわ……
 ろくなのがおらーん!」

『提督、君には失望したよ。実に下らん計画を実行したものだな。』
「幕僚総監殿、それは」
『言い訳は無用』
 プツッ。
「提督、お礼を言いますよ。どうやら採用内定機はないらしい。
 トトカルチョは親の総ドリですね。今年はトリに縁がある」
「副官!」
「提督。いやあ、今だから言いますが、前々から無理があったと思ってたんですよ、
この計画」
「小佐! お前もか!」
「提督、」「提督!」「提督ぅ」……

「くそお、くそお、くそお……
 ろくなのがおらーーん!!!」


Reference
(小説)航空宇宙軍史 シリーズ/谷甲州/早川文庫JA
(小説)海底牧場/アーサー.C.クラーク/早川文庫SF

============================================ 第四部 ===== Aによるお話 =====

A:「みんなこだわってないフリして、実はこだわってるんだからなあ。
   まったく、ぶつぶつ」
D:「そういう君は、どんな作品に?」
A:「まともに宇宙で書いてきたよ。短いけど。」

〜 3分間クッキング 〜

 てんてけてけてけてんてんて〜ん
  てんてけてけてけてんてんて〜ん

 まず、材料を良く混ぜ合わせます。    虚空の宇宙に塵が集まり、
                     やがて太陽が産まれた。
 ほらほら、うまく混ぜないと、      何の歪みか、惑星の一つが砕け、
 ダマができてしまいますよ。       小惑星帯になり、地球には月が出来た。
 これをじっくりと醗酵させます。     青い星にシダ植物が、魚類が、昆虫が、
 膨らんできたら、潰して下さい。     恐竜が、栄えては又滅びていった。
 これを何度も繰り返します。       
 今度は少し長めに寝かせて下さい。    やがて人類が産まれ、栄えた。
 ん? 少し寝かせすぎましたか?     自然では発生し得ない様な、
                     産業廃棄物が流れた。
 これをオーブンでこんがり焼いて、    太陽黒点が急速に増加した。
 さあ、出来上りです。          太陽系から生物の姿が消えた。
 美味しく召し上がりましょう。      
 どうです? 今回の出来は?       そして、ブラックホールに呑まれた。
 んー、美味しいです!          
 でも少しピリッときますね?       
 長く寝かせすぎましたか。        
 その時でしょうね、           
 酵母以外の雑菌が入りましたね、     
 これは。                
 よし! 今度こそ、もっとうまく……   又、虚空に塵芥が渦巻き始めた。


 p.s. 銀河系も、惑星系によく似ている。ひょっとして……


Reference
(テレビ)某料理番組
(料理)パンとケーキの作り方
(コマーシャル)軍艦島

============================================ 第五部 ===== Dによるお話 =====

〜 そして僕達の海と空 〜

D:「まとも、ねえ……」
A:「不満そうだな。」
D:「や、別に。」
A:「で? そういうお前は? 作品らしいの持ってきてないが。」
D:「暴露話の予定。」
A:「え?」
D:「俺、ここまでの皆の経緯をそのまんま書くよ。」
A:「あ。……そのテがあったか。お主もワルよのう、桔梗屋。」
D:「いえいえ、お代官様ほどでは。ささ、黄金色の饅頭でございます……」
A:「ふぉっふぉっふぉ、て何やらす。でもお前、詐欺だよ、そりゃ」
D:「ふぉっふぉっふぉ」


 そうして出来たのが、この文だ。
 詐欺にあった貴方には、一言謝罪をしておこう。
 では、また会う日まで壮健なれ
                      編集後記に変えて 某月某日 D.







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