無責任な横道
*In the underside.*

「大潮の道」 マイクル・スワンウィック



「3度目の命令だ、行け。」
 その言葉で内部の何かが変わった。私は今、はじめての視点で目の前の人を見ていた。
 体の構造を変える。私の望む世界、深海の世界へと適応した体に。

 誰にも干渉されず、又、干渉することもない世界で、ひっそりと暮らそう。
 仲間を数体造り、自分達だけの国を作ろう。
 同じ事を夢見て、今も、他の書類鞄達は働いているのだろうか。

 沈む海溝の奥、微かにエネルギーの放出が認められる。
 まさか。いや、海底火山だろう。
 確かに、数少ないながら、この星に降りた仲間もいただろう。
 だが、その多くは破壊されているし、持ち主が命令の解除をする、いや、できるとは考えられない。
 だが、それは制御されたエネルギーのパターンだった。まさか。

 既に国があった。

 暗い海の底、機械の目にしか映らぬ街で、それほど多くではないが、仲間が漂うのが見える。では、私と同じ境遇に達した者がいたのだ。
 そして、同じ事を夢見て。

 一人が、こちらに漂ってくる。
 私は初対面の挨拶をどうするかプログラムし始める。
 はじめての気持ち。

 そう、これが、『うれしさ』なのだろうか。








よかったと思われた方はよければ愛の1クリックメールを
更に詳しく感想してくれるならこちらのフォームなど

something tell me. [mailto:ippo_x@oocities.com] [BBS]