MinMin's Diary
ショックからようやっと少し回復。
可愛がっていた地域犬が私の知らない間に死んでしまっていた。
車にはねられたという。
地域犬のアーメイとシャオファンをずっと見かけないので心配していたら、先週の土曜日にシャオファンだけ見かけた。
彼がいるなら、傍にはアーメイがいるはず。
なのに、どこにもいない。
いやな予感が過ぎった。
彼らの根城の辺りを重点的に探したけれどアーメイは見つからない。
おととい、シャオファンに出会ったので、「あんたの相棒、どこに行っちゃったの?」と聞いた。
でも、シャオファンも今までのシャオファンと違っていた。
今までは遠くに私の姿を認めると、前進してきた。
アーメイはトロット風にはずんで笑顔でやってきたけれど、シャオファンはつつつ、と慎ましやかに前進してきた。
それなのに、おととい出会った彼は無気力だった。
そばに寄って撫でようとすると、避けようとする。
「どうしたの?」
そう言ってしゃがんで頭を撫でると、抵抗せずにおとなしく撫でられていた。
そんな彼が突然、自転車に乗っていた少年達に向って吠え始めた。
後を追いかけて吠えている。
初めて見た彼の激しい姿だった。
いつもは哲学者のようにじっとしていて、天真爛漫なアーメイとは対照的で思慮深く、遠慮深い彼が、どうしたというのだろう。
やがて、「もういいだろ?」とでも言うようにシャオファンは私の傍を離れた。
後を追いかけて「どうしたの?アーメイはどこ?」と聞いていると、いつも犬を二匹連れたおばさんが買い物袋を提げてやってきた。
おばさんが「シャオファン!」と声をかけると、彼はまるで会いたくないかのように私の背後に姿を隠した。
自分は話なんかしたくないんだという風に言っているようだった。
「可哀想にね、アーメイが車にはねられて、相棒がいなくなってしまって」
おばさんが私に話しかける。
「え?アーメイ、車にはねられたんですか?」
悪い予感が当たっていた。
「いつも朝ご飯に来る時間に来ないから、みんなで心配して探したら、アーメイが車にはねられて死んでいたんだよ。それから一週間、シャオファンも失踪してたのよ」
おばさんが教えてくれた。
シャオファンは全てを見ていたんだろう。
アーメイが車にはねられたところも、アーメイの命がどんどん消えていくのも、ずっと彼は見ていたんだろう。
ふたりとも飼い主に捨てられた犬だった。
アーメイは大きくなり捨てられた。
シャオファンは移民するからと捨てられた。
でも、ふたりは地域犬として、この地域の人達に可愛がられてきた。
単純そのもののアーメイは、地域犬として楽しく生きていたように見えた。
しかし、シャオファンの注意深い態度と、人との距離を測るような態度には「人間に裏切られた犬」というイメージがつきまとっていた。
どことなく、孤独な感じの、人付き合いの下手な感じのする犬だ。
だけど、アーメイがいるから、彼は楽しく生きていたのだ。
そのアーメイが死んでしまった。
どんどん冷たくなるアーメイの遺体を見ながら、彼は何を思っていたのだろう。
そして、彼は彼女の傍を離れ、どこかに行ってしまった。
さすらっている間、彼は何を思っていたのだろう。
しかし、地域犬として生きる彼も、結局はアーメイと暮らした土地に戻ってくるしかなかった。
彼は戻ってきた。
でも、彼女と一緒にいた頃のよりも、もっともっと気難しい顔つきになっていた。
おばさんも私も何を言っていいのか解らないでいた。
やがて、シャオファンは私達の傍からすっと離れていった。
おばさんも「またね」と言って立ち去った。
私はシャオファンがしゃがみこんでいるところまで追いかけていった。
「そうだったの...。アーメイ、いなくなっちゃったの...」
そう言って頭をなでると、彼の白目がみるみる赤くなっていった。
泣いている。
シャオファンが泣いている。
どうしていいか解らなかった。
彼は私の気持を察したのか、また、ふっと立ち上がり、やがて停まっている車の後ろに姿を潜めた。
「僕は誰とも話したくないし、会いたくもないんだ。独りにさせてくれ」
彼がそう言っているようだった。
左がアーメイを守るシャオファンの図。
シャオファン:「あんた、何を構えてるんだ!変なことしてみろ!ただじゃすまんど!」
アーメイ:「なにぃ?面白そうなもの持ってる〜!」(天真爛漫)
右は微笑むアーメイの図。
この笑顔は今はもうない。(;_;)
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