窓の景色



誰の家の窓の景色も他の家のものとは同じで
はない。
隣同士だって、同じ方向に窓が向いていても、
全く同じ景色は見えない。
同じ家だって、部屋によって、
窓に映る景色は多少異なるもの。


エジプトの人
東京の人
ハワイの人
同時にチャットをしていても、
窓から見える景色になったら
絶対に一つになることなどない。
今、その人の窓に映る景色は、一つだけれど、
たくさんの人に語らせたら、
三者三様になる。


相手が「東京タワーが見える」と言うまで、
いつまでも攻め続ける人がいる。
相手が今いる場所へ行ってみるといい。
きっと東京タワーは、その人の視界に映らない。
相手を自分の部屋へ招いてみるといい。
そうすれば、相手にも東京タワーは見えるから。


自分が他人と全く同じでなくたっていい。
自分に見えるものを、どうして相手に見えないのか
と怒鳴り散らすのは見当違いなのだろう。
相手が向かっている場所と自分の目的地も
違うのだろう。 
年齢も健康状態も経済状況も違うのだろう。


同じ日本にいたって、窓の景色はそれぞれだ。 


大学に進学する費用の欲しい高校生。
ダイエットに成功して新しい洋服が欲しい女の子。
胃潰瘍で食べたいものが食べられないサラリーマン。
テストで百点取りたい小学生。
食器洗浄乾燥機が欲しい主婦。
スポーツカーを買いたい男の子。
好きな人に振り向いてほしい女の子。
逆上がりを練習している小学生。
直木賞を夢見て密かに小説を書く人。
宝くじをひたすら買い続けるお婆ちゃん。
リストラされて明日の我が身も知れない人。
今一億円の当選を確認したお爺さん。
自殺したいと常に思ってる少年。
何も起こらないことが退屈でしようがない主婦。
何もかもが思うように進んでる上昇気流の人。
娘の結婚式の挨拶の練習をしているお父さん。
初めて息子の彼女を目にするお母さん。
サンタクロースに手紙を書いてる幼稚園児。



なのに、相手にいきなり自分の窓の景色を
告げても、会話がかみ合うはずがない。



自分の目的地行きの汽車の切符をあげても
相手は喜ぶわけがない。





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