日本にいた時は両親と一緒に住んでいたので
料理なんかたまに気の向いたときしかしなかったんですが、
今は自炊してます。
丁度いい機会ですからね。

彼女はカプリチョーザの「トマトとニンニクのスパゲッティ」が好きでした。
僕は彼女に連れられてまだ一回しか行ったことがありませんが、
その時も彼女は同じ物をたのんでいました。
おいしそうに食べていたなぁ。
それで僕は、何を考えたか。

2人の関係が上手くいってたら、彼女、クリスマスから新年にかけて
ドイツに来てくれるはずだったんです。
だから、来てくれたときに僕がそれを、
トマトとニンニクのスパゲッティを作ってびっくりさせてやろうと。

もちろんレシピなんか持ってなかったけど見よう見まねで
こっち来てから何回も晩ご飯に練習しましたよ。
最初はトマトを炒めすぎてぐちゃぐちゃになったり、
ニンニクが大きすぎたり、
オリーブオイルをかけすぎたり、
失敗の連続でした。

でもだんだんおいしく作れるようになってきたんです。
にもかかわらず、彼女は、もう来ない。
一体誰に料理すればいいんですか?自分に?

彼女を思って作ってた時はそれなりにおいしかった。
でも今同じ物を作って食べても、きっとおいしくないでしょう。

彼女はもう去ってしまい、
彼女の好きなスパゲティを上手に料理できるようになった
自分だけが後に残りました。

彼女の気持ちは冷たくさめてしまったのです。
冷めたスパゲッティのように。

それでも僕はそのスパゲッティを作り続けるでしょう。
彼女が来てくれるという僅かな可能性を思いながら。

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