Pitts S-2B 練習記
2004年4月29日
Sportsman CategoryのManeuverも安定してできるようになってきました。たいていのManeuverは飛行機に乗っていて、自分なりに評価はできます。Hammerheadで翼がきれいに縦を保っている、Spinを1 1/4回転で止められている、など。でもどうしても地上で誰かに見てもらう必要のあるManeuverがあります。基本の一つであるLoopは地上から見てきれいな円になっていなくてはいけません。空中できれいに円を描いているつもりでも、実際には縦長だったり横長だったり、またはLoopの終りが最初の高度とずれてしまって (eの字型の通称e-Loop) 円になっていなかったりします。しかも吹いている風の影響も考えなくてはいけないので、完璧なLoopというのはなかなか描けないものです。今日はInstructorに自分の演技を地上から判定してもらう、Critique (批評) をしてもらいます。
Federal Aviation Regulation (連邦航空法規) Part 91.303では、町や集落の上ではAerobatic Flightは禁止、地上から1500ft以下の高度では禁止というように、安全のためのいろいろな制限があります。でも、質の高い訓練を求めると、この規則に縛られていてはできないこともあって難しいところです。この点に関して、FAA (米国連邦航空局) も競技としてのAerobatic Flightの発展に協力を示してくれていて、今回Critiqueを行うこのTracy空港のすぐ隣には、低空でのAerobatic FlightがFAAから特別に認められた空域があります。ある程度の技量があって、事前の打ち合わせをしたPilotには、Waiver (連邦航空法規91条303に述べられた、曲技飛行に関する禁止事項の特別破棄) が認められて、ここでの飛行が許されます。また飛行前にはAir Traffic Contoller (航空管制) に予め連絡をして、Aerobatic Flightの予定の連絡をしておきます。これによって、私がAerobatic Flightをしていることを周囲を飛行する航空機に連絡が行くことになります。

完璧なUp Line。と思いましたが、よく見ると頭が後ろへ傾いています。Negativeと呼ばれる状態です。
練習していて面白いのは、前回問題なく行えたことが今回は出来ない、今まで考えもしなかった失敗をしてしまった、こんな出来事があることです。先週Instructtorに指摘されたのは、45度のUp-lineが浅くて35度程度にしかなっていないこと、Loopが縦長になっていること、そして全体的にManeuverを急ぎすぎていていることです。90度はとにかく直角であればよいので簡単ですが、45度は感覚の鈍りや目の錯覚など狂わせる要素があるようです。翼と地平線の見え方を頭に入れて、普段からそれを反復する必要があります。Loopは、頂上の45度手前辺りで力を抜いて、頂上がゆるやかな曲線になるようにしますが、その力を抜くのが早すぎて縦長になっているようです。また、3000ftX3000ftのAerobatic Boxの境界線を飛び越してしまうことを恐れるあまり、全体的に技が忙しすぎで余裕が見られないと指摘されました。Boxの端から端まで、一杯に使いきれるようになろうと思います。
今回CritiqueをしてくれるInstructorは、過去に世界選手権に出場するAmerica Teamの指導や、世界選手権でJudge (審判) を行ったこともある人で、翼の角度やBoxとの位置関係も細かく判定してくれます。高いところでは3000ft上空を飛ぶことになる、こんな小さなPittsの翼の傾きを一体どうやってみているのか。60歳を超えても彼の目の厳しさは一級です。まずは前回不調に終ってしまった上記の問題点を克服することが大切です。離陸して演技を始める前に、そのあたりの手直しをすることにしました。
想像していたのはAの時点での操縦桿の引きすぎ。でも実際は、Bの時点で力を抜きすぎていることがe-Loopの原因でした。
Livermore空港を離陸して目的地のTracy空港へ向かいます。Instructorを地上で降ろし、再び離陸してAerobatic Boxに。離陸後にInstructorから、「1200ft、Downwind (追い風) で飛べ。合図をしたらLoopをしろ」との声が無線から聞こえます。合図の声を聞いてLoop。1200ftで始めたのに、1300ftで終ってしまいました。Loopの終りで操縦桿を引きすぎているのでしょうか。「今のはe-Loopだ。最初の90度のところで力を抜きすぎだ。Loopが縦長だからe-Loopになっている。終わりの半円は悪くない」と言われました。最後で引きすぎているわけではなく、最初で力を抜きすぎている。なるほどと思いました。「旋回してUp-wind (向かい風) でLoopをしろ」と言われ、今度は逆方向でLoopをします。まだUp-windとDownwindでのLoopを区別できていなく、空中ではさらに混乱して判断ができません。とりあえず普通のLoopのつもりでやってみました。「Up-windでは、最初は力を抜かなくてはだめだ。頂上を尖らせた円を作るようにするとうまくいく」との説明をされました。正直なところ、私の技量ではそこまでは使いきれません。何度かやって分かったような気もしますが、明日になれば忘れてしまっているでしょう。頭の隅に引っかかるように残っている、何とも脆い記憶です。その後、Vertical Lineと45度のLineを練習して、Sportsman Programの練習をします。

翼を70度まで傾けてのCompetition Turn。
高度2800ft。速度160MPH。この状態でAerobatic Boxに入ります。演技中の飛行最低高度は出場するCategoryによって違い、Sportsman Categoryでは最低高度は地上から1500ftです。この高度よりも下がって飛んでしまうと失格になり、即刻退場を命じられます。高度を判断して飛ぶことが出来ないPilotはここで飛ぶ資格がないということでしょう。私の場合、2800ftで始めて最も下がったところで2000から2200ft。最後はImmelmannを行って高度を得て、だいたい2700ftあたりで終ります。低空で飛んだ方がEngineの性能も高いので、もっと低く飛びたいところですが、安全を第一に考えて練習します。
今回のCritiqueはこんなところでした。
1. Loop − 最後で操縦桿を引きすぎて、再びe-Loop。
2. Hammerhead − Maneuver自体は問題ないが、LoopとHammerheadとの間を開けるようにと注意。
3. Shark's Tooth − DownlineがNegative (翼が垂直に下を向いてなく、多少背面気味に傾いている)
4. 45 Up-Line − これは問題なし。
5. 90 Cmpetiton Turn − Maneuver自体には問題ないが、Box境界線ぎりぎりで行うようにとの指示。
6. 1 1/4 Spin − 30度ほど行き過ぎてしまった。
7. Golden Fish − Boxからはみ出し。
8. Split S − 問題なし。
9. Immelmann − 問題なし。
10. 2-point Roll − 背面からのHalf Rollでのふらつき。
どうしてもうまく行かないのが、LoopとSpinです。二つともAerobaticの基本中の基本なのですが。Loopの奥の深さを感じ、Spinの止まる位置を確立させることが必要だと実感しました。2回このSequenceを行って、Instructorを迎えに着陸します。私の飛行を見ていたのはInstructorだけと思っていましたが、いつの間にかに私の飛行を見学している人たちがいました。「今飛んでいたのはお前か?どんなことをやっていたんだ?」と興味津々の様子です。こうしてAerobatic Flightに興味をもって、新しく始めてくれる人がいたら私も嬉しいです。
今回も完璧には飛べませんでしたが、それでも多少の上達が見えてほっとしました。毎日、時間があれば自分の飛行を想像して練習をしていますが、どうやらその効果があるようです。また来週、さらなる上達を望んで、練習に励みます。
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