Borrego MiniFest 2005 1
このCalifornia州では毎年いくつかの曲技飛行の競技会が開かれます。4月中旬にBorrego Valley Airportで行われるBorrego MiniFest、5月中旬のApple Valley AirportでのLos Angeles Gold Cup、6月上旬Paso Robles AirportでのNorthern California Aerobatic Chalenge、9月上旬Delano AirportでのHappiness is Delano、10月に再びBorrego Valley Airportで行われるBorrego AkroFestです。今年は技量向上を目指して、距離的に見て参加可能であるならば、競技会に出来るだけ出場してみようと考えています。昨年は二つの競技会に参加してSportsman Categoryで飛行しました。今年はひとつ上に上がってIntermediate Categoryを考えていますが、4月のBorregoで行われるのはSportsmanとPrimaryの二つということで、私もこのSportsman Categoryでもう一度参加をすることにしました。

2005 Sportsman Category Known Program
2004年度のProgramとほとんど変わりませんが、4番のQuarter Clover Leafが目を引きます。
今年のSportsman Programを見ると、ほとんどの種目は例年と変わらず、単にその組み合わせに変化があるだけのようです。ただ、4番のQuarter Clover Leafの出現には驚きました。基本的にはLoopなのですが、Loopの最初の半円で進路が90度変化すること、次の半円はLoopの引き起こしで始まりと同高度に戻ることが求められます。最初の半円はBarrel Roll (LoopとRollを同時に行うもの。飛行機が筒の内側に沿って回転するように見えることからこう呼ばれる。)の部分と同じ、次のHalf Loopも何ら変わったところはありません。しかし、Barrel RollはLoopよりも頂上の高さが低くなりますから(Loopだと+4.5Gの引き起こしで約800ft、Barrel Rollでは同じ引き起こしでも約500ft)、何も工夫せずに行ってしまうと始まりの高度よりも200-300ftほど低く終わってしまいます。では、最初の進入で速度を180MPH以上で行って高度を上げられるようにとか、Half Loopの引き起こしを+6G近くで行って高度を下げないようになど、大会前の練習中にいろいろ試行錯誤をしました。結局これでは高度も速度も損失が大きく、他の工夫が必要のようでした。

Quarter Clover Leaf
最初の半円でPitch upとRoll inが同時に行われ、頂上で90度Headingが変わっていて翼が水平、
きれいな円が描かれていて、始めと終わりの高度が同じであることが求められます。
4月14日−15日
今年の競技会で使用するのは、昨年秋に他の仲間2人と共同で購入したPitts S-2B N117PS、今回のBorregoでは私と仲間の一人Andrewが参加することになりました。飛行時間の少ない彼は飛行経験を付けたいとFerry Pilotに、私はまた例のごとく車に工具やOilなどを積んで地上で現地に向かうことになりました。彼とPittsを空港から送り出す前にOil ChangeとSpark Plugsの清掃と点検を行い、無事に離陸することを見届けてから私も出発です。San Joseから大会のあるBorrego Valley Airportまでは道のりにして片道450Miles、70MPHで走っても7時間ほどかかります。夜10時に出発して途中で仮眠をとっても10時間くらいかと予定を立てましたが、長距離運転の苦手な私は3回の仮眠をとって、昼11時に現地に到着しました。

夜明けの中を走る。Borrego Valleyはまだ200Miles先にあって遠い。
4月に入ってからもSan Joseは気温がなかなか上がらず肌寒い日が続いていましたが、ここはLos Angelesを通り越してさらに南で砂漠のような内陸にあり、すでに真夏のような雰囲気でした。駐機場に相棒のAndrewと赤い見慣れたPitts S-2Bを見つけ、ここBorregoの話を聞きました。まず、この地上の熱から上空では空気の上下動が大きく、水平飛行がとても難しいこと、Boxの端を目安にする目標物に欠けること、風向きが頻繁に変わるので着陸が難しいこと、燃料を入れる際に係の人を呼んで入れることになるので夕方4時を過ぎると朝まで燃料を補給できないことなどがあるようでした。でも、南CAらしい開放的な雰囲気はとても好きです。

早朝にBorregoに到着していたPitts S-2B、N117PS。
総飛行時間はLivermore空港から片道3時間だったそうです。
空港内のRestaurant、Stakehouse Crosswindにて参加登録を終え、練習飛行の予定を入れます。2時間後に20分間の練習が出来ることになり、それまで久しぶりに会う仲間との再会を楽しみます。時間が来て上空に上がると、そこは緑にあふれる北CAとは別世界が広がっていました。先日Internetで見つけた、火星探索機からの写真を思い出します。SF映画の撮影にも十分いけるのではなど、余計なことを考えてしまいます。Box内を実際に飛んでみて、そこでの飛行の難しさは想像以上でした。今まではどうでもなかった水平直線飛行がとても難しく、気が付くと100ftも上がったり下がったりしています。やはりBox端の目標物に欠け、ここでBox端だと信じて行動を起こしてもまだ手前だったり、2秒も前にすでに通り越していたりしました。全体の練習はそこそこにして目標物の選定に的をしぼり、Hammer Head Turnを20回ほど両端で行い、何が使えるかいろいろ試してみました。地上からは、何を同じことを繰り返しているのか不思議だったかもしれません。本心としては、私もAndrewももう一回は練習飛行をしたかったのですが、燃料補給が明日にならないと出来ないのでここで練習を終えて飛行機を閉じることにしました。

私と同じくChapter 38に所属している友人のHowardと彼の愛機Great Lakes。
この重い機体を自在に振り回して毎回高得点を出す、素晴らしい技術を持っています。
4月16日
朝6時半、Stakehouse Crosswindで朝食を取ります。特に代わり映えのないAmericanな朝食ですが、仲間とのひと時は楽しいものです。7時になってBriefingが始まり、CD (Contest Director)からの説明と注意点が話されます。今大会では、Sportsmanの参加者15人の3回とPrimaryの3人の2回の飛行を今日一日で終わらせる必要があるため、時間を出来るだけ詰めて行いたい、迅速に進めるために協力をと言われました。慌しいことになりそうですが、まあ何とかなるでしょう。Briefingの後、まず朝一番にしなくてはいけないのは燃料補給です。混雑するかと心配しましたが、元々参加機数が少ないので問題はありませんでした。機体の確認と窓の清掃を終えて飛行に備えます。

Borregoに突如現れたSukhoi 26。
現在曲技飛行界において最高峰に君臨する高性能機の一つ。
いい機体です。
この競技会ではPrimaryとSportsmanの参加者が入り乱れての進行となり、すべての飛行が終了するまで休憩は無しということだそうです。Judgeの方たちは暑い中大変なことでしょう。私の一つ前の参加者が機体に乗り込むのを見て、私も飛行機を定位置に運び乗り込みます。まだ朝9時、気温もそれほどでもないので飛行に集中できそうです。このことは上空でも気流の乱れがないでしょうから、きれいな飛行が期待できます。私の出発の番が来て、Engine始動、滑走路に向かいます。

少しずつ参加者が到着して、賑やかな雰囲気になってきました。
高度4000ft、上空は昨日の午後とは全く違う顔を見せていました。とても穏やかですがすがしい気分になります。「This is Chief Judge. Yuichi, are you there?」 Boxの準備が出来たようで、主審から無線で話しかけられます。飛行機をBoxに向け、演技開始です。昨日何十回もBox端の目標探しで試行錯誤をしたので、この一回目の飛行はとても満足いくものになりました。Out of Boxは無し、全体の出来も悪くありません。4番のClover Leafは、進入は通常のLoopと同じ160MPHで行い、最初のHalf Loopで高度を700ftほど稼ぐように緩やかに昇り、その後のHalf Loopは最大+4.5Gの通常の引き起こしを心がけました。同高度に戻ることが出来ていい出来でしたが、この時の始めと終わりの高度のずれはあまり気にしなくてもよさそうです。考えてみれば、引き上げた場所とLoopが終わった場所が水平方向で300ftは違うため、Judgeからは高度のずれなど判定しづらいはずです。要はきれいな動きが出来ればよいということでしょう。まずは落ち着いて集中した飛行が出来てよかったと思います。
Borrego MiniFest 2005 2
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