Borrego AkroFest 2005 1
同じCalifornia州でも、いくつかのIAC (International Aerobatic Club) のChapter(支部)が存在して、San Francisco地区ではChapter 38、Los Angeles地区ではChapter 49、San Diegoの周辺ではChapter 36があります。California州は土地的にも広く、小型飛行機の活動が特に活発な場所であることが理由でしょう。競技会において常に団体で上位にあり、競技者の技量が非常に高いのがChapter 36に籍を置く、Orange County空港のSunrise Aviationです。彼らの曲技飛行にかける情熱は素晴らしいもので、そのひたむきな姿勢には尊敬さえできます。通常Borrego Valley空港では、Chapter 36主催の春と秋の2回の競技会が開かれます。4月の競技会は通称MinifFestと呼ばれていて、PrimaryとSportsman Categoryのみが行われる小さな競技会です。10月のもう一つの競技会はAkroFestと呼ばれ、こちらはUnlimitedからPrimaryまで5つの全てのCategoryが行われる本格的なものです。私の今年最後の参加となる競技会がこのBorrego AkroFestです。

Borrego Valley空港のTerminal。燃料を補給する場合はこの建物の空港長にお願いします。
10月10日 Borrego Valley空港へ飛行
以前からSunrise Aviationの人たちとは一緒に練習をしたいと思っていましたが、今回のAkroFestの直前にあるTraining Campに運良く参加が可能となりました。開始が10月11日の朝8時ということで、今日10日昼に出発です。飛行するPitts S-2Bには夜間飛行に必要な設備がないので、Borrego Valley空港には日没前に到着しなければなりません。余裕をもって現地に5時に着くにはと計画を立てると、昼の12時には出発しなくてはいけません。しかし、この日は朝からEngine Oil交換やSpark Plugの清掃、Tire交換など、するべき事が多すぎて昼1時を過ぎてもまだ作業をしていました。徐々に焦り始める私。そして荷物を大急ぎで積み込み、ようやく2時過ぎに離陸です。

広大なCentral Valleyの耕作地を疾走する自動車。
普段は燃料節約の方向で飛ぶので出力を絞っての飛行をしますが、急ぐ必要があるのでThrottle Leverは全開、2500rpmの75%出力での飛行をすることにしました。3時30分にDelano空港に到着、燃料を入れてすぐに出発です。この調子で飛行を続ければ日没にはなんとか間に合うでしょう。焦っていた心に多少の余裕が出来てきます。再び操縦席に乗り込み、いつものHot Startの方法でEngine始動。しかし一瞬点火の音が聞こえ、それ以上は続かずに止まってしまいました。Hot Startを失敗するとは珍しいと思いつつ、気を取り直して再始動。それでもかかりません。おかしい…。3回目の試みを失敗したころには焦りが出てきました。Battery容量も少なくなり、ついに諦めて助けを頼むことに。Delano空港にはDias Aircraft Serviceという飛行機整備会社が一つあり、そちらの整備士の方にお願いして充電をすることにしました。帰り支度をしている中に無理を言って充電器を借り、しばし待つこととします。それにしても始動しないとはどういうことか。燃料は十分に送り込まれているのに点火が続かない。Starting Vibrator(始動補助装置の一種。始動時に点火時期を一時的に遅らせ、また点火の電力をBatteryから供給する。)の不調か?Batteryの電圧不足?それとも慌てて飛行をするのは危険だと飛行機が私に言おうとしているのか?それなら全くの逆効果なのですが…。

後席後ろにあるBatteryに充電器を繋ぐ。時間が迫っているため、5 A/hで急速充電を開始。
4時30分を過ぎ、ようやく電流計が充電終了に近いことを示しました。手伝って頂いた整備士の方に丁重に礼を言い、再度始動を試みます。Spark Plugが汚れている症状を見せながらも、3度目にてようやく始動。4時40分にDelano空港を離陸、次の燃料補給地であるRiverside空港に向かいます。計算上はBorrego Valley空港まで飛んでも燃料は十分にあるはずなのですが、現地では空港の係の人を呼んで燃料を入れることになり、出来るだけ燃料を入れた状態で到着をしたいという理由があるためです。

高度7500ftで谷を越える。山が目の前に迫るようです。
San Bernardinoの谷を抜け、大気汚染の霞の向こうのRiverside空港に飛行を続けます。Riverside空港に降り立つのは1993年の訓練以来、実に12年ぶりです。管制塔やTerminalの位置などは変わりなく、Cessna 150で訓練をしたころの記憶が甦ります。しかし感動をしている暇はありません。燃料を補給してEngine始動。しかし、また先ほどと同じ症状で、一瞬の点火の後そのまま止まってしまいます。嫌な予感。時はすでに6時。日没は6時45分。今無事にEngineが始動できればまだ間に合う。そんな願いも空しく、ここでついに時間切れとなりました。

お世話になったRiverside Air Service。今日はここで一夜を明かすことになりました。
燃料補給で世話になったRiverside Air Serviceにお願いして充電器を借り、再び充電を開始します。考えてみれば、このBatteryはすでに4年も経っていて、そろそろ交換の時期です。始動力が弱いわりにはあっという間に充電完了になってしまい、明らかに交換の必要があります。それでも出来るだけ充電をするために、こまめに再充電を繰り返します。一息ついて周りを見れば、そこは懐かしいRiverside空港。記憶を頼りに歩くと、今はもう無人となってしまった飛行学校の建物がありました。日本のバブル景気とともに消えてしまったその飛行学校のことは、結局誰に聞いても分からず、12年の時を感じました。今夜はこのまま空港で野宿、充電状態を見ながら休むこととします。

訓練当時よくお邪魔したRiverside空港のFSS(Flight Service Station)。
Borrego AkroFest 2005 2
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