Land and Hold Short Operations
空港と言う存在は航空機にとってとても大きな意味を持つ地上施設の一つです。飛行機においては、離着陸をすることに必要ですし、時としては航法を行う時の重要なCheckpointにもなります。航法においては、滑走路の長さやその向き、または複数の滑走路の配置を見て、そこがどこの空港かを特定します。こうしてさまざまな空港の滑走路の配置を見ていると、どういう訳かこの国では、「西には平行滑走路が多く、東には交差滑走路が多い」と思いました。

Long Island Mac Arthur Airport
Islip, New York
西と東でなぜ空港の特徴が異なるのか実際の理由は分かりませんが、人家の無い広い空き地に作られた空港と、街中の建物の密集した場所に作られた空港との違いがあるのではと思います。空き地に作られた場合は、空港の大きさを制限する必要性がないので、その土地の一般的な風向きに対向する形で複数の滑走路を作ることが出来たでしょう。しかし、街中に作られた空港の場合は、空港の大きさの限界から、滑走路が一本か、または平行する二本の滑走路を持つことで精一杯だったでしょう。または、周囲の地形から強い横風の吹く状況がまずあり得ないということもあるかもしれません。

Livermore Municipal Airport
Livermore, California
交差する二本の滑走路を持つ空港と、平行する二本の滑走路を持つ空港。どちらも滑走路を二本持つ空港であっても、交差する滑走路を持つ空港も基本的には一本と同じではないでしょうか。私は管制官ではないので航空管制の事情は分かりませんが、両方の滑走路を使おうとしても、一つが空いてからでないともう一つが使えないため、逆に交通の妨げになってしまいます。対して、平行する滑走路を持つ空港の場合は、もう一つの滑走路での状況を考慮する必要がほとんどないので、離着陸の数を単一滑走路の倍に増やすことが出来ます。短所としては、強い横風が起きたとき、二本ありながらもそれに対処する方法がない、平行して進入する航空機の空中衝突の可能性があり得るということはありますが。前置きが長くなりましたが、今回はこの交差する二本の滑走路を使ったことによって、実際に私に起きた出来事です。

Republic Airport
Farmingdale, New York
New York州Farmingdale、Republic空港。この空港には、Runway 01/19とRunway 14/32の二本の滑走路が交差しています。California州ではあまり見かけない配置ですが、ここNY州では一般的なものの一つです。天候は晴れ、穏やかで安定した風。こんな日は多くの飛行機が離着陸の訓練を繰り返し、とても忙しくなります。私は生徒と1時間ほどの飛行予定で、離着陸の訓練をしていました。使用滑走路はRunway 32。天気の良い日は大抵がこの風向きなにるので、一番よく使われる滑走路です。離着陸を数回繰り返し、この時も「Cleared for touch and go, runway 32.」と指示を受けて着陸をしました。生徒の着陸も形になってきて、それではもう一度行こうかと離陸するためにPowerを上げた瞬間、目の前に交差するRunway 01を離陸していく飛行機が見えました。それはFloatを付けた水陸両用のCessna 206。この飛行機はRunway 01のすぐ近くに駐機していて、この滑走路を使って離陸していくことを今までに何度か見たことがあります。滑走路の交差点まではあと50mほど。あと少し早く離陸していたら、またはGo Aroundをしていたら、危険な状況になっていたところです。

Morristown Municipal Airport
Morristown, New Jersey
私は、なぜこのようなことになったのか考えました。
1. LAHSO (Land and Hold Short Operations: 指定滑走路への着陸は許可されるが、交差する滑走路や誘導路は横切ることはできない)の指示を聞き逃した。
例: Katana 0DA, cleared to land runway 32, but hold short of runway 01 for deparing traffic.(Katana 0DA、滑走路32へ着陸を許可する。ただし、
離陸機があるので、滑走路01の手前で待機せよ。)
2. Cessna 206の指示無視。
3. 管制官の誤り。

LAHSOの一例。Aの飛行機には、"Cleared to land runway 27, hold short of runway 18."の指示が出されていますので、
Runway 27に着陸しRunway 18手前のHolding Lineで次の指示があるまで停止しなくてはなりません。
対して、Bの飛行機には通常の"Cleared to land."の指示が出されているので、Runway 18を全て使っての着陸が行えます。

San Francisco International Airport
San Francisco, California
私は今この場で離陸をしていいものか分からず、取り合えず管制塔に質問をしてみました。
Katana 0DA: Republic Tower, Katana 0DA, I would like to confirm that we are cleared for touch and go. (Katana 0DAですが、Touch and Goを許可されているのか、確認したいのですが?)
Tower: (なぜか最初から怒り口調) Who is it? (誰だ?)
Katana 0DA: This is Katana 0DA. Are we approved for touch and go? I am asking you because a Cessna just took off from the crossing runway. (Touch and Goは許可されているのでしょうか?というのも、たった今Cessnaが交差滑走路から離陸していったので。)
Tower: I gave you guys 1 mile separation at least! What are you talking about? (こちらからは最低1Mileの間隔を与えているのに、一体何のことを言っているのか?)
Katana 0DA: (こちらもそろそろ怒り口調で) Do We? Not even 200ft! (1Mileだって? 60mもないじゃないか!)
このような会話がなされたと記憶していますが、このまま交信をしていては他の方々の迷惑になるので、憤りを感じながらも大人しくすることにしました。

Norman Y. Mineta San Jose International Airport
San Jose, California
結局、この生徒との訓練終了後にChief Instructorに掛け合って、この管制塔に意見をすることになりました。以前からこの空港で飛んでいる他の同僚教官たちは、「彼(例の管制官)はいつもそうなんだ。いつも問題を起こしているらしいよ。」とのこと。結構な有名人のようです。後日、管制塔側から返事が来て、「こちら側としては、この事実を厳粛に受け止めている。」とのことでした。こういった出来事が起きなければそれでいいと思います。また、当日は単一の周波数を使っていたので、きちんと無線交信を聞いていればRunway 01から離陸するCessna側の状況も予測できたはずです。これは生徒との会話で聞き逃してしまった可能性が高く、私の失敗と言えるでしょう。普通に行われることではありますが、かえって逆効果になることが多いので、忙しくても二本の滑走路は同時に使って欲しくはないと思います。もし出来ることならRunway 32にもう一本、短い小型機用の平行な滑走路があったら助かるのにと思いました。

Danbury Municipal Airport
Danbury, Connecticut
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