Pitts S-2B Break-In Flight 2
時はすでに2時半過ぎ。最初のEngine Break-Inには65-75%の出力で最低一時間飛ぶ必要があります。慌ててはいけませんが、速やかに準備をします。前席のSeat Beltを縛り、私もCockpitに潜ります。
離陸前にEngine Oil Temperature (油温) を十分暖めておきます。130度F…もういいいでしょう。管制塔に空港上空2500ftを旋回したいと伝え、Runway25R手前で指示を待ちます。おや、どうやらこのLivermore空港にBeechcraft BaronがILS 25Rで進入してくるようです。聞き覚えのある登録番号。生徒の方と乗っているのはReid-Hillview空港のKiyoさんでしょうか?お元気ですか?「Pitts 117PS, runway 25R, cleared for takeoff.」の指示を受けて離陸をします。Power操作はいつもに増して慎重に行います。ゆっくりと10秒かけて離陸出力に。離陸は成功。「Pitts 7PS, stay 2mile north of the field」との指示。Freewayを越えて空港の北側を左旋回します。山があるのが気になりますが、2500ftで速度に余裕があれば、いざという時も滑走路まで帰れるでしょう。
500ft AGLでPowerを25in-Hg/2500rpm、16GPHに絞ります。次に2500ftで22in-Hg/2400rpm、13GPHに。Engine Instrumentsから目が離せません。Oil Pressure、Oil Temperature共にまだ大丈夫です。「ここで止まったら、速度95MPHで、右に回って…」と緊急時の手順も反復しておきます。土曜日ということで飛行機の数も多いです。無線交信もひっきりなしで行われています。操縦訓練のCessnaやPiper、それに混じって飛ぶ第二次大戦中の戦闘機、P-51 Mustang。彼は滑走路上を100ftで低空飛行を行って、急上昇、右旋回をしてきました。速い…!左後ろ7時方向を取られました。50年前の飛行機とは思えない輝く銀色の機体、Engineもとても元気です。そんな中、私は一人左旋回を何十回も繰り返します。
せっかく旋回飛行を行っているので、Rudder (方向舵) とInclinometer (水平器) についてちょっと語ってみます。飛行機には三つの舵があります。Aileron (補助翼)、Elevator (昇降舵)、そしてRudderです。これらが飛行機の三軸を操作するPrimary Flight Controlsです。手で操作するAileronとElevatorは理解も操作も簡単ですぐに覚えられますが、Rudderは足で操作し、多発機での片側発動機停止や横風の離着陸以外、仮に操作をしなくても飛べないこともありません。訓練生はあまり必要性を感じないRudderを見て疑問に思います。ある人が、「Rudderは釣り合いをとるためのTrimだ」と言い、私はそれをとてもいい言い方だなと関心しました。RudderはTrimだなんて、これは教科書にも反するしいろいろ反対意見もあるでしょうが。

左旋回中の計器盤。中央のMagnetic Compass下にInclinometerがあります。
Magnetic Compassの上には背面飛行時用のInclinometerが逆さまに付いています。
写真左: Slipの状態。右Rudderを踏みすぎているため、Ballは左側に飛んでいます。
写真右: Skidの状態。左Rudderを踏みすぎているため、Ballは右側に飛んでいます。
多くの人は、Rudderの操作量をInclinometer内のBallを見て操作すると思います。「Left Aileron、Left Rudder…Ballを見て調整して」というように。過去には「Fly by the seat of your pants」と言われました。お尻の感覚でRudderを使えということです。 私もこれを試してきましたが、どうも感覚が鈍いようで、結局釣り合い旋回をすることができませんでした。ある日、肩と頭の振られ方で機体の滑りを感じることができて、それ以来この方法でRudderを使っています。肩と頭は釣り合いがずれた時の移動量が多いので、鈍い私でもできるようになりました。
ようやく一時間が経過しました。離陸時と同じく、Powerを絞るのもゆっくりと行います。今回整備をしたのは左側奥のNo.6 Cylinderなので、No.1やNo.2などの前側CylinderよりはShock Coolingの危険が少ないとは思いますが。それでもPowerを保ちながら、Slipを使って減速と降下をします。Powerを保ちながらだったので滑走距離が伸びてしまいましたが、まあまあの着陸でした。
Hangerに戻り、Engine Cowlingを開けて飛行後の点検をします。Oilが減っていましたが、これはBreak-Inなので通常です。異常は見られません。Pitts N117PSも無事にFlight Lineに戻ることができました。私も来週からまた練習再開です。
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