Cirrus SR-22 Engine Oil Change
21世紀の空を飛ぶ、小型飛行機の新しい形。Cirrus Design社製のSR-22はそんな言葉が似合う、複合素材を多用した流線形の美しい、しかしどことなく愛嬌のある飛行機です。310HPを発生するContinental社製IO-550-N Engineを搭載して、その可愛らしい外観とは裏腹に上昇力も巡航性能もかなりの性能を誇ります。構造的に複雑になり整備の手間のかかるRetractable Landing Gear (引き込み式着陸装置) の採用を却下して、あえてFixed Landing Gearを選択したことも斬新です。また、Cockpit上部にAirframe Parachute System (飛行機内蔵の非常用落下傘) を標準装備して、安全に対する追求をしているところも素晴らしいです。
操縦席に座ると、それが今までの飛行機とは明らかに違うものだということがよくわかります。まず、操縦桿は目の前にはなく、左側にSide Stick状の物に置き換えられています。Side StickというとAirbus A320の操縦席にも採用されていますが、この飛行機の場合はSide Stickの形をしているだけで、通常の操縦桿と動きは同じです。例えば、飛行機を左に傾けて機首をあげる場合、純粋なSide Stickの場合は左手前に傾けるだけですが、この場合は左に傾けるという動作と手前に引くという今までの飛行機の操縦桿と同じ動作が必要になります。また内部のバネによって操縦桿が中立に戻ろうとすることと、Roll Rateが通常使用するには機敏すぎるので、きちんとTrimをとって飛行しないと上手く飛ぶことが出来ない飛行機です。
計器盤には最新型のAvidyne FlightMaxを装備し、これが新世代の飛行機であるとの主張がよくわかります。保守的な私はこういった装備の信頼性を疑ってしまったりしますが、使いこなせるようになると飛行の安全が容易に確保されます。もちろん周囲には予備の計器が配置され、いざという故障時にも安全性に問題はありません。
さて前置きが長くなりましたが、今回はEngine Oil交換をすることになりました。Continental Engineというと、過去のBonanzaやCessna T210などのOil交換を思い出してしまってついやる気が失せてしまうこともありますが、このEngineの場合はとても楽に行えます。自動車のOil交換よりも楽なのではと思います。
Engine Oilの温度をある程度暖めたら、Engine Cowl上部を外して作業を開始します。Oilを抜くためにHoseを繋ぎますが、Nose Landing GearとEngine Cowlの隙間を使えば難なく行えます。そしてOil Filterの交換。Engine後部にすぐに目に付く位置にあってこれも嬉しい配慮です。これがCessna T210だとAir FilterやOilの配管を外したり、それでも手が入らずに辛い2時間を過ごすことになりますが。ただ、Oil Filterが上に向いて付いているため、そのまま外すとEngine Oilがこぼれてしまって、EngineがOilまみれになってしまいます。ここはOil Filter上部にいくつかの空気抜けの穴を開けて、内部のEngine Oilが流れていくようにします。Engine Oilが暖かいので、10分も待っていればほぼ空になります。
そして新しいOil Filterを取り付けるわけですが、付ける前に先にSafety Wire (回り止めの安全線) をEngine側に通しておきます。Safety Wire用の穴がOil Filterの裏側に付いているので、Continental Engineの場合はこうしておかないと後でSafety Wireで苦労したり、折角とりつけたOil Filterを外さなくてはいけなくなったりします。もちろん、この穴を絶対に使わなくてはいけないということもないのですが。
この作業と平行して、Engine Oilを入れていきます。ここで要注意しなくていけないのはゆっくりと入れることです。このEngineのBreather TubeはCrank CaseではなくてOil Filler Tubeに付けられていて、あまり急いでEngine Oilを入れると内圧で逆流してしまい大変なことになります。そういう訳で、ここはあえて小さめのFunnelを使ってみます。会社としては経費削減の意図があるのかもしれませんが、ここは改善して欲しいところです。
Engine試運転前にもう一度作業箇所を確認してCockpitに入ります。Multi-gradeの15W-50を使用したので、低温度でも粘度が低くすぐにOil Pressureが上がりほっと一息。この時も目の前のAvidyneには目が行かず、ついつい予備のAnalog計器類を頼りにしてしまいます。こういった電子装備を信頼して飛ぶには私はまだまだ経験不足。またはそれが出来ない時代遅れの人間なのかもしれません。Engine外部にも漏れは見られず、作業は無事終了です。
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